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1.ギルド編
第40話 蘇る記憶
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「っ!」
あと一歩、そこまで追い詰めたところで届かなかった勝利。
それに僕は唇を噛みしようとして……
……けれども、もうそんなことをする余力さえ身体には残っていなかった。
視界の端に血だらけな状態でギルド職員が必死に喘いでいるのが見える。
恐らくギルド職員の様子を見て、ダイウルフ達はもう時間の問題だとそう判断してこちらにきたのだろう。
実際に今生きているのがおかしなくらいギルド職員は傷だらけで……
そして僕は彼が必死に時間を稼いでくれていたことを悟った。
彼は最大限時間を稼いでくれていて……
………けれども僕はその稼いでくれた時間をうまく扱うことが出来なかった。
それがこの状況を引き起こした最大の理由で、だから僕は情けなさを感じながら地面へと倒れこむ。
もう、僕の身体は力を入れても動こうとはしなかった。
視界が真っ赤に染まり、頭はもうほとんど働かない。
それは考えられる限り最悪の状況で……
「がルルッ」
……けれども自分の元へと歩いてくるポイズンウルフの姿を目にしても僕の心は酷く落ち着いていた。
何故か僕の頭に今の状況に対する既視感があって……
「っ!」
そして動けない身体のその感覚を意識した時、僕の頭に怒涛の如くある情報が流れ込み始めた……
◇◆◇
怒涛の如く頭に流れ始めた情報、それは決して未知の情報なんかではなかった。
それは僕が体験していたはずの、記憶。
けれども、僕が忘れ去っていた情報で……
そしてその記憶の中で僕はある男と共に浮かんでいた。
そのある男というのは、あの勇者と呼ばれていた人間で……
……そしてそのことが分かった時僕は自然と悟った。
それは僕達が召喚された時、その直前の記憶であることを。
そのことを悟った僕の目の前で眩しい光が勇者に注ぎ出した。
それは酷く神秘的な光景で、その時隠しきれない嘲笑の笑みが勇者の顔に浮かんだ。
そしてその時僕は悟ったのだ。
自分は選ばれた人間でないことを。
隣にいる男、その存在に巻き込まれたことを。
……なのにその男は選ばれなかったと、僕を嘲ったことを。
そのことを悟った時、僕は自然と動いていた。
ーーー そう、勇者へと降り注いだその光を強引に奪ったのだ。
光は手で掴めるものではない。
なのに、どうやってかは分からないが僕はその光を奪い取っていて……
「っは!そういうことか……」
そしてその光景を見た瞬間、ようやく僕は悟った。
ーーー 自分が奪った力の本当の使い方を。
◇◆◇
「ガルッ!」
記憶から戻り、目を開いた僕の目の前には突然目を閉じた僕に対して警戒心を抱いたように唸っているポイズンウルフがいた。
どうやら、僕が目を閉じた瞬間に警戒心を抱かせるくらいには僕はポイズンウルフに対して苦手意識を抱かせていたらしい。
「警戒してくれて助かったよ」
そしてそのことを悟り、僕は自分へと唸るポイズンウルフへと微笑みかけて。
次の瞬間、身体に鞭を打ってシュライトさんから貰っていたポーションを取り出した。
「ガルルルッ!」
その僕の突然の行動に呆気を取られてポイズンウルフが吠える。
ポーションを取り出せたこと、それはまさに奇跡以外の何物ではないだろう。
だが、これを自分に振りかける前にポイズンウルフに殺されることを僕は悟っていた。
ポーションの入った瓶を開けようとした時点で僕は死ぬ。
その前にポイズンウルフにポーションを弾かれ、殺される。
けれどもポイズンウルフも下手に傷つければ僕の身体の前に置いているポーションを割り、僕を回復させてしまうことに気づいて動きを止める。
「よし、いい子だ」
ーーー そして、そのポイズンウルフの動きに笑って僕はポーションを投げ捨てた。
「ガッ!?」
その僕の態度にポイズンウルフは警戒心をさらにあげて僕を見る。
けれども、そのポーションを投げた動きで力尽きたように僕は脱力する。
先程の動きで僕は限界を迎えたのだ。
もう、身体を動かせる自信はない。
「ガルッ!」
そしてポイズンウルフはしばらくして僕の状態を悟る。
それから牙をむき出してる僕へと襲い掛かろうとして……
「我は、望む、」
「ガッ!」
………そしてようやく、背後に膨らむ強大な魔力に気づいた。
その魔力の膨らむ方向、それは僕がポーションを投げた方向。
そう、つまり僕は最初から自分を回復させようとしてポーションを取り出したわけではないのだ。
僕が狙っていたのは、ぼろぼろになっていたギルド職員を回復させることで……
ーーー そしてポイズンウルフがそのことに気づいた時、彼が唱える詠唱は、もう最後になっていた。
先程ボロボロになって死にかけていたギルド職員は、それでも必死に詠唱を続けていたのだ。
傍目には喘いでいるようにしか見えず、魔術用の魔力さえ練れない状態になってもなお。
「悪魔への、主の鉄槌を!」
そしてその命懸けの詠唱が遂に報われる。
