妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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情報の流出 (カイン視点)

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 サーシャリアが失踪してから、三日後。
 俺、カインは自室の中溢れんばかりに積み上げられた手紙、それを前にして頭を抱えていた。

「くそ、どういうことだ……」

 その手紙に書かれている内容、その全てはサーシャリアに関すること……つまり、サーシャリアの行方を聞くものだった。

 それを見ながら、俺は唇を噛む。
 確かに、サーシャリアの不在はいずれ隠せなくなることではあった。
 何せ、サーシャリアの伯爵家での働きは大きい。
 せめて、サーシャリアから引継を任されていた人間さえ残していれば別だったが、この状況では隠し通すのは不可能だ。

 けれど、三日目の今日でこの量は明らかに異常だった。

「くそ、闇商会の名簿さえ目を通せていないのに……」

 脇に置かれた、キルアに用意させた書類を見つめながら、俺はそう吐き捨てる。
 路上に薄着、そんな状態のサーシャリアなら、闇商会にさらわれた可能性もある。
 そう考えた俺は、闇商会も探っていた。
 けれど、この状況ではこれ以上調べる時間は取れないだろう。
 この噂が広まっていけば、関係を断絶しようとする人間も現れる。
 その前に、対処する必要があり、現在俺はその対応にかかりきりになってい。

「……そろそろか」

 時計を見つめ、俺はそう呟く。

 明らかに、どこかサーシャリア失踪の情報を流している人間がいる。
 そう判断してからすぐに、俺はキルアに命じてその原因を捜させに行っていた。
 この時点でサーシャリア失踪を知っているということは、油断ならない相手であるのは間違いないだろう。
 だが、その相手さえ見つけて潰せれば、サーシャリア失踪の噂は流れなくなる。
 それからデマだと誤魔化せば、ある程度時間は稼げるだろう。

 ……もちろん、噂が流れるほど前ほど時間を稼げるわけではないが。

 そして今日の昼頃、キルアから「原因が判明したので、昼頃屋敷に訪れる」という手紙が送られてきたところだった。
 今はもう昼下がり、キルアはいつ来てもおかしくはない。
 扉が勢いよく叩かれたのは、そんなことを考えている時だった。

「……失礼します、キルアです」

「入れ」

 許可を出すと、すぐにキルアが入ってくる。
 その顔色は、蒼白に近かった。

「早かったが、一体どうした?」

 言いつつ、最悪の予感が頭に過ぎる。

「……手を回していたのは、侯爵家の手の者か?」

 俺を敵視する、兄達がサーシャリアの情報をつかんでいたら。
 その場合、間違いなく次期当主争いは苛烈になる。
 しかし、その俺の言葉にキルアは力なく首を横に振った。

「違います」

「そうか、それならひとまず安心……」

「……伯爵家です」

「……なんと言った?」

 その時、俺の声は隠し切れぬほどに震えていた。
 自分の頭に浮かんだ考えを否定してくれることを願いながら、俺はキルアを見つめる。

「噂の大元は、カルベスト伯爵家家です」

 だが、その願いが聞き届けられることはなかった。
 キルアは、自身もまた蒼白な表情で告げる。

「伯爵家がサーシャリアの失踪を吹聴しつつ、その行方を捜しています」

 今さらになって、俺は理解する。
 現状は、想像よりも遙かに最悪な状態なのだと。

「伯爵家にいく! 馬車を出せ!」

 次の瞬間、俺はそう叫びながら部屋を取びだした。
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