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1.ギルド編
第32話 遭遇
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先程の痕跡を見つけて、そしてその直ぐ後に僕はダイウルフが先程までいたと思われる痕跡を見つけていた。
「明らかにおかしい……」
けれども、その時の僕にはダイウルフをもうすぐで見つけられるという喜びはなかった。
進むにつれて分かってきたのだ。
そう、明らかにその痕跡がおかしいことに。
変色した草、そして変死した小さな魔獣達。
それらは普通ならば出来ることのない明らかな異常の印だった。
「怯えてるに違いない」
「ああ、所詮仮だ仮」
しかし、僕の後ろでそう話し合うギルド職員は全くその痕跡に気づいていなかった。
その時にはもう僕は悟っていた。
ギルド職員達はもうほとんど役に立たないことを。
今の彼らは僕を嘲笑うということだけに始終徹していて、今どれ程の自体が起きているのか、理解できていない。
……それも、僕が何度も警戒の声をあげてもなお、だ。
そしてそんな状況が続けば僕も分かり始めていた。
この状況を乗り越えるためには自分を信じて行動するしかないことを。
だからダイウルフの存在を確認し、そしてポイズンウルフがいた時には急いでギルドに情報を持ち帰る。
そう僕は決心する。
……しかし、この時僕は気づけていなかった。
ここまで明らかな痕跡を見たのならば、確かめることなくギルドに情報を伝えるべきだったことを。
だがその時、未だ僕の心に巣食っていた自信のなさが僕の行動を蝕んだのだ。
……そしてもう一つ、決して僕が犯してはならなかった失敗を犯していた。
今からの状況は一つの失敗で全てが終わりかねない。
そしてそんな状況に、状況を分かっていないギルド職員達を同行させてはいけなかったのだ。
……それが最悪の事態に繋がることを知らないまま、僕は進んで行く。
◇◆◇
それから僕は迷うことなくダイウルフのいると思われる方向へと進んで行った。
今まで見つけた痕跡で、ダイウルフの群れは決して遠く離れた場所にいないことを悟ったのだ。
けれども、そこからダイウルフの群れを見つけるまで、長い時間がかかった。
相手にポイズンウルフがいた場合のことを考え、慎重に進んで行ったのだ。
そしてその僕の只ならぬ様子に流石に気圧されたのか、ギルド職員達も騒ぎ立てることはなかった。
「いた……」
それからとうとうダイウルフの群れを見つけたのはそこから十数分は経った時だった。
今まで慎重に動く僕に付き合わされ、ほとほとうんざりした様子だったギルド職員達の顔に緊張が浮かぶ。
「待って」
「っ!」
けれども、僕は手を目の前に出し、飛び出そうとした彼らを制止した。
ここでもし相手がポイズンウルフであった場合、僕はその相手をせず逃げるべきなのだから。
「おい、なんだ?」
僕は自分の行動に対して、不服げにギルド職員達が文句を言うのを無視してダイウルフの群れを覗き込んだ。
絶対にバレることのないように慎重に。
そして5匹のダイウルフを僕は眺める。
「……僕の気にしすぎなのか?」
そしてそれから僕はそうぽつりと呟いた。
ポイズンウルフの特徴は、その片目が毒々しい紫に染まっていることだ。
そして確かめて見たが、このにいるダイウルフの中には目が変色している個体は存在しなかった。
それに、ポイズンウルフが被害を与えるのは人間や森だけではない。
同種族の魔獣にさえ、その毒は効果を及ぼす。
つまり、ポイズンウルフがこのにいるのならばあのダイウルフ達は少なくとも調子が悪そうに見えなければおかしいのだ。
けれども、そんな様子は一切見られない。
そしてここはDランク相当の魔獣しかおらず、こんな場所にダイウルフが他にもいるとは思えない。
そのことを確認した僕は、ポイズンウルフは自分の思い込みだったのだと、そう安堵の息を漏らしかけて……
「っ!」
ーーー その時、片目を真紫に染めた6匹目のダイウルフが他のダイウルフの後ろにいたことに気づいた。
それはダイウルフの中でも大柄な、歴戦の雰囲気をかもし出している個体だった。
ポイズンウルフであるとかを除いたとしても、注意すべきな、そんな個体。
そしてその個体の目は明らかにポイズンウルフの中でも滅多に見ない綺麗な紫で……
「嘘だろ……」
……そしてそれはその個体の持つ毒が酷く強力なことを示していた。
ポイズンウルフの毒は、突然変異をした後、過ごす年月の長さによって強くなり、その強さは目の紫色の鮮やかさとなって現れる。
つまり、そのポイズンウルフは明らかに強大な毒を持っていることをしめしている。
そして、問題はそれだけではなかった。
「……くそったれ!」
あれだけ強力な毒を有するポイズンウルフの側であんなにも元気な他のダイウルフ達。
その異様な光景はある最悪の事態を示していた。
ーーー そう、ポイズンウルフ以外の他のダイウルフもポイズンウルフになりかけているという最悪の事態を。
「っ!急いでギルドに連絡をしない……」
そしてそのことを悟った僕はこのことをギルドに伝えるためにこの場を後にしようとする。
「っぁ?」
しかし、その時何かが僕の背を押した。
一瞬思考が止まり、僕は押された勢いのままダイウルフ達の方向へと崩れ落ちて行く。
「今更怖気付いて逃げるとか、こいつほんとなんだよ」
その時その耳に蔑みのこもったギルド職員達の声が入った。
そしてその声に今更ながら、僕は自分の失態を悟る。
