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第20話

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 夜会、それは一般的に貴族の婚約者探しに使われる場所で、また貴族が婚約者を得たというのを公式に発表する場でもある。
 もちろん私とライルハート様の婚約は、もう世間一般に公表されている。
 なので今回夜会に訪れることは、私とライルハート様の婚約を正式なものとし、近々結婚する意味を持つ。

 普段は殆どパーティーに出たがらないライルハート様が来るのも、それが理由。
 だからこそ、今日の夜会は私にとって重大な意味を持っていた。

 「……今日が終われば、お父様も諦めてくれるわよね」

 夜会が開催される会場に、リサを連れ添って向かいながら、私はそう呟く。

 婚約してから二度目の夜会、それが持つ意味は大きい。
 たしかにお父様はライルハート様を軽んじ、好き勝手やって来たが、夜会が終わればもうそんなかとはできないだろう。
 今回の夜会は、結婚を大々的に発表するのと同等なのだから。

 ……そう思いながらも、お父様が手出ししてこないと断言することが私には出来なかった。

 もしかしたら、この後お父様とは話し合う必要があるかもしれない。
 その思いが私の中、緊張を産み、少し顔が強張る。

 リサが、私へとそっと口を開いたのはそのときだった。

 「アイリス様、折角のお美しい姿なのですから、微笑んだ方がよろしいと思いますよ。アイリス様にお熱なライルハート様もそれをお望みかと」

 「っ!」

 にやにやと、からかうような笑みを浮かべてのリサの言葉に、私の顔は朱に染まる。
 反射的に私は、リサへと非難の声をあげる。

 「リサ!」
 
 「申し訳ございません。ついうっかり」

 まるで反省などしていないリサにたいし、私は顔を背けて不満を表したが──そのときすでに、私の頭の中はライルハート様のことで一杯になっていた。
 思えば、あのライルハート様をからかった手紙以来、一切会話など交わしていない。
 ライルハート様が、一体どんな反応をするのか、今更ながら私の胸に不安が広がる。

 だからといって今更足を止めることができるわけなく、内心葛藤を抱きながら、私は会場へと足を踏み入れることになった……。
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