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1.ギルド編
第15話 最終試練II
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僕とシュライトさんの模擬戦はもう既に始まってから30分以上経っていた。
その戦闘中、僕の体力は魔力強化のお陰で戦えないほど消耗はしていなかった。
「くそ……」
しかし、このまま勝負を続ければシュライトさんには絶対に勝てないことを僕は悟っていた。
当たり前だろう。
何せ本調子の能力を使った状態でも何とか勝てるか程度の相手と、能力なしの上、体調が最悪な時に戦っているのだ。
本来ならばここまで互角に戦えているのがおかしい。
「いや、気にしなくていい。翔、君は充分に強い」
そしてそのことを分かっているのか、シュライトさんの言葉はまるで自分の勝利を確信したのかのような声だった。
「っ!」
僕はそのシュライトさんの態度に激情したかのようにシュライトさんを睨みつける。
「僕は今日、貴方を倒してこの模擬戦を最終試練にしてやる!」
そしてそう感情的に叫んでみせる。
けれども、僕の内心は酷く冷静だった。
決してシュライトさんの態度が苛立たしく無いわけではない。
いや、正直言えばかなりイラッと来た。
けれども僕はその苛立ちを抑え、相手の油断を誘う、その為だけに敢えてプライドを傷つけられたように振る舞ったのだ。
そう、全ては今の状態の僕が勝てる唯一の状況に持ち込むその為に。
「うぉぉおお!」
僕はシュライトさんへの積年の恨み、それを権を握る手に全て込めて足を踏み出した……
◇◆◇
「……諦めたか」
飛びかかった僕の姿、それを目にしてシュライトさんはそう呟いた。
そして実際にそう言われてもおかしくないほど僕の攻撃はお粗末なものだった。
ただ力任せに突撃しただけ。
そんなものは湿地の魔獣にも通じないようなそんな攻撃。
そしてその僕の攻撃に、失望を目に浮かべながらシュライトさんは木剣を振り上げた。
「はぁぁぁぁぁあ!」
ーーー それが僕の狙いだとは気づかずに。
「はっ!」
突然機敏に動くようになった僕にシュライトさんが目を見開くのがわかる。
驚くのは無理はないだろう。
何せ今の僕は動きの精度だけではなく、身体能力さえも先程の比にならない程のものとなっているのだから。
そして僕はシュライトさんの顔に満足感のような感情を抱く。
そう、その顔が見たかったのだ。
急に調子が悪くなった僕、だがその調子の悪さは魔力には関係が無かった。
だから僕はこのままでは勝てないそう悟った時に一週間かけた罠をはった。
それは魔力を扱うようになり、どんどんと増えて行く保有魔力量を、地獄の訓練の隙間で魔物を倒してレベルアップする事でさらに増やし続けた事。
そして今まで隠し通していたその魔力を僕は魔力強化に使ったのだ。
そう、全てはまともにやっては勝てないシュライトさんの不意をついて勝つために。
飛躍的に自分の身体能力が上がり、僕は自分の身体に羽が生えたかのような軽さを感じる。
……だが、この状態が長く続かないことを本能的に悟っていた。
ぼくは今までシュライトさんに魔力の増加を隠していた。
つまり、僕は殆どこの強大な魔力を扱う練習をしていないのだ。
そしてその結果、身体から溢れんばかりの魔力を僕は掌握することができず、どんどん身体は限界へと向かって行く。
何せ魔力とは生命の力の一部なのだ。
当たり前だが、使い過ぎれば命に関わるし、使いこなせなければ身体が壊れる。
そして現段階で使えるのはこの一撃だけなのだ。
「だったら、この一撃で!」
僕は唇を噛み締めて、魔力強化で僕の制御下を離れ、暴れだしそうになる魔力を技を繰り出す……
「はぁ……こんな仕掛けを用意しているとは……」
「っ!」
……その直前に勝負は決まった。
喉元に突きつけられたシュライトさんの木剣、それに僕は唇を噛み締めて、それから声を絞り出した。
「負け、ました……」
恐らく、これから僕は再度シュライトさんの修行をこなすことになるだろう。
最初からそれが条件でこの模擬戦は始まっていて、シュライトさんがその言葉を覆すとは思えない。
