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捨てられた日 IV
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ルースは私を助けようと必死に暴れてくれていた。
だがそれでも、たった1人で助けられるはずもなく、あっさりと引き離されて。
私は魔境へと捨てられることになった。
魔境、そこは魔物が存在する場所。
そしてそんなところに捨てられたということは、本当に王子達は最初から私を助ける気など無かったことを私は悟る。
それは今まで散々私を打ちのめしてきた事実。
「っ、まだ、死ぬもんか!」
ーーー だけど、今の私にはそんなことどうでも良かった。
頭に浮かぶのは最後まで、それこそ私よりもぼろぼろになりながら、それでも必死に私を助けようとしてくれたルースの姿。
だからその時に私は決めたのだ。
ルースが助けようとしてくれたこの命を決して無駄にはしないと。
「ガルル!」
だが、そんな私の思いとは裏腹に身体はのろのろとしか動いてくれない。
それに魔物達が、私の傷から溢れ出ている血の匂いを嗅いで集まり始めて……
「あら、何かと思えばこんな所に人が来ていたのね」
「キャンキャン!」
「きゃっ!」
しかし突然、空中から綺麗な声がして次の瞬間魔物へと竜巻が襲い掛かった。
いきなりの超常的な光景に身がすくみ、私は思わず頭を抑えてその場に座り込んでしまう。
「早くここから去りなさい」
「えっ?」
だが、次に私にかけられたのは竜巻でもなく、冷たい、だけど何処か優しさの篭ったそんな声だった。
そんな声に私は思わず顔を上げて……
「っ!」
そして、目の前に立っている絶世の美女を目にして絶句した。
目の前の女性が何者なのか、私には分からない。
だが先程魔物を追い払った力や、こんな場所にいることを考えれば明らかに普通の人間では無い。
「魔境の、魔女?」
そしてそう考えた私の口は自然とそんな言葉を漏らしていた。
魔境の魔女、それは王国で恐れられている罪人の名前。
気に入らぬ王族を殺し、そして魔境に逃げっていった悪女。
「………ええ、そうよ」
そしてその名前を告げられた女性、魔女は何処か寂しげで、諦めたような表情で笑った。
「ほら、あんたも早くここから……」
「きた!」
「はっ?」
だが私はそんな魔女の表情などどうでも良かった。
ーーー なぜなら、またルースに会えるかもしれないそんな手段を得る機会が向こうからやってきたことに気づいたのだから。
突然叫び始めた私に魔女が唖然とした表情で私を見ていることがわかる。
だがそんなこと、どうでも良かった。
「えっ?な、なに!?」
私は混乱している魔女にしがみ付き、そして叫んだ。
「弟子にして下さい!」
「はぁ!?」
それは、あまりにも安直な考えだった。
魔女の弟子になって力を身につければルースとまた会うのも簡単になるのでは無いかという。
王族を魔女が殺した?
いや、王国の王族だし、屑だし。
そんなことよりもルースに会えるかどうかの方が私は大切だったのだ。
「えっ?そ、その、あの、わ、私なんかの弟子に!?」
「そうです!」
私は混乱しているのか、あわあわと思いっきり動揺している魔女に向かって大きく頷いてみせる。
すると、魔女は顔を真っ赤にして……
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!」
「はい、師匠!」
そして、その日私は魔女の弟子となった。
だが、その時の私は知らない。
この選択が後に、竜殺しの英雄と称えられる未来に繋がっていることを……
そして後にこの日のことを私は、人生最高の日だったと称することになる。
最高の王子様を見つけ、一番の親友を見つけることができたそんな奇跡のような一日だったと……
◇◆◇
お知らせ
今回は短編として終わらせて頂きますが、また長編を書かせていただく予定です!よろしくお願いします!
