ヒビキとクロードの365日

あてきち

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3月

3月24日『世界結核デー』

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クロード「ゴホッ、ゴホッ。うーん、風邪でしょうか? ヒビキ様、買い置きの薬はどこにありましたっけ? ゴホン、ゴホン!」

 ヒビキ「そんな、クロード!?」

クロード「どうしたのですか? そんな悲壮感たっぷりの顔をして」

 ヒビキ「こんなに日にいきなり咳き込むなんて……まさか!」

クロード「こんな日? 一体何を……え、ちょ、ヒビキ様!?」

 ヒビキ「とりあえず陰圧室に隔離して、えっと、それで……」

クロード「落ち着いてください、ヒビキ様! 急にどうしたんですか!?」

 ヒビキ「……クロード、よく聞いて。君は『結核』という病気にかかったのかもしれないんだ。何せ今日3月24日は『世界結核デー』だから!」

クロード「そんな記念日の前振りのために病気にされてたまるもんですか! とにかくまずは『医学書』で診察してください。その方が早いですよ」

 ヒビキ「そ、そうだね! 病気の段階を確認しておかないと治療方針も決められないよね。『医学書』発動、診察開始! …………なんだ、風邪(初期)か」

クロード「完全にヒビキ様の早とちりですよ、全く。それで、買い置きの薬はありませんか? 咳を止めたいのですが」

 ヒビキ「いいよ、いいよ。風邪くらい俺が治してあげるから。回復魔法『キュア』」

クロード「おや、咳が止まりましたね?」

 ヒビキ「風邪はウイルス感染の一種だから『キュア』で状態異常を治したんだ」

クロード「ありがとうございます。だったら、その結核とやらもそれで治療すればいいだけなのでは?」

 ヒビキ「……うわぁ、それは思いつかなかったな。簡単すぎるでしょ、異世界」

クロード「ヒビキ様の世界では治療が難しい病気なのですか?」

 ヒビキ「最近はそうでもないけど、一昔前までは不治の病扱いだったね」

クロード「そ、それは怖いですね。今は大丈夫なのですよね?」

 ヒビキ「いまだに患者も死亡者もいるから絶対安全なんていえないけど、薬が開発される前と比べれば格段に脅威度は下がってるよ」

クロード「それを聞いて少し安心しました。それで『世界結核デー』とはどんな記念日なのですか? 頭に世界とつくのですからいつもの国際デーでしょうが」

 ヒビキ「結核根絶への誓いを新たにするために、1997年の世界保健総会で、世界保健機関(WHO)が制定した記念日だよ。1882年3月24日、ドイツの医師ロベルト・コッホが結核菌を発見したことが記念日の由来だそうだよ。この日の前後には、世界中で結核撲滅に向けてさまざまなイベントが開催されるんだ……いつもなら」

クロード「今年は違うのですか?」

 ヒビキ「今年は世界中で新型コロナウイルスが感染拡大している状況だからね。基本的には自粛するんじゃないかな? 日本でも今日に合わせたイベントを企画していたところが、かなり前から延期を表明していたりするし」

クロード「まあ、感染症を撲滅しようという記念日に、別物とはいえ感染リスクを増大させる催しを開くわけにはいかないでしょうね」

 ヒビキ「とはいえ、薬が開発されて影響力が低下したとはいえ、いまだに病気にかかる人がいるのも事実。結核撲滅の運動はこれからも続いていくんだろうね」

クロード「及ばずながら私も協力いたしますよ。何から始めましょうか」

 ヒビキ「とりあえず、数少ないここの読者に訴えるところから始めたら?」

クロード「では……結核は大変危険な病です。決して過去の病気ではなく、現在も注意が必要な病気であることを忘れないでください!」

 ヒビキ「高齢者が重篤化しやすくはあるけど、決して若者は大丈夫なんて病気でもないから、全員で気を付けていきましょう!」

クロード「ところでどうやって気を付ければよろしいので?」

 ヒビキ「えーと、ワクチンの予防接種はあるけど今は義務じゃないし……病気の兆候を感じたらすぐに病院で診察を受けようね!」

クロード「……確かに面倒くさそうな病気のようですね」





★★★★★
その他の記念日『檸檬忌』
※作家・梶井基次郎の命日(1932年3月24日)
※代表作『檸檬』
※死因:肺結核

クロード「この方、結核で亡くなったのですか……」
 ヒビキ「当時は有効な治療法が確立していなくて、結核で亡くなった文人も結構多いんだよね」
クロード「今は薬があってよかったですね」
 ヒビキ「何度でも言うけど、今も撲滅できていないことを忘れないように」
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