「ガァァァァア」
しかし、それはもう手遅れで……
次の瞬間、僕達の存在に気づいたポイズンウルフの雄叫びがその場に響いた……
「明らかにおかしい……」
けれども、その時の僕にはダイウルフをもうすぐで見つけられるという喜びはなかった。
進むにつれて分かってきたのだ。
そう、明らかにその痕跡がおかしいことに。
変色した草、そして変死した小さな魔獣達。
それらは普通ならば出来ることのない明らかな異常の印だった。
「怯えてるに違いない」
「ああ、所詮仮だ仮」
しかし、僕の後ろでそう話し合うギルド職員は全くその痕跡に気づいていなかった。
その時にはもう僕は悟っていた。
ギルド職員達はもうほとんど役に立たないことを。
今の彼らは僕を嘲笑うということだけに始終徹していて、今どれ程の自体が起きているのか、理解できていない。
……それも、僕が何度も警戒の声をあげてもなお、だ。
そしてそんな状況が続けば僕も分かり始めていた。
この状況を乗り越えるためには自分を信じて行動するしかないことを。
だからダイウルフの存在を確認し、そしてポイズンウルフがいた時には急いでギルドに情報を持ち帰る。
そう僕は決心する。
……しかし、この時僕は気づけていなかった。
ここまで明らかな痕跡を見たのならば、確かめることなくギルドに情報を伝えるべきだったことを。
だがその時、未だ僕の心に巣食っていた自信のなさが僕の行動を蝕んだのだ。
……そしてもう一つ、決して僕が犯してはならなかった失敗を犯していた。
今からの状況は一つの失敗で全てが終わりかねない。
そしてそんな状況に、状況を分かっていないギルド職員達を同行させてはいけなかったのだ。
……それが最悪の事態に繋がることを知らないまま、僕は進んで行く。
◇◆◇
それから僕は迷うことなくダイウルフのいると思われる方向へと進んで行った。
今まで見つけた痕跡で、ダイウルフの群れは決して遠く離れた場所にいないことを悟ったのだ。
けれども、そこからダイウルフの群れを見つけるまで、長い時間がかかった。
相手にポイズンウルフがいた場合のことを考え、慎重に進んで行ったのだ。
そしてその僕の只ならぬ様子に流石に気圧されたのか、ギルド職員達も騒ぎ立てることはなかった。
「いた……」
それからとうとうダイウルフの群れを見つけたのはそこから十数分は経った時だった。
今まで慎重に動く僕に付き合わされ、ほとほとうんざりした様子だったギルド職員達の顔に緊張が浮かぶ。
「待って」
「っ!」
けれども、僕は手を目の前に出し、飛び出そうとした彼らを制止した。
ここでもし相手がポイズンウルフであった場合、僕はその相手をせず逃げるべきなのだから。
「おい、なんだ?」
僕は自分の行動に対して、不服げにギルド職員達が文句を言うのを無視してダイウルフの群れを覗き込んだ。
絶対にバレることのないように慎重に。
そして5匹のダイウルフを僕は眺める。
「……僕の気にしすぎなのか?」
そしてそれから僕はそうぽつりと呟いた。
ポイズンウルフの特徴は、その片目が毒々しい紫に染まっていることだ。
そして確かめて見たが、このにいるダイウルフの中には目が変色している個体は存在しなかった。
それに、ポイズンウルフが被害を与えるのは人間や森だけではない。
同種族の魔獣にさえ、その毒は効果を及ぼす。
つまり、ポイズンウルフがこのにいるのならばあのダイウルフ達は少なくとも調子が悪そうに見えなければおかしいのだ。
けれども、そんな様子は一切見られない。
そしてここはDランク相当の魔獣しかおらず、こんな場所にダイウルフが他にもいるとは思えない。
そのことを確認した僕は、ポイズンウルフは自分の思い込みだったのだと、そう安堵の息を漏らしかけて……
「っ!」
ーーー その時、片目を真紫に染めた6匹目のダイウルフが他のダイウルフの後ろにいたことに気づいた。
それはダイウルフの中でも大柄な、歴戦の雰囲気をかもし出している個体だった。
ポイズンウルフであるとかを除いたとしても、注意すべきな、そんな個体。
そしてその個体の目は明らかにポイズンウルフの中でも滅多に見ない綺麗な紫で……
「嘘だろ……」
……そしてそれはその個体の持つ毒が酷く強力なことを示していた。
ポイズンウルフの毒は、突然変異をした後、過ごす年月の長さによって強くなり、その強さは目の紫色の鮮やかさとなって現れる。
つまり、そのポイズンウルフは明らかに強大な毒を持っていることをしめしている。
そして、問題はそれだけではなかった。
「……くそったれ!」
あれだけ強力な毒を有するポイズンウルフの側であんなにも元気な他のダイウルフ達。
その異様な光景はある最悪の事態を示していた。
ーーー そう、ポイズンウルフ以外の他のダイウルフもポイズンウルフになりかけているという最悪の事態を。
「っ!急いでギルドに連絡をしない……」
そしてそのことを悟った僕はこのことをギルドに伝えるためにこの場を後にしようとする。
「っぁ?」
しかし、その時何かが僕の背を押した。
一瞬思考が止まり、僕は押された勢いのままダイウルフ達の方向へと崩れ落ちて行く。
「今更怖気付いて逃げるとか、こいつほんとなんだよ」
その時その耳に蔑みのこもったギルド職員達の声が入った。
そしてその声に今更ながら、僕は自分の失態を悟る。
「ガァァァァア」
しかし、それはもう手遅れで……
次の瞬間、僕達の存在に気づいたポイズンウルフの雄叫びがその場に響いた……
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