妹に全てを奪われた私は〜虐げられた才女が愛されることを知るまで〜

影茸

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マリア

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 徐々に赤く染まっていく少女の顔を呆然と見つめる。
 まるで想定外の出来事に、私はそんなことしかできなかった。
 そんな何とも言えない空気の中、私はふと思う。

 ……この事態は、少女にとっても想定外だったのではないかと。

 少女の、ぐるぐると焦点の定まらない大きな瞳には、いつの間にか涙が溜まり始めている。
 さらによく見てみれば、手帳の開かれたページには「気合いを入れて挨拶をする! お疲れの様子だったら……」などの、予定が書かれている始末。

 どうみても、この状況は少女が意図して作り上げたようには思えない。
 だが、それに気づいたからと言って気の利く言葉が思いつけるわけではなかった。
 私は必死にこの場を切り抜ける方法を考える。

 ソシリアが、手をたたいたのはそんなときだった。

「落ち着きなさい、マリア」

 その時ほど、私がソシリアに感謝したことはなかった。
 少女、マリアも同じだったのか涙目……いや、ほとんど泣いた状態でソシリアにすがりつく。

「そ、ソシリア様、わたしぃ……」

「はい、泣かないの。緊張しすぎよ」

「だってぇ……」

 そんなマリアを撫でながら、ソシリアは嘆息を漏らす。

「はいはい、とりあえず後でサーシャリアと話す時間は作ってあげるから。そこでゆっくり親交を深めなさい」

「……え?」

 まるで、想像もしないところで呼ばれた私は、思わず声をあげる。
 けれど、そんなことを意に介すソシリアではなかった。

「いいでしょ、サーシャリア?」

「……もちろん予定なんてないけど」

「それじゃ決まりね」

 そう強引に決めると、ソシリアはマリアに告げる。

「そういうことだから、今は着付けだけお願いするわ」

「え、いいんでしょうか……?」

「いいのいいの。それじゃ、私も着替えてくるから後はよろしくね」

 その時になって、呆然と見ているだけだった私は声を上げる。
 さすがに、この状況で二人は避けたい。

「ちょ、ソシリア……」

「着替えたら、部屋の前で待っていてね。食堂までは私が案内するから」

「待ちなさいよ!」

 ……しかし、そんな制止する私を尻目にソシリアは、さっさと部屋を後にしてしまった。

 今このときほど、ソシリアに恨みを抱いたことはない。
 先ほどと真逆の思いを抱き、私はソシリアが出て行った扉を睨みつける。

「そ、その先ほどは失礼いたしました!」

 ……背後から、マリアの声が響いたのはそんなときだった。

 ◇◇◇

 何度もタイトル変更申し訳ありません!
 恐らく、もうないはず……。
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