妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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若造の末路 (伯爵家当主視点)

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 侯爵家からの手紙、それを侯爵家の使者が伯爵家に持ってきたのは、カインに罪を着せて数日後のことだった。
 その使者が帰ってから、私はその手紙を読み声を上げて笑っていた。

「はははは! 言い様だ! この私を馬鹿にした当然の報いだ!」

 生意気な若造の無様な末路。
 それが私にはおかしくてならなかった。
 自分に向かって、大口を叩いてたカインの姿が頭に残っているからこそ。
 もう少し、世間というものをしっていれば長生きできただろうに。

「……侯爵家と手を結べたのか!」

 そして、一方の自分の功績を思い描き、私は笑う。
 これこそが、紛れもない私が有能であることを示す証拠だと思いながら。

 ──お前等は、娘にすがりつくことしかできない無能だ。

 カインに言われた忌々しい言葉、それは未だ頭の中に残っている。
 だが、それを思い返しても、当初の様な苛立ちを感じることはなかった。

「違うさ。私の価値は分かる人間には分かるんだよ」

 そう笑いながら、私はどっさりと椅子に腰掛ける。
 これから先を考えるだけで、私は笑いが止まらなかった。
 侯爵家がこの手紙を出したということは、そろそろ侯爵家と伯爵家が結びついたことに、ほかの商会が気づいてもおかしくない。
 そろそろ、新しく伯爵家と結びたいという商会もでていることだろう。

 そうなれば、誰もが知ることになるのだ。
 本当に有能だったのはサーシャリアではない。

 ──伯爵家当主であるこの私だったと。

「ふ、ふふ。ふはははははは!」

 夢想した未来に私は笑わずにはいられない。
 侯爵家と手を結んだとしれば、サーシャリアもすぐに見つかるだろう。
 それほどに、侯爵家の力は強い。
 もう何も怖ないものなど……。

 そう考えて、ふと私が侯爵家の使者の言葉を思い出した。
 それは侯爵家から私に対する警告だった。

 ……第三王子達が、サーシャリアを失踪させた私に干渉してくるかもしれない、という。

 ◇◇◇

 更新遅れてしまい、申し訳ありません。
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