42 / 169
流出の理由 (カイン視点)
しおりを挟む
馬車をとばし、伯爵家へとたどり着くと、忙しく動き回る使用人が俺たちを迎えた。
以前と同じように、キルアと別れ俺は別室に案内される。
それから、伯爵家当主が現れたのは、少ししてからだった。
「本日はどうしました? サーシャリアの行方に関しては、わかり次第こちらから連絡させていただこうと思っていたのですが……」
困惑した様子の伯爵家当主へと、俺は告げる。
「……本日は少し、聞きたいことができてよらせてもらった」
そう話を切り出しながら、ある疑念が俺の中に生まれていた。
伯爵家当主の顔には、急にきた俺に対する疑念があるが、それだけだった。
俺が来たことに対し、一切の罪悪感も顔に浮かべていない。
そのあまりにも自然な態度に、俺は今さら気づく。
伯爵家当主が感知していない可能性もあるかもしれないと。
……飛び出してこず、もう少しキルアから正確に話を聞いておけば良かったかもしれない。
内心後悔しつつ、俺は会話を続ける。
「現在、サーシャリア失踪の噂が広まっている。それについて何か知らないか?」
「それは私達が広めたものですが?」
「……っ!」
一切の迷いもみせず、そう言いきった伯爵家当主に、俺は絶句した。
けれど、そんな俺の様子に気づかず、伯爵家当主は続ける。
「心配は分かりますが、こんなことを聞くためにわざわざ来ずとも、大丈夫です。なあに、すぐにサーシャリアを見つけて連絡……」
「……何を、考えている?」
「は? 何を、とは?」
まるで分からないと言った表情。
それに俺は思わず怒声を上げかけて、何とか自制する。
「アメリアから、サーシャリア不在を隠せと聞かなかったか?」
「はは、奇異なことを仰る。世間知らずな娘の言葉を真に受けて動いているようでは、一貴族の当主は務まりませんぞ」
自信満々にそう告げる当主に、逆に聞きたくなる。
一体今までに目にしたどこが、一貴族の当主に足る姿なのか、と。
そう苛立ちを溜めつつも、俺はふと思う。
「心配されなくとも、これは考えた上での行為です」
……伯爵家当主のこの自信の理由はいったい何なのかと。
もしかしたら伯爵家当主は、俺が気づかないサーシャリア不在を明かすメリットに思い至っているのか?
それゆえのこの自信だとすれば……。
そう考えた俺は、とりあえず話を聞くことにする。
「……それは一体どんな考えだ?」
「おや、カイン様には理解できませんか? この程度のことも分からぬとは……」
あからさまにこちらを見下す視線。
苛立ちが募るのを感じながらも必死に耐え、伯爵家当主の言葉を待つ。
そんな俺に満足そうな笑みを浮かべ、伯爵家当主は続けた。
「隠して探るよりも、早く見つかる。理由などそれに決まっているでしょう!」
瞬間、俺の思考は真っ白になった。
◇◇◇
いつも感想&誤字連絡ありがとうございます!
今はまだ、様々な疑念が渦巻いている段階ですが、色々と理由はありますので楽しみにして頂ければ!
(なお、書ききれるとは言いきれない筆力。がんばります……)
以前と同じように、キルアと別れ俺は別室に案内される。
それから、伯爵家当主が現れたのは、少ししてからだった。
「本日はどうしました? サーシャリアの行方に関しては、わかり次第こちらから連絡させていただこうと思っていたのですが……」
困惑した様子の伯爵家当主へと、俺は告げる。
「……本日は少し、聞きたいことができてよらせてもらった」
そう話を切り出しながら、ある疑念が俺の中に生まれていた。
伯爵家当主の顔には、急にきた俺に対する疑念があるが、それだけだった。
俺が来たことに対し、一切の罪悪感も顔に浮かべていない。
そのあまりにも自然な態度に、俺は今さら気づく。
伯爵家当主が感知していない可能性もあるかもしれないと。
……飛び出してこず、もう少しキルアから正確に話を聞いておけば良かったかもしれない。
内心後悔しつつ、俺は会話を続ける。
「現在、サーシャリア失踪の噂が広まっている。それについて何か知らないか?」
「それは私達が広めたものですが?」
「……っ!」
一切の迷いもみせず、そう言いきった伯爵家当主に、俺は絶句した。
けれど、そんな俺の様子に気づかず、伯爵家当主は続ける。
「心配は分かりますが、こんなことを聞くためにわざわざ来ずとも、大丈夫です。なあに、すぐにサーシャリアを見つけて連絡……」
「……何を、考えている?」
「は? 何を、とは?」
まるで分からないと言った表情。
それに俺は思わず怒声を上げかけて、何とか自制する。
「アメリアから、サーシャリア不在を隠せと聞かなかったか?」
「はは、奇異なことを仰る。世間知らずな娘の言葉を真に受けて動いているようでは、一貴族の当主は務まりませんぞ」
自信満々にそう告げる当主に、逆に聞きたくなる。
一体今までに目にしたどこが、一貴族の当主に足る姿なのか、と。
そう苛立ちを溜めつつも、俺はふと思う。
「心配されなくとも、これは考えた上での行為です」
……伯爵家当主のこの自信の理由はいったい何なのかと。
もしかしたら伯爵家当主は、俺が気づかないサーシャリア不在を明かすメリットに思い至っているのか?
それゆえのこの自信だとすれば……。
そう考えた俺は、とりあえず話を聞くことにする。
「……それは一体どんな考えだ?」
「おや、カイン様には理解できませんか? この程度のことも分からぬとは……」
あからさまにこちらを見下す視線。
苛立ちが募るのを感じながらも必死に耐え、伯爵家当主の言葉を待つ。
そんな俺に満足そうな笑みを浮かべ、伯爵家当主は続けた。
「隠して探るよりも、早く見つかる。理由などそれに決まっているでしょう!」
瞬間、俺の思考は真っ白になった。
◇◇◇
いつも感想&誤字連絡ありがとうございます!
今はまだ、様々な疑念が渦巻いている段階ですが、色々と理由はありますので楽しみにして頂ければ!
(なお、書ききれるとは言いきれない筆力。がんばります……)
1
お気に入りに追加
7,692
あなたにおすすめの小説

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる