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第65話 (ライルハート目線)
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「……なんとかなったか」
バールセルトの部屋からすぐに離れるべく、足早に廊下を歩く俺の口から漏れたのは隠しきれない安堵の声だった。
バールセルトに言った覚悟は真実で、バールセルトと殺しあう覚悟が嘘だった訳ではない。
アイリスを守るためなら、バールセルトを殺すために世界を巻き込むつもりでさえあった。
……だが、その覚悟あってさえバールセルトに啖呵をきるのには、並大抵の体力消費ではなかった。
最悪、息子と殺しあうことさえまるで躊躇しないと明言したバールセルトを思い出し、俺の口から苦々しげな声が漏れる。
「……化け物め」
いざ殺し合いとなれば、なんとしても俺は勝つ気ではある。
が、それでも絶対に大きな被害を受けるのは確実だろう。
チート持ちでないくせに、近接ではチート持ちである俺でさえ勝てない。
肉体的には全盛期を超えているのにもかかわらずだ。
そんの化け物が、バールセルトという存在なのだ。
そしてそんな化け物を敵に回さなければならない未来を思い描き、俺は嘆息を漏らした。
「はあ、公爵家当主になれば、あのバールセルトを敵に回して行かないといけないのか……」
今回の態度を見る限り、バールセルトが本気で俺を潰しに来ることはないだろう。
が、貴族代表である公爵家と王家という立場上、俺とバールセルトは絶対に争い合う関係となる。
王家に絶対服従を誓えばその限りではないが、兄貴ならともかくバールセルトには絶対嫌だ。
それに、公爵家当主となった俺が気にしなければならないのはバールセルトだけではなかった。
「明日から、押し寄せてくる貴族の処理もしなければならないのか……」
前にも言った通り、いままで俺を虐げて馬鹿にしてきた貴族達は、俺の機嫌をとるため明日から屋敷に押し寄せてくるだろう。
その処理を考え、自然と俺の顔は険しいものとなる。
が、すぐにその顔は緩んだ。
「だが、ようやくアイリスと結婚できる」
今までの切望がようやく叶う。
その未来を想像し、俺は笑った。
それは俺にとって、面倒な貴族達の対応さえ霞んでしまうほど絶望した未来だった。
明日からは忙しくなるに違いない。
ならば今日だけは、アイリスと共にいよう。
そう考えて、俺はわずかに歩く足を早める。
「……けて!お願いだから、助けて!」
……その声が、俺の耳に入ってきたのはその時だった。
「ん?」
その切羽詰まった声にどこか聞き覚えを感じ、俺はわずかに眉をひそめる。
その声はここ最近聞いた人間のもので、聞き間違いではないだろう。
だが、その声の主がなぜこの場所にいるのか分からず、俺は好奇心からその声の方、曲がり角の向こうへと歩き出す。
「お願いします!だから、助けて!」
……次の瞬間、俺の目に入ってきたのは貴族の令息に縋り付くアイリスの義妹、アリミナの姿だった。
◇◇◇
《あとがき》
長々と更新停止しており、本当に申し訳ありませんでした!
本当に色々と重なってしまい、他作品も含め色々と更新が滞っておりました。
今度は完結まで書いて定期更新していこうと考えていたのですが、想像以上に新作からこちらに来て下さった方が多く、更新再開させて頂きました。
かなり書き溜めたので、完結まできちんと毎日更新できるはず……(震え
なんとか、今回こそは完結まで途絶えずに頑張ろうと思いますのでよろしくお願いします!(日が空いたら本当に申し訳ありません!)
バールセルトの部屋からすぐに離れるべく、足早に廊下を歩く俺の口から漏れたのは隠しきれない安堵の声だった。
バールセルトに言った覚悟は真実で、バールセルトと殺しあう覚悟が嘘だった訳ではない。
アイリスを守るためなら、バールセルトを殺すために世界を巻き込むつもりでさえあった。
……だが、その覚悟あってさえバールセルトに啖呵をきるのには、並大抵の体力消費ではなかった。
最悪、息子と殺しあうことさえまるで躊躇しないと明言したバールセルトを思い出し、俺の口から苦々しげな声が漏れる。
「……化け物め」
いざ殺し合いとなれば、なんとしても俺は勝つ気ではある。
が、それでも絶対に大きな被害を受けるのは確実だろう。
チート持ちでないくせに、近接ではチート持ちである俺でさえ勝てない。
肉体的には全盛期を超えているのにもかかわらずだ。
そんの化け物が、バールセルトという存在なのだ。
そしてそんな化け物を敵に回さなければならない未来を思い描き、俺は嘆息を漏らした。
「はあ、公爵家当主になれば、あのバールセルトを敵に回して行かないといけないのか……」
今回の態度を見る限り、バールセルトが本気で俺を潰しに来ることはないだろう。
が、貴族代表である公爵家と王家という立場上、俺とバールセルトは絶対に争い合う関係となる。
王家に絶対服従を誓えばその限りではないが、兄貴ならともかくバールセルトには絶対嫌だ。
それに、公爵家当主となった俺が気にしなければならないのはバールセルトだけではなかった。
「明日から、押し寄せてくる貴族の処理もしなければならないのか……」
前にも言った通り、いままで俺を虐げて馬鹿にしてきた貴族達は、俺の機嫌をとるため明日から屋敷に押し寄せてくるだろう。
その処理を考え、自然と俺の顔は険しいものとなる。
が、すぐにその顔は緩んだ。
「だが、ようやくアイリスと結婚できる」
今までの切望がようやく叶う。
その未来を想像し、俺は笑った。
それは俺にとって、面倒な貴族達の対応さえ霞んでしまうほど絶望した未来だった。
明日からは忙しくなるに違いない。
ならば今日だけは、アイリスと共にいよう。
そう考えて、俺はわずかに歩く足を早める。
「……けて!お願いだから、助けて!」
……その声が、俺の耳に入ってきたのはその時だった。
「ん?」
その切羽詰まった声にどこか聞き覚えを感じ、俺はわずかに眉をひそめる。
その声はここ最近聞いた人間のもので、聞き間違いではないだろう。
だが、その声の主がなぜこの場所にいるのか分からず、俺は好奇心からその声の方、曲がり角の向こうへと歩き出す。
「お願いします!だから、助けて!」
……次の瞬間、俺の目に入ってきたのは貴族の令息に縋り付くアイリスの義妹、アリミナの姿だった。
◇◇◇
《あとがき》
長々と更新停止しており、本当に申し訳ありませんでした!
本当に色々と重なってしまい、他作品も含め色々と更新が滞っておりました。
今度は完結まで書いて定期更新していこうと考えていたのですが、想像以上に新作からこちらに来て下さった方が多く、更新再開させて頂きました。
かなり書き溜めたので、完結まできちんと毎日更新できるはず……(震え
なんとか、今回こそは完結まで途絶えずに頑張ろうと思いますのでよろしくお願いします!(日が空いたら本当に申し訳ありません!)
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