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1.ギルド編
第2話 決定
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手に光が宿ったまま走り出した僕は、身体能力を強化した状態だったお陰か、衛兵が現れるその前に何とかその場を立ち去ることができた。
「危なかった……」
そして僕は、何とか城の人間に見つからずに逃げられたことに安堵の息を漏らした。
見つかれば本当にどんなことになっていたことか……
正直、壁を易々と壊せるような能力を得た今、僕にはこの国の国王に利用されるつもりはなかった。
丸腰でこの場所に追い出されたと思っていた状況ならともかく、この力があれば恐らくある程度稼ぐ術を手に入れることができるはずなのだから。
それに今は親切に衛兵が落としていってくれた資金がある。
「かなり、中身が入っているな……」
そして僕は手に握りしめた財布の中身の動きに、口元を緩める。
先程はちらっと見ただけで、狭い口からはどれだけ詰まっているのか分かっていなかったが、握りしめている今はその重さがダイレクトに伝わってくる。
だが、財布の中身に緩みきっていた僕の顔は、走っているうちに真剣なものへと変わっていた。
「……それにしてもこの光は明らかに異常だよね」
その原因、それは僕の手に灯っている光だった。
何故なら、今僕は馬よりも早いスピードで走っている。
偶然城から飛び出した僕は人通りの少ない道を走っていて人とは殆ど合わない。
けれども先程、馬に乗った人間を易々と追い越せたのだから。
それは明らかに異常だった。
決して馬に乗った人間はそこまで急いでいる様子ではなかったけれども、それでもなかなかの速度で走っていた。
なのにそれを僕は抜いて、そんな状況でも未だ疲れを感じていないのだから。
しかも僕は地球では殆ど運動をしていない、そんな人間なのだ。
そのことを考えれば話は異常、なんてどころではない。
しかも、僕の身体に起きた変化はそれだけではなかった。
「……痛く、ない?」
そう、衛兵に乱暴を働かれて出来ていたはずの身体の傷、その痛みが全て和らいでいたのだ。
全く痛みが無くなった訳ではないことから、恐らく傷が完璧に無くなった訳ではなく、自然治癒力が上がっただけだろう。
けれども、痛みで動けなかった状況からあの少しの間でここまで走れるようになったというのは明らかに異常だった。
そう、この力が勇者の特殊能力の一つ光の剣であってもおかしくないと、そう僕が思える程度には。
「……でも、僕には聖剣を抜けなかったはず」
そしてだからこそ、僕は今の状況が分からなかった。
本当に自分が勇者の力を得たのか、それとも別の能力なのか、そのことを判断するための材料を僕は殆ど持っていない。
「そういえば!」
だが、その時僕の頭に再度勇者について教えられた話が思い浮かんできた。
それは聖剣と共に勇者の印とされる特殊能力で、それならば簡単に確かめられるのではないかと、そう僕は気づく。
「……よし、だったらこれからどうするか行き先は決まった」
そして王都の出口が見えてくる中、僕はあることを決めた。
それは、これからどんな場所に行くかというその行き先。
王都にいればもしかすれば働き口が見つかるかもしれない。
けれども、僕の能力がばれて干渉される可能性もある。
それは決して僕の望むことではない。
それに、この能力は戦闘などその方面に生きる力だ。
だとすれば、何も分からずこんな場所にいるよりも、決して戦闘が好きな訳ではないが、行き行くために割り切って傭兵などの存在にでもなろう。
と考え、最初から僕は王都を出ることは決めていた。
そしてその先を僕は今決めたのだ。
「魔獣の出る所へ行こう」
その決意とともに、僕は能力で強化された身体能力を使って王都から抜け出し、そしてその場を後にした……
「危なかった……」
そして僕は、何とか城の人間に見つからずに逃げられたことに安堵の息を漏らした。
見つかれば本当にどんなことになっていたことか……
正直、壁を易々と壊せるような能力を得た今、僕にはこの国の国王に利用されるつもりはなかった。
丸腰でこの場所に追い出されたと思っていた状況ならともかく、この力があれば恐らくある程度稼ぐ術を手に入れることができるはずなのだから。
それに今は親切に衛兵が落としていってくれた資金がある。
「かなり、中身が入っているな……」
そして僕は手に握りしめた財布の中身の動きに、口元を緩める。
先程はちらっと見ただけで、狭い口からはどれだけ詰まっているのか分かっていなかったが、握りしめている今はその重さがダイレクトに伝わってくる。
だが、財布の中身に緩みきっていた僕の顔は、走っているうちに真剣なものへと変わっていた。
「……それにしてもこの光は明らかに異常だよね」
その原因、それは僕の手に灯っている光だった。
何故なら、今僕は馬よりも早いスピードで走っている。
偶然城から飛び出した僕は人通りの少ない道を走っていて人とは殆ど合わない。
けれども先程、馬に乗った人間を易々と追い越せたのだから。
それは明らかに異常だった。
決して馬に乗った人間はそこまで急いでいる様子ではなかったけれども、それでもなかなかの速度で走っていた。
なのにそれを僕は抜いて、そんな状況でも未だ疲れを感じていないのだから。
しかも僕は地球では殆ど運動をしていない、そんな人間なのだ。
そのことを考えれば話は異常、なんてどころではない。
しかも、僕の身体に起きた変化はそれだけではなかった。
「……痛く、ない?」
そう、衛兵に乱暴を働かれて出来ていたはずの身体の傷、その痛みが全て和らいでいたのだ。
全く痛みが無くなった訳ではないことから、恐らく傷が完璧に無くなった訳ではなく、自然治癒力が上がっただけだろう。
けれども、痛みで動けなかった状況からあの少しの間でここまで走れるようになったというのは明らかに異常だった。
そう、この力が勇者の特殊能力の一つ光の剣であってもおかしくないと、そう僕が思える程度には。
「……でも、僕には聖剣を抜けなかったはず」
そしてだからこそ、僕は今の状況が分からなかった。
本当に自分が勇者の力を得たのか、それとも別の能力なのか、そのことを判断するための材料を僕は殆ど持っていない。
「そういえば!」
だが、その時僕の頭に再度勇者について教えられた話が思い浮かんできた。
それは聖剣と共に勇者の印とされる特殊能力で、それならば簡単に確かめられるのではないかと、そう僕は気づく。
「……よし、だったらこれからどうするか行き先は決まった」
そして王都の出口が見えてくる中、僕はあることを決めた。
それは、これからどんな場所に行くかというその行き先。
王都にいればもしかすれば働き口が見つかるかもしれない。
けれども、僕の能力がばれて干渉される可能性もある。
それは決して僕の望むことではない。
それに、この能力は戦闘などその方面に生きる力だ。
だとすれば、何も分からずこんな場所にいるよりも、決して戦闘が好きな訳ではないが、行き行くために割り切って傭兵などの存在にでもなろう。
と考え、最初から僕は王都を出ることは決めていた。
そしてその先を僕は今決めたのだ。
「魔獣の出る所へ行こう」
その決意とともに、僕は能力で強化された身体能力を使って王都から抜け出し、そしてその場を後にした……
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