次の瞬間、轟音とともにその場へとギルド職員が命をかけて練り上げた魔術が炸裂した。
あと一歩、そこまで追い詰めたところで届かなかった勝利。
それに僕は唇を噛みしようとして……
……けれども、もうそんなことをする余力さえ身体には残っていなかった。
視界の端に血だらけな状態でギルド職員が必死に喘いでいるのが見える。
恐らくギルド職員の様子を見て、ダイウルフ達はもう時間の問題だとそう判断してこちらにきたのだろう。
実際に今生きているのがおかしなくらいギルド職員は傷だらけで……
そして僕は彼が必死に時間を稼いでくれていたことを悟った。
彼は最大限時間を稼いでくれていて……
………けれども僕はその稼いでくれた時間をうまく扱うことが出来なかった。
それがこの状況を引き起こした最大の理由で、だから僕は情けなさを感じながら地面へと倒れこむ。
もう、僕の身体は力を入れても動こうとはしなかった。
視界が真っ赤に染まり、頭はもうほとんど働かない。
それは考えられる限り最悪の状況で……
「がルルッ」
……けれども自分の元へと歩いてくるポイズンウルフの姿を目にしても僕の心は酷く落ち着いていた。
何故か僕の頭に今の状況に対する既視感があって……
「っ!」
そして動けない身体のその感覚を意識した時、僕の頭に怒涛の如くある情報が流れ込み始めた……
◇◆◇
怒涛の如く頭に流れ始めた情報、それは決して未知の情報なんかではなかった。
それは僕が体験していたはずの、記憶。
けれども、僕が忘れ去っていた情報で……
そしてその記憶の中で僕はある男と共に浮かんでいた。
そのある男というのは、あの勇者と呼ばれていた人間で……
……そしてそのことが分かった時僕は自然と悟った。
それは僕達が召喚された時、その直前の記憶であることを。
そのことを悟った僕の目の前で眩しい光が勇者に注ぎ出した。
それは酷く神秘的な光景で、その時隠しきれない嘲笑の笑みが勇者の顔に浮かんだ。
そしてその時僕は悟ったのだ。
自分は選ばれた人間でないことを。
隣にいる男、その存在に巻き込まれたことを。
……なのにその男は選ばれなかったと、僕を嘲ったことを。
そのことを悟った時、僕は自然と動いていた。
ーーー そう、勇者へと降り注いだその光を強引に奪ったのだ。
光は手で掴めるものではない。
なのに、どうやってかは分からないが僕はその光を奪い取っていて……
「っは!そういうことか……」
そしてその光景を見た瞬間、ようやく僕は悟った。
ーーー 自分が奪った力の本当の使い方を。
◇◆◇
「ガルッ!」
記憶から戻り、目を開いた僕の目の前には突然目を閉じた僕に対して警戒心を抱いたように唸っているポイズンウルフがいた。
どうやら、僕が目を閉じた瞬間に警戒心を抱かせるくらいには僕はポイズンウルフに対して苦手意識を抱かせていたらしい。
「警戒してくれて助かったよ」
そしてそのことを悟り、僕は自分へと唸るポイズンウルフへと微笑みかけて。
次の瞬間、身体に鞭を打ってシュライトさんから貰っていたポーションを取り出した。
「ガルルルッ!」
その僕の突然の行動に呆気を取られてポイズンウルフが吠える。
ポーションを取り出せたこと、それはまさに奇跡以外の何物ではないだろう。
だが、これを自分に振りかける前にポイズンウルフに殺されることを僕は悟っていた。
ポーションの入った瓶を開けようとした時点で僕は死ぬ。
その前にポイズンウルフにポーションを弾かれ、殺される。
けれどもポイズンウルフも下手に傷つければ僕の身体の前に置いているポーションを割り、僕を回復させてしまうことに気づいて動きを止める。
「よし、いい子だ」
ーーー そして、そのポイズンウルフの動きに笑って僕はポーションを投げ捨てた。
「ガッ!?」
その僕の態度にポイズンウルフは警戒心をさらにあげて僕を見る。
けれども、そのポーションを投げた動きで力尽きたように僕は脱力する。
先程の動きで僕は限界を迎えたのだ。
もう、身体を動かせる自信はない。
「ガルッ!」
そしてポイズンウルフはしばらくして僕の状態を悟る。
それから牙をむき出してる僕へと襲い掛かろうとして……
「我は、望む、」
「ガッ!」
………そしてようやく、背後に膨らむ強大な魔力に気づいた。
その魔力の膨らむ方向、それは僕がポーションを投げた方向。
そう、つまり僕は最初から自分を回復させようとしてポーションを取り出したわけではないのだ。
僕が狙っていたのは、ぼろぼろになっていたギルド職員を回復させることで……
ーーー そしてポイズンウルフがそのことに気づいた時、彼が唱える詠唱は、もう最後になっていた。
先程ボロボロになって死にかけていたギルド職員は、それでも必死に詠唱を続けていたのだ。
傍目には喘いでいるようにしか見えず、魔術用の魔力さえ練れない状態になってもなお。
「悪魔への、主の鉄槌を!」
そしてその命懸けの詠唱が遂に報われる。
次の瞬間、轟音とともにその場へとギルド職員が命をかけて練り上げた魔術が炸裂した。
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