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第11話

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 「ふざけるな!女の分際で!」

 マレリアの思わず漏らした言葉を聞いた瞬間、マーゼブルは怒鳴り声を上げていた。
 その時マーゼブルは目の前にいる女性がどんな地位にいる人間であるかさえ頭になかった。

 「ふざけるな!ふざけるな!何故私が馬鹿なのだ!私は宰相だぞ!」

 ただ、幼少の頃から根付いている男尊女卑の思想に背を押されるままマーゼブルはマレリアへと怒鳴りつける。
 ……その言葉が、さらにマーゼブルの愚かさを示していることに気づくこともなく。

 「はぁ、はぁ、」

 そしてマーゼブルは激情のままにマレリアへと息が切れるまで怒鳴り声を浴びせ続けた。

 「はぁ……」

 「ーーーっ!」

 ……けれども、そのマーゼブルの反応に対するマレリアの対応は心底どうでも良さそうな嘆息だった。
 そしてその瞬間、マーゼブルは目の前が真っ赤になるような錯覚に陥る。
 今まで、名家の生まれであったマーゼブルは何時も特別待遇されていた。
 だからこそ、マレリアのどうでも良さげなその態度がどうしてもマーゼブルには許すことができなかったのだ。

 「この、」

 マーゼブルはさらなる激情に促されるまま口を開き、再度マレリアを怒鳴り付けようとする。

 「馬鹿おん……ぅぇっ、げほ、ゴホッゴホッ、ゥゲェ……」

 ……そして盛大にむせた。

 「うほっ、ぅえほっ、ゴホッゴホッ」

 あまりにもどうしようもないマーゼブルの態度に何ともいえない空気が広場に広がる。

 「ぷっ、ふふ」

 けれども次の瞬間、何者かが笑いを漏らした瞬間その笑いは広場全体へと伝播し広場は笑いに包まれることとなった。

 「っ!」

 ……その笑いの中心にあるマーゼブルは屈辱のあまり顔をさらに真っ赤にしていた。
 最初から敵だと思っていたマレリアだけでなく、味方だと思っていた聖マリフィナ王国の貴族にも笑われて、マーゼブルは今までになく激昂していた。

 「笑うな!この馬鹿どもが!私を誰だと思っている!」

 次の瞬間、マーゼブルは聖マリフィナ王国の貴族とマレリアに向かって大声で叫んでいた。
 そしてそのマーゼブルの怒りに触れ、広場の笑いが止まる。
 けれども、マーゼブルの怒りがそれで治ることはなかった。
 マーゼブルは怒りで満ちた目で辺りを見回しながらさらに口を動かす。

 「私を誰だと思っている!代々聖マリフィナ王国の宰相を輩出してきた名家の中の名家である……うっ!」

 けれども、次の瞬間身体に走った激痛にマーゼブルの怒涛の口上は中断された。
 少しして、息が出来なくなるほどの激痛にようやくマーゼブルは自分に何が起きたのか分かる。

 ……そう、自分の股間が何者かによって蹴り上げられたことを。

 「くどくど煩い」

 酷くどうでも良さそうなマーサリンの言葉に、マーゼブルは意識をあっさりと手放すのだった……
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