妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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伯爵家との決別 (カイン視点)

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 伯爵家当主は、その一言で情けなく顔を青くしている。
 しかし、それは怒鳴られたことに対する恐怖心が浮かんでいるだけで、俺の言葉が響いたようには見えなかった。
 その態度が、さらに俺の怒りを煽る。

「出来損ない? そんな訳がないに決まっているだろうが。サーシャリアが劣っているんじゃない。その程度も理解できないほどの能力しかおまえ等が持っていないだけだよ」

「……っ!」

 伯爵家当主の胸ぐらを話す。
 突然のことに対応できず、伯爵家当主は無様に尻餅をつく。
 それを見下しながら、俺は告げる。

「教えてやる。おまえ等は優秀でも何でもない。俺もほかの商会も、サーシャリアがいなければこんな伯爵家と手を結びはしない」

 怒りを露わにする余裕もなく愕然としている伯爵家当主。
 とどめとばかりに、俺は告げる。

「サーシャリアの代わりに俺が宣言してやる。ーーおまえ等は、娘にすがりつくことしかできない無能だとな」

 それを最後に、俺はその場から身を翻し、キルアを呼ぶ。

「キルア、馬車を用意しろ。もう伯爵家は役に立たない。俺たちでサーシャリアを捜して保護する」

「ま、待って!」

 声に方向に目をやると、そこにいたのは伯爵家夫妻だった。
 その懇願するような態度に、俺はどこか安堵する気持ちを抱く。
 どうやら、本気でサーシャリアを心配している人間もいたのかと。

「もし、サーシャリアを見つけたら伯爵家にも連絡してください! しょ、商会はあの子じゃないと……」

 ……けれど、それは勘違いでしかなかった。

「はっ」

 夫妻の言葉を、いや勘違いした自分を、俺は鼻で笑う。
 その言葉だけで、まだ彼らが辺境貿易での不正を考えていることが理解できた。

 ……そんなことをすれば、たとえサーシャリア主導でも、辺境泊にきられて終わりだと気づかないらしい。

「聞く価値もなかったな」

 それだけ吐き捨てると、俺は玄関の方へと歩き出す。

 伯爵家がいなければ、サーシャリアを探せない。
 そう、頭の冷静な部分が囁いている。
 けれど、何故か俺はその意見に従う気になれなかった。
 ただ、感情のままに俺はキルアに告げる。

「伯爵家よりも前に、俺達がサーシャリアを保護するぞ」

 だが、そう呟く俺は……こちらを見る伯爵家当主の目に、憎悪が込められていることに気づいていなかった。


 ◇◇◇

 次回ももう少し(おそらく)カイン視点続きます。
 ……長引いてしまい、申し訳ありません!
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