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部屋での決意
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「どうして、いつもこうなるの……!」
ようやく私が苛立ちを顕にできたのは、自室でのことだった。
抑えきれない苛立ちに耐えるよう、強く拳を握りしめながら、呟く。
「なんで、アメリアばかり!」
いつもそうだ。
全ての人間が、アメリアの味方をする。
お父様や、マールスだけではない。
使用人でさえ、陰では自分を嘲っていることを、私は知っている。
いつものことだと分かりながら、それでも私は自分の感情を抑えることができなかった。
例え、自分が悪いのだと……私の気の強さが他の人を遠ざけているのだと分かっていても。
──可愛げのない。
今まで両親に、アメリアに言われてきた言葉が頭に過ぎる。
私だって知っているのだ。
自分の態度こそが、何より他の人を苛立たせることを。
だから、可愛らしいアメリアが私より優先されるのは当然のことだと。
それでも、カインだけは諦められなかった。
「……だとしても、今回だけは!」
この婚約は、少し前にカインの方から申し込まれたものだ。
まだ私とカインは、知り合って間もない。
それでも、カインは結婚を申し込む時に言ってくれたのだ。
気が強くても構わないと。
家族として、すれ違いを治していけばいいと。
そんな言葉をかけてくれた彼を諦めるなんて、私には納得できなかった。
けれど、今ここでまたアメリアに訴えたところで、無駄なのは分かりきっている。
今日の様子を見る限り、どれだけ訴えてもアメリアが聞くことはないだろう。
だとしたら、残された手段は一つ。
「お父様とお母様に直訴するしかない」
現在、お父様もお母様も屋敷にはいない。
伯爵家の事業のため、王都に向かっているのだ。
帰ってくるのは、おそらく明後日。
その時に、何とかしてアメリアを止めるよう説得するしかない。
……両親達はアメリアに味方するだろうことを理解しつつ、私はそう覚悟を決める。
もう、両親を説得するしか選択肢は残っていない。
「少なくとも、勝算がないわけじゃないわ」
伯爵家の事業、それは元々学生の頃の私が興したものだ。
カインとの婚約にあたって、私はその事業を両親に引き継いだが、それまでに改善案を考えていた。
それと引き換えに私の味方となって貰うのだ。
「こんなことで、カインを奪われてたまりますか!」
唯一の私の味方のカイン。
それを絶対に取り戻すと、私は決意を新たにする。
「そう。もう私には、カインしか味方がいないんだから」
……ふと、私がかつて味方となってくれた人達を思い出したのは、その時だった。
それは学生の頃の生徒会。
あの頃は、本当に楽しかった。
私の努力を皆が裏表なしに認めてくれて、あのと一時だけは私も思えたのだ。
自分も、劣った人間じゃないじゃないかと。
あの時の皆は、一体どうしているのだろうか。
「今は、目の前のことをしないと」
そこまで考えて、私は思考を止める。
それ以上考えると、今の惨めな自分がより強調される気がして。
「……とにかく、明後日までに全てを整えないと」
改善案を詰めると考えると、もう時間はないのだ。
そう言い聞かせ、私は過去から目を逸らした。
ようやく私が苛立ちを顕にできたのは、自室でのことだった。
抑えきれない苛立ちに耐えるよう、強く拳を握りしめながら、呟く。
「なんで、アメリアばかり!」
いつもそうだ。
全ての人間が、アメリアの味方をする。
お父様や、マールスだけではない。
使用人でさえ、陰では自分を嘲っていることを、私は知っている。
いつものことだと分かりながら、それでも私は自分の感情を抑えることができなかった。
例え、自分が悪いのだと……私の気の強さが他の人を遠ざけているのだと分かっていても。
──可愛げのない。
今まで両親に、アメリアに言われてきた言葉が頭に過ぎる。
私だって知っているのだ。
自分の態度こそが、何より他の人を苛立たせることを。
だから、可愛らしいアメリアが私より優先されるのは当然のことだと。
それでも、カインだけは諦められなかった。
「……だとしても、今回だけは!」
この婚約は、少し前にカインの方から申し込まれたものだ。
まだ私とカインは、知り合って間もない。
それでも、カインは結婚を申し込む時に言ってくれたのだ。
気が強くても構わないと。
家族として、すれ違いを治していけばいいと。
そんな言葉をかけてくれた彼を諦めるなんて、私には納得できなかった。
けれど、今ここでまたアメリアに訴えたところで、無駄なのは分かりきっている。
今日の様子を見る限り、どれだけ訴えてもアメリアが聞くことはないだろう。
だとしたら、残された手段は一つ。
「お父様とお母様に直訴するしかない」
現在、お父様もお母様も屋敷にはいない。
伯爵家の事業のため、王都に向かっているのだ。
帰ってくるのは、おそらく明後日。
その時に、何とかしてアメリアを止めるよう説得するしかない。
……両親達はアメリアに味方するだろうことを理解しつつ、私はそう覚悟を決める。
もう、両親を説得するしか選択肢は残っていない。
「少なくとも、勝算がないわけじゃないわ」
伯爵家の事業、それは元々学生の頃の私が興したものだ。
カインとの婚約にあたって、私はその事業を両親に引き継いだが、それまでに改善案を考えていた。
それと引き換えに私の味方となって貰うのだ。
「こんなことで、カインを奪われてたまりますか!」
唯一の私の味方のカイン。
それを絶対に取り戻すと、私は決意を新たにする。
「そう。もう私には、カインしか味方がいないんだから」
……ふと、私がかつて味方となってくれた人達を思い出したのは、その時だった。
それは学生の頃の生徒会。
あの頃は、本当に楽しかった。
私の努力を皆が裏表なしに認めてくれて、あのと一時だけは私も思えたのだ。
自分も、劣った人間じゃないじゃないかと。
あの時の皆は、一体どうしているのだろうか。
「今は、目の前のことをしないと」
そこまで考えて、私は思考を止める。
それ以上考えると、今の惨めな自分がより強調される気がして。
「……とにかく、明後日までに全てを整えないと」
改善案を詰めると考えると、もう時間はないのだ。
そう言い聞かせ、私は過去から目を逸らした。
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