だがそれでも、たった1人で助けられるはずもなく、あっさりと引き離されて。
私は魔境へと捨てられることになった。
魔境、そこは魔物が存在する場所。
そしてそんなところに捨てられたということは、本当に王子達は最初から私を助ける気など無かったことを私は悟る。
それは今まで散々私を打ちのめしてきた事実。
「っ、まだ、死ぬもんか!」
ーーー だけど、今の私にはそんなことどうでも良かった。
頭に浮かぶのは最後まで、それこそ私よりもぼろぼろになりながら、それでも必死に私を助けようとしてくれたルースの姿。
だからその時に私は決めたのだ。
ルースが助けようとしてくれたこの命を決して無駄にはしないと。
「ガルル!」
だが、そんな私の思いとは裏腹に身体はのろのろとしか動いてくれない。
それに魔物達が、私の傷から溢れ出ている血の匂いを嗅いで集まり始めて……
「あら、何かと思えばこんな所に人が来ていたのね」
「キャンキャン!」
「きゃっ!」
しかし突然、空中から綺麗な声がして次の瞬間魔物へと竜巻が襲い掛かった。
いきなりの超常的な光景に身がすくみ、私は思わず頭を抑えてその場に座り込んでしまう。
「早くここから去りなさい」
「えっ?」
だが、次に私にかけられたのは竜巻でもなく、冷たい、だけど何処か優しさの篭ったそんな声だった。
そんな声に私は思わず顔を上げて……
「っ!」
そして、目の前に立っている絶世の美女を目にして絶句した。
目の前の女性が何者なのか、私には分からない。
だが先程魔物を追い払った力や、こんな場所にいることを考えれば明らかに普通の人間では無い。
「魔境の、魔女?」
そしてそう考えた私の口は自然とそんな言葉を漏らしていた。
魔境の魔女、それは王国で恐れられている罪人の名前。
気に入らぬ王族を殺し、そして魔境に逃げっていった悪女。
「………ええ、そうよ」
そしてその名前を告げられた女性、魔女は何処か寂しげで、諦めたような表情で笑った。
「ほら、あんたも早くここから……」
「きた!」
「はっ?」
だが私はそんな魔女の表情などどうでも良かった。
ーーー なぜなら、またルースに会えるかもしれないそんな手段を得る機会が向こうからやってきたことに気づいたのだから。
突然叫び始めた私に魔女が唖然とした表情で私を見ていることがわかる。
だがそんなこと、どうでも良かった。
「えっ?な、なに!?」
私は混乱している魔女にしがみ付き、そして叫んだ。
「弟子にして下さい!」
「はぁ!?」
それは、あまりにも安直な考えだった。
魔女の弟子になって力を身につければルースとまた会うのも簡単になるのでは無いかという。
王族を魔女が殺した?
いや、王国の王族だし、屑だし。
そんなことよりもルースに会えるかどうかの方が私は大切だったのだ。
「えっ?そ、その、あの、わ、私なんかの弟子に!?」
「そうです!」
私は混乱しているのか、あわあわと思いっきり動揺している魔女に向かって大きく頷いてみせる。
すると、魔女は顔を真っ赤にして……
「ふ、不束者ですが、よろしくお願いします!」
「はい、師匠!」
そして、その日私は魔女の弟子となった。
だが、その時の私は知らない。
この選択が後に、竜殺しの英雄と称えられる未来に繋がっていることを……
そして後にこの日のことを私は、人生最高の日だったと称することになる。
最高の王子様を見つけ、一番の親友を見つけることができたそんな奇跡のような一日だったと……
◇◆◇
お知らせ
今回は短編として終わらせて頂きますが、また長編を書かせていただく予定です!よろしくお願いします!
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この時の対処方としては 別の国々の倒した証拠を見せた上で 実力もみせて 追われた国々以外の上位貴族達と交流をもっていたり または他の国に一時将として雇われた時状態でその国連中を率いて 元の国に行くことかな
そうでもしないと 一話見る限り スケープゴートした連中がなにをするか わかったものではないですよ
ざまぁするにしてもしっかりと 計画をねらないと 本気で危ない その辺は 他のざまぁした小説もしっかり証拠をおさえてやっていますからね。
捏造といえないほどのしっかりとした証拠をね
続きが気になります。
ルースと再会してくっつくことは出来るのだろうか
うわー、あまりにも主人公の境遇が酷すぎますよ。国民の手のひら返しも酷いですしこんな国滅んだほうがよくね?主人公を助けようとした青年だけかっさらってさっさと別の国にでも行った方が幸せになれると思います。この国にいても苦い思い出ばかりの上に肝心な時に裏切るような奴らばかりなので王族貴族や国民にざまあしたらさっさと出て行くことを自分はお勧めしますね。聖女としての能力はなくともそれ以外は優秀だったようですしそんな人材を捨てるような国はお先真っ暗でしょうから。国民も国民で恩をあだで返したのですから自業自得ですのでほっとけばいいと思います。なんかドラゴンさんが暴れて国がガタガタになり主人公がドラゴンを討っても国が立て直しを図る前に他の国から攻められたりしそうですし。そして恥知らずな奴らは主人公に縋ろうとしたりしそうな予感がビンビンにします!盛大なざまあを期待しております!