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1.ギルド編
第42話 ギルド (ユーラ視線)
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今話の状況は少し変わって、第27話で出てきた冒険者ユーラの目線になります!
◇◇◇
「おい、お前それ俺が取ろうとしていた依頼書だろうが!」
「はっ!早い者勝ちに決まってんだろうが!」
冒険者が小競り合いを起こして、騒ぎあうギルド内。
「はぁ……」
そしてそんな変わらない目の前の光景に俺、ユーラはそう溜息をついた。
それは決して変わらない日々に退屈さを覚えているだとか、マンネリだとか、そんな理由ではなかった。
冒険者という職業をしている以上、常に俺達はスリルと隣り合うことになる。
そしてそんな状況に対して退屈なんて、当たり前だが感じない。
「……来てないのか」
つまり俺の溜息の理由、それはそんなものとは全く別の理由だった。
溜息をつきながら辺りを見回す私は決して見慣れた光景をぼんやり見ているわけではなかった。
私は、人を探していたのだ。
それは最近、推薦でCランクになった冒険者で、なぜか彼のことが俺は気になっていて……
「……もう少し早めに起きてみようかな」
気づけばそんな風に呟いていた。
「おぅ、やっぱりあいつを探しているのか?」
「っ!うるさい!」
そしてその俺の独り言をいつのまにか側に来て勝手に盗み聞きして茶化してくる、冒険者、タラールに怒鳴る。
そしてそれは本当にいつもと変わらない日だった。
いつもと同じく、やかましいほど騒がしく、けれども平和な日。
いつものように、ギルドは命をかける冒険者達にとって変わらない心地よさを保っていて……
……しかしその平穏はギルドの扉を乱雑に開け、中に入ってきたギルド職員によって終わることとなった。
息を切らし、全身を固める鎧のまま走ってきたのか、滝のような汗を流す彼。
「森の悪魔が、あの化け物が出た!」
……そしてその言葉はギルド内にいた、全ての人間から言葉を奪った。
「っ!」
◇◆◇
森の悪魔、それはダイウルフの特異種だと思われている存在だった。
私たちのギルドは非常に魔獣の群生地に近い場所に置かれている。
だから時々、その悪魔は現れる。
……そして前回、その悪魔が現れたのは数年前で、その際にこのギルドはその時潰れかけた。
その地獄のような光景を今でも俺は覚えている。
その時、俺はまだガキだった。
食い扶持が足りなくなって親に捨てられ、そのことに対して世界が終わったかのようにメソメソしていたような。
しかし、他の冒険者達が俺のことを構ってくれているうちに、新しく冒険者として生きて行こう、そう思うようになって……
ーーー けれども、その私を気遣ってくれていた冒険者の殆どがその日に死んだ。
それは、悪夢だった。
全てが汚染され、またこの場所に戻ってくるまでに三年野月日を要した。
そしてそれまでの被害を生みながら、その悪魔はまだ弱い方だと言うのだ。
その日のことは忘れられない記憶として俺の中に込められていて……
「今、俺の仲間達が……っ!足止めを……」
「わかった!すぐに動く!」
……だから、周りがそう告げて動いていく中、私だけは動くことができなかった。
頭の中を、あの悪夢がぐるぐると回って気分が酷く悪くなる。
ー いやだ!なんでまたあれが私のところにやってくるの!?
そして無意味とわかりながら、周囲へとそう叫んで蹲りたい衝動に駆られる。
「急げ!早くここから出るぞ!」
……けれども、そんな俺に対して周囲の人間達は必死に動いていた。
彼らも私と同じく、あの地獄を味わっているはずなのにだ。
「っ!」
そして、その光景を見た時俺は唇をかみしめて立ち上がっていた。
叫ぶことはできない。
それは悪夢以前の弱い自分を出すことに他ならない。
そして、俺はもう弱いままでいないと決意したのだ。
だから、俺は決意と共に顔を上げて……
「ははっ!」
……そして、歪に頬を歪めたギルド職員の顔を目にした。
彼はCランク下位の実力しか有していないのに、冒険者達に高圧的な態度をとる、正直嫌われ者だった。
けれども、今の非常時そんなことを気にしている暇はない。
仲間を見捨ててと、顔を歪める彼の態度の態とらしさに気づくことなく、冒険者達は逃げることが死んだやつらの望むことだと言い聞かせて一緒にここから去ろうとする。
ーーー けれども、ギルド職員の笑みに、仲間が身代わりになったというその言葉に私は酷い違和感を感じた。
……そして、そのギルド職員が誰と共に依頼に行っていたかを思い出して。
「待ちなさい!」
そして、その時だった。
こんな非常時でありながら、凛としているエイナの声がその場に響いた。
「仲間が、身代わり?」
そして、その顔は必死に冷静さを保とうとしながらもなお、隠しきれない怒りが滲んでいて……
「あぁ、そうだ。俺にギルドに伝えろと足止めに……っ!」
しかし、その説明の言葉は突然突きつけられたエイナの大剣によって強制的に中断させられることとなった。
「ーーー 足止めに、元後衛のギルド職員と、仮のCランクが?
