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第59話 (ライルハート目線)

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 牢獄から出て、屋敷を後にした俺は、魔法を使い王宮へと向かって飛び始めた。
 冷たい風が頬を掠め、身体から体温を奪っていくのがわかる。

 だが、それさえ気にならないほど俺の身体は火照っていた。
 俺は内心の熱に侵され、緩みきった口を開く。

 「……はは、あの男に会いに行く時に、まさかこんな気持ちになる日が来るとはな」

 アイリスに危害を与えられそうになり、行動を起こしたが、本来ならば今アレスルージュを引きずり落すのは、出来るだけ避けたかった事態だった。
 アイリスを守りながらアレスルージュを引きずり落とす方法なら、一年で俺は準備を整えていたが、その時に行動を起こすことはなかった。

 アイリスを守り、アレスルージュを潰すことに対する最大の障害は、公爵家程度の存在ではなかったからだ。

 だから先程までの俺は、アレスルージュを追い詰めいる時でさえ、内心焦燥を抱いていた。
 これからどうすればいいのか、この先を想像することもできなかったからこそ。

 だが、その不安はもう俺の胸には存在しなかった。
 一番大事なものは、もう定まっているのだから。

 「早く話をつけて、アイリスのところに戻らないとな」

 小さく呟いた俺は、宙を飛んだ状態のまま、王宮の奥にある目標の部屋、兄貴の私室へと向かう。
 直ぐにその部屋へとたどり着いた俺は、そこに合った窓からその部屋へと入る。
 部屋の中には、顔に僅かな驚愕を浮かべた兄貴の姿があった。
 しかし、兄貴が驚愕をその顔に浮かべたのはほんの一瞬のことだった。

 「……っ!来たか、ライルハート。……父上が、国王陛下がお前のことを待っている」

 険しい表情でそう告げた兄貴には、隠しきれない緊張が浮かんでいた。
 だが、その兄貴と対照的に俺は笑った。
 まるで、今から仲のいい家族とでも会いにいくような、あまりにも自然な態度で。

 「分かりました」

 「ライル、ハート?……いや、今はそんなことはいいか。案内する。後ろについてこい」

 そして俺は、兄貴続いて歩き出した……
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