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第21話
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「聖マリフィナには手を出さないという盟約を忘れたのか!」
マレリアに付き従う聖獣の姿に激情し、怒りに突き動かされるままサーダンが口にした盟約という言葉。
それは決して嘘ではなかった。
聖マリフィナ王国は聖獣と不可侵の盟約を結ぶことで建国できたというのはまぎれもない史実なのだから。
「ーーーー!」
「ひぃっ!」
……けれども、その盟約の言葉は聖獣を激怒させただけだった。
自身の怒りに触れ、今までの怒りを忘れ震えるサーダンを聖獣は射殺さんばかりの目で睨みつけ、そして次の瞬間その身体を光が包み込んだ。
「……ほぅ、恥知らずにも貴様らが我に盟約を問うか」
「っ!?」
次の瞬間、聖獣のいた場所に立っていたのは一人の男だった。
マレリアにも劣りはしない、美貌を有する男。
……けれどそのサーダンを睨みつける目には怒りの炎が浮かんでいた。
「盟約を一方的に破棄し、我の自由を奪った貴様らが今になって盟約をどうこう言えるとでも思っているのか!」
次の瞬間、その聖獣の言葉に広場全体が静まり返ることとなった。
◇◆◇
ー 不味い不味い不味い!
聖獣の言葉で静まり返った広場の中、マーゼブルは酷い焦燥を覚えていた。
聖獣に対する封印魔術、それは王族達と一部の貴族の独断で他の貴族達には知らされていない。
だが、今回聖獣自身の発言で王族達のその行動が露わになることとなった。
つまり、このままでは自分が責任を取って宰相をやめさせられる可能性がひどく高いのだ。
そしてそのことを理解した瞬間、マーゼブルは聖獣を怒鳴りつけていた。
聖獣の言葉を有耶無耶にして、自身の悪行を闇に葬るために。
「ぶ、無礼であるぞ!所詮獣如きが……」
……けれどもその時マーゼブルは理解していなかった。
今、サーダンへと向いている聖獣の意識を自分に向けてしまうというのがどういうことかを。
そしてマーゼブルはその意味に気付かぬまま、マーゼブルの人生最大の失態を犯すこととなった。
「そういえばお前も我を封印していた人間の一人か。
ーーーそうだな。こいつは龍の山にでも捨ててきてくれ」
「………え?」
聖獣がマーゼブルを一瞥して告げた言葉、それをマーゼブルは理解することは出来なかった。
その前に頭部に衝撃が走り、視界が暗転したのだ。
………そしてマーゼブルは聖マリフィナ王国から姿を消した。
彼がその後どうなったのか、それを知る者はいない。
ただ、他国の古くから伝わる御伽噺に出てくる最悪の邪龍が住む場所、それこそが龍の山と呼ばれていた……
マレリアに付き従う聖獣の姿に激情し、怒りに突き動かされるままサーダンが口にした盟約という言葉。
それは決して嘘ではなかった。
聖マリフィナ王国は聖獣と不可侵の盟約を結ぶことで建国できたというのはまぎれもない史実なのだから。
「ーーーー!」
「ひぃっ!」
……けれども、その盟約の言葉は聖獣を激怒させただけだった。
自身の怒りに触れ、今までの怒りを忘れ震えるサーダンを聖獣は射殺さんばかりの目で睨みつけ、そして次の瞬間その身体を光が包み込んだ。
「……ほぅ、恥知らずにも貴様らが我に盟約を問うか」
「っ!?」
次の瞬間、聖獣のいた場所に立っていたのは一人の男だった。
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……けれどそのサーダンを睨みつける目には怒りの炎が浮かんでいた。
「盟約を一方的に破棄し、我の自由を奪った貴様らが今になって盟約をどうこう言えるとでも思っているのか!」
次の瞬間、その聖獣の言葉に広場全体が静まり返ることとなった。
◇◆◇
ー 不味い不味い不味い!
聖獣の言葉で静まり返った広場の中、マーゼブルは酷い焦燥を覚えていた。
聖獣に対する封印魔術、それは王族達と一部の貴族の独断で他の貴族達には知らされていない。
だが、今回聖獣自身の発言で王族達のその行動が露わになることとなった。
つまり、このままでは自分が責任を取って宰相をやめさせられる可能性がひどく高いのだ。
そしてそのことを理解した瞬間、マーゼブルは聖獣を怒鳴りつけていた。
聖獣の言葉を有耶無耶にして、自身の悪行を闇に葬るために。
「ぶ、無礼であるぞ!所詮獣如きが……」
……けれどもその時マーゼブルは理解していなかった。
今、サーダンへと向いている聖獣の意識を自分に向けてしまうというのがどういうことかを。
そしてマーゼブルはその意味に気付かぬまま、マーゼブルの人生最大の失態を犯すこととなった。
「そういえばお前も我を封印していた人間の一人か。
ーーーそうだな。こいつは龍の山にでも捨ててきてくれ」
「………え?」
聖獣がマーゼブルを一瞥して告げた言葉、それをマーゼブルは理解することは出来なかった。
その前に頭部に衝撃が走り、視界が暗転したのだ。
………そしてマーゼブルは聖マリフィナ王国から姿を消した。
彼がその後どうなったのか、それを知る者はいない。
ただ、他国の古くから伝わる御伽噺に出てくる最悪の邪龍が住む場所、それこそが龍の山と呼ばれていた……
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