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1.ギルド編
第25話 ギルド支部長
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「……帰りたい」
男性のギルド職員に連れられ、ギルドの一室に案内された僕。
その一室で待たされている間、僕は思わずそう本音を漏らしていた……
もちろんエイナの状態に関して、僕には非はないという、そのことを僕は確信している。
けれども話がそれだけで済むとは僕は考えていなかった。
その理由は僕を睨んでいた先程の男性ギルド職員。
エイナは僕個人としてはいきなり怒鳴ってきた人間としてかなり良いイメージを持っていない。
しかし彼女は外見だけで言えばかなり整っている上に、普段はかなり礼儀正しい。
そのことを考えれば異性のギルド職員に人気があってもおかしくない。
というか、あの時やってきたギルド職員が見せた反応を考えると絶対に人気がある。
そしてそうならば彼女をあっさりと叩きのめした僕に普通彼らはどんな感情を抱くか、考えるまでもない。
「はぁ……本当にめんどくさいことになった……」
僕の口から思わずそんな声が漏れる。
本当に出来ればもう、シュライトさんの家に帰ってしまいたい。
「お待たせしました」
「あ、はい。どうぞ」
そして、そんなことを僕が考えていたその時だった。
突然扉の外から響いた声、それに僕はようやくギルド職員が戻ってきたことに気づいて入室の許可を出す。
そしてとにかく何とか早めに解放されるように努めようと決意して顔を上げて……
「わざわざ申し訳ありません」
「えっ?」
……人の良さそうな老人の姿に僕は言葉を失った。
決してそう言われていた訳ではなかったのだが、僕は先程のギルド職員が僕の事情聴取をするものだと思い込んでいた。
何せ僕はBランクのギルド職員をも倒せる実力を持った人間だとそう思い込まれているはずなのだから。
けれども、目の前に立っている老人はおよそ戦闘が出来るとは考えにくいそんな痩せた身体つきをしていて、だから僕はどいうことかと思わず首をひねる。
「私はこのギルドの支部長をしているものです」
「はっ?」
しかし、次の瞬間その老人の言葉に僕は思わず絶句することになった。
……何でここにギルド職員ではなく、支部長が?
つまりこの人は実質この場所のトップなはずで……
「では、私に何があったのか詳しく教えてください」
「あ、はい……」
しかし、その僕の心の声はギルド支部長と名乗った老人に届くことはなかった……
そして僕は疑問を抱きつつも、その疑問を尋ねることができないまま、ギルド支部長に促され今までのことを話すこととなった……
◇◆◇
「……というわけです」
「そう、ですか………」
僕が全てを語り終えたあと、支部長の顔に浮かんでいたのは隠しきれない困惑だった。
何故そんな顔を浮かべるのか一瞬僕はその理由が分からず困惑する。
「……ギルド職員が冒険者から聞いたところならば、貴方は認定書が偽物であることに気づいて激昂し、エイナに襲いかかったということだったのですが……」
「はぁっ!?」
しかしその理由を聞かせれた時、僕は支部長の困惑の表情など比にならない驚愕の声を上げていた。
確かにそう聞かされていれば僕の話との相違点に首を傾げたくなるのもわかる。
幾ら何でも話が捻じ曲げられている。
確かに僕の方が最初に腰の剣に手をかけたが、それはまだ警告だ。
その時点で相手に非がある場合なので、非難される覚えはない。
しかも最終的に僕へと最初に攻撃を仕掛けて来たのはエイナだった。
それも未だ僕が剣を抜いていない状態で。
そしてそのことは支部長も理解している。
だからこそ、どっちを信じれば良いのか困惑しているのが伝わってくる。
「これが証拠です!」
なので僕はギルド職員にこの部屋に連れて来られる前にこっそりと取り返していた認定書を取り出した。
エイナに乱雑に握りしめされたせいでその認定書はかなりぼろぼろになっていて、一瞬僕の胸に怒りが湧き上がってくる。
けれども今はそれどころではないと、その感情を抑えて僕は支部長にその紙を渡した。
「……確かに、これは本物ですね。少しこの場に証言したという冒険者を連れて来させていただきます」
そしてその認定書を手にした支部長は悩ましげな顔をして、その場を後にした。
それから直ぐに戻ってきた支部長は申し訳なさそうな顔をしながら、こちらの不手際で冒険者の証言が間違えて伝わって来ていたと謝罪した。
本当の冒険者の証言は決して僕の認定書が偽物だったなんて言っておらず、さらに先に襲いかかったのもエイナだと証言していたらしい。
ー 誰がこんな捻じ曲がった風に報告したんだよ……
その話を聞いた僕は思わずそう考えてしまったが、しかし支部長の僕をきちんとCランク冒険者と認め、そして罰金でも何でも支払うという言葉に少し溜飲を下げる。
何せその慰謝料というのが、かなり莫大だったのだ。
まぁ、ギルドとしては自身の職員が不手際を起こし、逆上して冒険者を殺しかけた何てことに対する口止めを頼む意味も込めてこの金額を渡しているのだろう。
……まぁ、実際にはエイナは殺そうとまではしていなかったが。最後以外。
しかし、最終的に僕はその慰謝料を断ることにした。
