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 アーザスを殺した後、俺はサーシャを抱え城を出るべく歩き出した。
 アーザスが来たということは、俺の行動を読んでいた人間は他にもいるだろう。
 彼らが来る前に、逃げようと俺は必死に走る。

 が、その試みは既に手遅れだった。

 「っ!」

 知る人が限られる裏口から城を出た瞬間、足元に矢が刺さり、俺は強制的に足を止めさせられることになる。
 どうやら、俺の行動はお見通しだったらしい。
 最悪の事態になったことを理解し、唇を噛みしめる。

 ……だが次の瞬間響いた国王の声に、状況は自分の想像を超える事態だったことを、俺は理解することになった。

 「逆臣アーザスから、勇者殿を救い出してくれたことにお礼を言おう魔術師サイス。その功を、この私、国王アルベルトが称えよう。──だから、勇者を置いてこの場から去れ」


 「………っ!」

 俺が顔を後ろに向けると、城の城壁には大量の騎士達が存在していた。
 俺がこの裏口から出てくることさえ、アルベルトの予想のうちだったということだ。
 いや、アルベルトがこのことを分からない訳が無い。

 ……何せ、アルベルトは俺の行動全てを読んでいたのだから。

 それを理解した瞬間、感情を抑えることができず俺は叫んでいた。

 「アーザスを唆したのは、お前なのか!お前は、アーザスを元から殺すつもりでいたのか!」

 「ああ、そうだ。アーザスはどうせ殺すつもりだった。だから、お前に機会を与えることにした」

 アルベルトは俺の言葉を首肯して笑った。

 「なあ、サイス。もう満足だろう?お前を虐げていたアーザスを殺す機会をやった。アーザスをお前が殺したことを知れば、他の人間がお前を虐げることはもうない。いや、お前が逆に虐げることだってできる」

 アルベルトはまるで誰かを誘惑するように言葉を重ねた。

 「だから、サイス。──勇者のことは諦め、俺のもとに降れ」
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みんなの感想(5件)

或守
2019.05.01 或守

一気に読みました
続きが気になります

解除
アッキー
2019.01.30 アッキー
ネタバレ含む
解除
アッキー
2019.01.18 アッキー

サイス君頑張れ~!必ずスーシャを助け出して二人幸せになるのを楽しみにしてます!

解除

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