私が求めているのはお前の言い訳ではない。事実を、端的に述べろ」
そして怒りの表情でそう言葉を重ねたエイナの言葉に、どよめきがギルド内に広がっていった……
◇◇◇
「おい、お前それ俺が取ろうとしていた依頼書だろうが!」
「はっ!早い者勝ちに決まってんだろうが!」
冒険者が小競り合いを起こして、騒ぎあうギルド内。
「はぁ……」
そしてそんな変わらない目の前の光景に俺、ユーラはそう溜息をついた。
それは決して変わらない日々に退屈さを覚えているだとか、マンネリだとか、そんな理由ではなかった。
冒険者という職業をしている以上、常に俺達はスリルと隣り合うことになる。
そしてそんな状況に対して退屈なんて、当たり前だが感じない。
「……来てないのか」
つまり俺の溜息の理由、それはそんなものとは全く別の理由だった。
溜息をつきながら辺りを見回す私は決して見慣れた光景をぼんやり見ているわけではなかった。
私は、人を探していたのだ。
それは最近、推薦でCランクになった冒険者で、なぜか彼のことが俺は気になっていて……
「……もう少し早めに起きてみようかな」
気づけばそんな風に呟いていた。
「おぅ、やっぱりあいつを探しているのか?」
「っ!うるさい!」
そしてその俺の独り言をいつのまにか側に来て勝手に盗み聞きして茶化してくる、冒険者、タラールに怒鳴る。
そしてそれは本当にいつもと変わらない日だった。
いつもと同じく、やかましいほど騒がしく、けれども平和な日。
いつものように、ギルドは命をかける冒険者達にとって変わらない心地よさを保っていて……
……しかしその平穏はギルドの扉を乱雑に開け、中に入ってきたギルド職員によって終わることとなった。
息を切らし、全身を固める鎧のまま走ってきたのか、滝のような汗を流す彼。
「森の悪魔が、あの化け物が出た!」
……そしてその言葉はギルド内にいた、全ての人間から言葉を奪った。
「っ!」
◇◆◇
森の悪魔、それはダイウルフの特異種だと思われている存在だった。
私たちのギルドは非常に魔獣の群生地に近い場所に置かれている。
だから時々、その悪魔は現れる。
……そして前回、その悪魔が現れたのは数年前で、その際にこのギルドはその時潰れかけた。
その地獄のような光景を今でも俺は覚えている。
その時、俺はまだガキだった。
食い扶持が足りなくなって親に捨てられ、そのことに対して世界が終わったかのようにメソメソしていたような。
しかし、他の冒険者達が俺のことを構ってくれているうちに、新しく冒険者として生きて行こう、そう思うようになって……
ーーー けれども、その私を気遣ってくれていた冒険者の殆どがその日に死んだ。
それは、悪夢だった。
全てが汚染され、またこの場所に戻ってくるまでに三年野月日を要した。
そしてそれまでの被害を生みながら、その悪魔はまだ弱い方だと言うのだ。
その日のことは忘れられない記憶として俺の中に込められていて……
「今、俺の仲間達が……っ!足止めを……」
「わかった!すぐに動く!」
……だから、周りがそう告げて動いていく中、私だけは動くことができなかった。
頭の中を、あの悪夢がぐるぐると回って気分が酷く悪くなる。
ー いやだ!なんでまたあれが私のところにやってくるの!?
そして無意味とわかりながら、周囲へとそう叫んで蹲りたい衝動に駆られる。
「急げ!早くここから出るぞ!」
……けれども、そんな俺に対して周囲の人間達は必死に動いていた。
彼らも私と同じく、あの地獄を味わっているはずなのにだ。
「っ!」
そして、その光景を見た時俺は唇をかみしめて立ち上がっていた。
叫ぶことはできない。
それは悪夢以前の弱い自分を出すことに他ならない。
そして、俺はもう弱いままでいないと決意したのだ。
だから、俺は決意と共に顔を上げて……
「ははっ!」
……そして、歪に頬を歪めたギルド職員の顔を目にした。
彼はCランク下位の実力しか有していないのに、冒険者達に高圧的な態度をとる、正直嫌われ者だった。
けれども、今の非常時そんなことを気にしている暇はない。
仲間を見捨ててと、顔を歪める彼の態度の態とらしさに気づくことなく、冒険者達は逃げることが死んだやつらの望むことだと言い聞かせて一緒にここから去ろうとする。
ーーー けれども、ギルド職員の笑みに、仲間が身代わりになったというその言葉に私は酷い違和感を感じた。
……そして、そのギルド職員が誰と共に依頼に行っていたかを思い出して。
「待ちなさい!」
そして、その時だった。
こんな非常時でありながら、凛としているエイナの声がその場に響いた。
「仲間が、身代わり?」
そして、その顔は必死に冷静さを保とうとしながらもなお、隠しきれない怒りが滲んでいて……
「あぁ、そうだ。俺にギルドに伝えろと足止めに……っ!」
しかし、その説明の言葉は突然突きつけられたエイナの大剣によって強制的に中断させられることとなった。
「ーーー 足止めに、元後衛のギルド職員と、仮のCランクが?
私が求めているのはお前の言い訳ではない。事実を、端的に述べろ」
そして怒りの表情でそう言葉を重ねたエイナの言葉に、どよめきがギルド内に広がっていった……
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