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第72話 (アリミナ目線)
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「どうして、ここに……?」
私はかすれた声で、そうマーガレットに告げる。
だが、マーガレットがここにいる理由くらい私は理解していた。
粗末な服をきた私の姿を移すマーガレットの眼に浮かぶ怒りの炎、それが何より雄弁に彼女がこの場所に現れた理由を物語っている。
……婚約者を奪った私に復讐しに来たのだと。
私の身体が震え始める。
今の私は、もう公爵令嬢ではない。
つまり、もう私を守ってくれるものは存在しないのだ。
「も、もしかして私に復讐するつもりなの! 公爵家の血を引くこの私を!」
それなのに、気づけば私はマーガレットに対してそう叫んでいた。
「悪いのは引き留められなかったあなたじゃないの? 私を恨むのは逆恨みじゃない!」
高圧的な言葉を告げながも、私の顔はどんどんと青ざめていく。
……こんなことを言っても、相手を怒らせるだけだと分かりながらも。
しかし、私がこの場を無事に生き残るには公爵家の権限にすがることしかできなかった。
「私に手を出せば、公爵家が黙っていないわよ!」
そう告げながら、一番公爵家が自分を助けはしないことを理解している私は、自嘲しそうになる。
全てを奪おうとした私を、お姉様が許すはずがないことぐらいよく理解出来ていたから。
そして、大抵の相手もそれを知っているだろう。
その上でこんなことを告げられれば、ふざけているのかと、激怒しておしまい。
火に油を注ぐ結果になるだけだ。
「私には公爵家がついているのよ!」
が、それを理解してもなお、私は必死に叫ぶ。
私の剣幕に、公爵家からの報復があると思い込むことを願って。
……それは、パニック状態故に考えついた、愚策中の愚策だった。
この貴族社会で私が公爵家の庇護を得ていると考える人間なんて一人もいない。
私がやったことは相手を怒らせるだけに過ぎないのだ。
けれど、マーガレットが私の言葉を受けて浮かべたのは、怒りではなく呆れだった。
「……本当に、どうしようもないわね。貴女」
ただただ、呆れだけを滲ませてこちらを射抜くマーガレットの視線に、私は呆然と立ち尽くす。
「まだ気づいていないの? ──自分が今まで誰に守られていたのか」
私はかすれた声で、そうマーガレットに告げる。
だが、マーガレットがここにいる理由くらい私は理解していた。
粗末な服をきた私の姿を移すマーガレットの眼に浮かぶ怒りの炎、それが何より雄弁に彼女がこの場所に現れた理由を物語っている。
……婚約者を奪った私に復讐しに来たのだと。
私の身体が震え始める。
今の私は、もう公爵令嬢ではない。
つまり、もう私を守ってくれるものは存在しないのだ。
「も、もしかして私に復讐するつもりなの! 公爵家の血を引くこの私を!」
それなのに、気づけば私はマーガレットに対してそう叫んでいた。
「悪いのは引き留められなかったあなたじゃないの? 私を恨むのは逆恨みじゃない!」
高圧的な言葉を告げながも、私の顔はどんどんと青ざめていく。
……こんなことを言っても、相手を怒らせるだけだと分かりながらも。
しかし、私がこの場を無事に生き残るには公爵家の権限にすがることしかできなかった。
「私に手を出せば、公爵家が黙っていないわよ!」
そう告げながら、一番公爵家が自分を助けはしないことを理解している私は、自嘲しそうになる。
全てを奪おうとした私を、お姉様が許すはずがないことぐらいよく理解出来ていたから。
そして、大抵の相手もそれを知っているだろう。
その上でこんなことを告げられれば、ふざけているのかと、激怒しておしまい。
火に油を注ぐ結果になるだけだ。
「私には公爵家がついているのよ!」
が、それを理解してもなお、私は必死に叫ぶ。
私の剣幕に、公爵家からの報復があると思い込むことを願って。
……それは、パニック状態故に考えついた、愚策中の愚策だった。
この貴族社会で私が公爵家の庇護を得ていると考える人間なんて一人もいない。
私がやったことは相手を怒らせるだけに過ぎないのだ。
けれど、マーガレットが私の言葉を受けて浮かべたのは、怒りではなく呆れだった。
「……本当に、どうしようもないわね。貴女」
ただただ、呆れだけを滲ませてこちらを射抜くマーガレットの視線に、私は呆然と立ち尽くす。
「まだ気づいていないの? ──自分が今まで誰に守られていたのか」
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