「いや、翔。君の勝ちだ」
「えっ?」
……だからこそ、僕はシュライトさんの次の言葉に言葉を失うことになった。
その戦闘中、僕の体力は魔力強化のお陰で戦えないほど消耗はしていなかった。
「くそ……」
しかし、このまま勝負を続ければシュライトさんには絶対に勝てないことを僕は悟っていた。
当たり前だろう。
何せ本調子の能力を使った状態でも何とか勝てるか程度の相手と、能力なしの上、体調が最悪な時に戦っているのだ。
本来ならばここまで互角に戦えているのがおかしい。
「いや、気にしなくていい。翔、君は充分に強い」
そしてそのことを分かっているのか、シュライトさんの言葉はまるで自分の勝利を確信したのかのような声だった。
「っ!」
僕はそのシュライトさんの態度に激情したかのようにシュライトさんを睨みつける。
「僕は今日、貴方を倒してこの模擬戦を最終試練にしてやる!」
そしてそう感情的に叫んでみせる。
けれども、僕の内心は酷く冷静だった。
決してシュライトさんの態度が苛立たしく無いわけではない。
いや、正直言えばかなりイラッと来た。
けれども僕はその苛立ちを抑え、相手の油断を誘う、その為だけに敢えてプライドを傷つけられたように振る舞ったのだ。
そう、全ては今の状態の僕が勝てる唯一の状況に持ち込むその為に。
「うぉぉおお!」
僕はシュライトさんへの積年の恨み、それを権を握る手に全て込めて足を踏み出した……
◇◆◇
「……諦めたか」
飛びかかった僕の姿、それを目にしてシュライトさんはそう呟いた。
そして実際にそう言われてもおかしくないほど僕の攻撃はお粗末なものだった。
ただ力任せに突撃しただけ。
そんなものは湿地の魔獣にも通じないようなそんな攻撃。
そしてその僕の攻撃に、失望を目に浮かべながらシュライトさんは木剣を振り上げた。
「はぁぁぁぁぁあ!」
ーーー それが僕の狙いだとは気づかずに。
「はっ!」
突然機敏に動くようになった僕にシュライトさんが目を見開くのがわかる。
驚くのは無理はないだろう。
何せ今の僕は動きの精度だけではなく、身体能力さえも先程の比にならない程のものとなっているのだから。
そして僕はシュライトさんの顔に満足感のような感情を抱く。
そう、その顔が見たかったのだ。
急に調子が悪くなった僕、だがその調子の悪さは魔力には関係が無かった。
だから僕はこのままでは勝てないそう悟った時に一週間かけた罠をはった。
それは魔力を扱うようになり、どんどんと増えて行く保有魔力量を、地獄の訓練の隙間で魔物を倒してレベルアップする事でさらに増やし続けた事。
そして今まで隠し通していたその魔力を僕は魔力強化に使ったのだ。
そう、全てはまともにやっては勝てないシュライトさんの不意をついて勝つために。
飛躍的に自分の身体能力が上がり、僕は自分の身体に羽が生えたかのような軽さを感じる。
……だが、この状態が長く続かないことを本能的に悟っていた。
ぼくは今までシュライトさんに魔力の増加を隠していた。
つまり、僕は殆どこの強大な魔力を扱う練習をしていないのだ。
そしてその結果、身体から溢れんばかりの魔力を僕は掌握することができず、どんどん身体は限界へと向かって行く。
何せ魔力とは生命の力の一部なのだ。
当たり前だが、使い過ぎれば命に関わるし、使いこなせなければ身体が壊れる。
そして現段階で使えるのはこの一撃だけなのだ。
「だったら、この一撃で!」
僕は唇を噛み締めて、魔力強化で僕の制御下を離れ、暴れだしそうになる魔力を技を繰り出す……
「はぁ……こんな仕掛けを用意しているとは……」
「っ!」
……その直前に勝負は決まった。
喉元に突きつけられたシュライトさんの木剣、それに僕は唇を噛み締めて、それから声を絞り出した。
「負け、ました……」
恐らく、これから僕は再度シュライトさんの修行をこなすことになるだろう。
最初からそれが条件でこの模擬戦は始まっていて、シュライトさんがその言葉を覆すとは思えない。
「いや、翔。君の勝ちだ」
「えっ?」
……だからこそ、僕はシュライトさんの次の言葉に言葉を失うことになった。
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