ヒビキとクロードの365日

あてきち

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3月

3月23日『世界気象デー』

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ジュエル「さて、今日はお勉強の時間ですわね」

 ヒビキ「はい、ジュエル先生!」

クロード「おや? 白衣姿にホワイトボードとは随分久しぶりな、というか、今日はジュエル殿が白衣を着ているのですね」

 ヒビキ「伊達メガネと指示棒も追加で装備してもらいました!」

ジュエル「特に用途はないので飾りなのですけれど……」

クロード「ヒビキ様、ジュエル殿が苦笑を浮かべているではありませんか。さてはこすぷれを強要しましたね」

 ヒビキ「コスプレってほどでもないけど、理科の先生っぽいでしょ?」

ジュエル「私に言われても分かりかねますわ」

クロード「ヒビキ様以外は異世界人ですからね。それで、今日は何のためにわざわざジュエル殿にこんな恰好をさせたのですか?」

 ヒビキ「なぜなら今日は理科の授業っぽいテーマだから! 今日3月23日は『世界気象デー』だよ!」

ジュエル「1950年3月23日に『世界気象機関(WMO)』なる組織が発足されたことに由来する記念日だそうですわ」

 ヒビキ「発足10周年を記念して1960年に制定された国際デーだよ」

クロード「気象……つまり天気にまつわる組織ということですか」

 ヒビキ「国際連合の専門機関のひとつで、気象事業の国際的な標準化や改善、調整などを行っているんだ。各加盟国や地域間の気象情報や資料の効率的な交換を推奨したりもしているんだって」

クロード「要するに仲介機関なのですね」

ジュエル「ヒビキ様の世界では、気象情報はあらゆる事業を行ううえでとても重要な要素らしいですわ。私達の世界と違って、国同士の繋がりがとても密らしいので、世界規模で天気を把握する必要があるそうですの」

クロード「天気など、その場のものが分かれば十分だと思いますがね」

 ヒビキ「そうかな? 冒険でこれから向かう先の天気があらかじめ分かっていたらかなり便利じゃない? 場合によっては行くのを中止する決断もできるし」

クロード「言われてみればそうですね。私も勇者時代は似たようなことがあったと思います。目的地に着いた途端に暴風雨に見舞われ、しばらく動けなかったのですよ」

ジュエル「冒険者をしていると必ず行き当たる問題ですわね」

 ヒビキ「そういえばジュエルさんも元冒険者だっけ?」

ジュエル「すぐにギルド所属になったので大した期間ではありませんでしたけど」

クロード「それはそうと、世界気象機関とやらは具体的にどんな活動をしているのですか? 調整や情報交換の推奨といってもよく分からないのですが」

 ヒビキ「たくさんあるけど、たとえば『世界気象監視計画』とか?」

クロード「監視と聞くとなぜか物騒な気配がしますね」

ジュエル「気象を監視するのですわ。1963年から始まったプロジェクトらしく、気象観測情報の共有および集積を世界的に推進するものだとか」

 ヒビキ「気象予報の大本となる情報収集に重点を置いた事業らしい。今では気象予報で欠かすことのできない通信システムを構築したとかなんとか」

クロード「ヒビキ様、言葉尻があいまいになっていますよ」

 ヒビキ「正直、説明が細かすぎて全貌を把握できないんだもん。本当に気になる人は自分で調べてねって感じ」

ジュエル「私達は関心を持つきっかけというわけですわね」

クロード「物は言いようというかなんというか……」

 ヒビキ「というわけでジュエルさん、明日の我が家周辺の天気を教えてください」

ジュエル「分かりませんわ」

 ヒビキ「えー、そんな恰好までしておいて分からないの?」

ジュエル「この服はヒビキ様が用意したものなのですけど……それはともかく、こっちの世界には天気予報システムなんてありませんもの。分かるわけありませんわ」

 ヒビキ「ぐううう、こうなったら異世界にも人工衛星を飛ばして」

クロード「その前にねっと環境を整えないと使えないのでは?」

 ヒビキ「うぬぬぬ、異世界め、もっと発展してよー!」

ジュエル「当たり前のように受けていた恩恵は、実は物凄いものだったという典型的な例ですわね」

クロード「行ったこともない国の天気を事前に知れることが如何に貴重な体験であるかを噛み締めないといけませんね。勉強になります」




★★★★★
その他の記念日『共和制記念日』
※1956年3月23日。
※パキスタンがイスラム教徒による共和国に移行したことを記念する日。

クロード「共和国? 民主国家のことですか?」
 ヒビキ「共和制と民主制は別物だよ?」
クロード「どう違うのです?」
 ヒビキ「俺達の語りは関心を持つきっかけとして――」
クロード「調べるつもりはさらさらないと……」

※共和制は中国、民主制は日本ってくらい違います。たぶん。
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