その代わりに色々とギルドの中であることの便宜を取り払ってもらうことで口封じすることを誓い、そしてその部屋から解放された。
男性のギルド職員に連れられ、ギルドの一室に案内された僕。
その一室で待たされている間、僕は思わずそう本音を漏らしていた……
もちろんエイナの状態に関して、僕には非はないという、そのことを僕は確信している。
けれども話がそれだけで済むとは僕は考えていなかった。
その理由は僕を睨んでいた先程の男性ギルド職員。
エイナは僕個人としてはいきなり怒鳴ってきた人間としてかなり良いイメージを持っていない。
しかし彼女は外見だけで言えばかなり整っている上に、普段はかなり礼儀正しい。
そのことを考えれば異性のギルド職員に人気があってもおかしくない。
というか、あの時やってきたギルド職員が見せた反応を考えると絶対に人気がある。
そしてそうならば彼女をあっさりと叩きのめした僕に普通彼らはどんな感情を抱くか、考えるまでもない。
「はぁ……本当にめんどくさいことになった……」
僕の口から思わずそんな声が漏れる。
本当に出来ればもう、シュライトさんの家に帰ってしまいたい。
「お待たせしました」
「あ、はい。どうぞ」
そして、そんなことを僕が考えていたその時だった。
突然扉の外から響いた声、それに僕はようやくギルド職員が戻ってきたことに気づいて入室の許可を出す。
そしてとにかく何とか早めに解放されるように努めようと決意して顔を上げて……
「わざわざ申し訳ありません」
「えっ?」
……人の良さそうな老人の姿に僕は言葉を失った。
決してそう言われていた訳ではなかったのだが、僕は先程のギルド職員が僕の事情聴取をするものだと思い込んでいた。
何せ僕はBランクのギルド職員をも倒せる実力を持った人間だとそう思い込まれているはずなのだから。
けれども、目の前に立っている老人はおよそ戦闘が出来るとは考えにくいそんな痩せた身体つきをしていて、だから僕はどいうことかと思わず首をひねる。
「私はこのギルドの支部長をしているものです」
「はっ?」
しかし、次の瞬間その老人の言葉に僕は思わず絶句することになった。
……何でここにギルド職員ではなく、支部長が?
つまりこの人は実質この場所のトップなはずで……
「では、私に何があったのか詳しく教えてください」
「あ、はい……」
しかし、その僕の心の声はギルド支部長と名乗った老人に届くことはなかった……
そして僕は疑問を抱きつつも、その疑問を尋ねることができないまま、ギルド支部長に促され今までのことを話すこととなった……
◇◆◇
「……というわけです」
「そう、ですか………」
僕が全てを語り終えたあと、支部長の顔に浮かんでいたのは隠しきれない困惑だった。
何故そんな顔を浮かべるのか一瞬僕はその理由が分からず困惑する。
「……ギルド職員が冒険者から聞いたところならば、貴方は認定書が偽物であることに気づいて激昂し、エイナに襲いかかったということだったのですが……」
「はぁっ!?」
しかしその理由を聞かせれた時、僕は支部長の困惑の表情など比にならない驚愕の声を上げていた。
確かにそう聞かされていれば僕の話との相違点に首を傾げたくなるのもわかる。
幾ら何でも話が捻じ曲げられている。
確かに僕の方が最初に腰の剣に手をかけたが、それはまだ警告だ。
その時点で相手に非がある場合なので、非難される覚えはない。
しかも最終的に僕へと最初に攻撃を仕掛けて来たのはエイナだった。
それも未だ僕が剣を抜いていない状態で。
そしてそのことは支部長も理解している。
だからこそ、どっちを信じれば良いのか困惑しているのが伝わってくる。
「これが証拠です!」
なので僕はギルド職員にこの部屋に連れて来られる前にこっそりと取り返していた認定書を取り出した。
エイナに乱雑に握りしめされたせいでその認定書はかなりぼろぼろになっていて、一瞬僕の胸に怒りが湧き上がってくる。
けれども今はそれどころではないと、その感情を抑えて僕は支部長にその紙を渡した。
「……確かに、これは本物ですね。少しこの場に証言したという冒険者を連れて来させていただきます」
そしてその認定書を手にした支部長は悩ましげな顔をして、その場を後にした。
それから直ぐに戻ってきた支部長は申し訳なさそうな顔をしながら、こちらの不手際で冒険者の証言が間違えて伝わって来ていたと謝罪した。
本当の冒険者の証言は決して僕の認定書が偽物だったなんて言っておらず、さらに先に襲いかかったのもエイナだと証言していたらしい。
ー 誰がこんな捻じ曲がった風に報告したんだよ……
その話を聞いた僕は思わずそう考えてしまったが、しかし支部長の僕をきちんとCランク冒険者と認め、そして罰金でも何でも支払うという言葉に少し溜飲を下げる。
何せその慰謝料というのが、かなり莫大だったのだ。
まぁ、ギルドとしては自身の職員が不手際を起こし、逆上して冒険者を殺しかけた何てことに対する口止めを頼む意味も込めてこの金額を渡しているのだろう。
……まぁ、実際にはエイナは殺そうとまではしていなかったが。最後以外。
しかし、最終的に僕はその慰謝料を断ることにした。
その代わりに色々とギルドの中であることの便宜を取り払ってもらうことで口封じすることを誓い、そしてその部屋から解放された。
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