ヒビキとクロードの365日

あてきち

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3月

3月22日『世界水の日』

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 ヒビキ「うわああああああああああああああ!」

クロード「どうしたんですか、ヒビキさ――どわああああああああ!? キッチンが水浸しに! どうしたんですか、これは!? ――て、聞くまでもないですね!」

 ヒビキ「突然キッチンの蛇口がポンって外れちゃったんだよ! 水が止まらないー! ク、クロード、水道メーターの止水栓を閉めてきて! わぷぷぷぷ!」

クロード「畏まりました! ……て、水道メーターってどこだああああああああ!」



※緊急時に備えて水道、ガスの元栓などの位置はきちんと把握しておきましょう。



※数分後――。



クロード「ふぅ、ようやく見つけた。ヒビキ様、大丈夫ですか?」

 ヒビキ「ふぅ、ようやく止まった。クロード、大丈夫に見えるかな?」

クロード「まあ、見えませんね。キッチンもヒビキ様も大惨事です」

 ヒビキ「うううう、今日3月22日は『世界水の日』だっていうのに、こんなに水を無駄遣いしてしまうなんて……」

クロード「無駄遣いというか、いろんなものが台無しですよ。ヒビキ様、とりあえずこのタオルをどうぞ。それはそうと『世界水の日』ですか?」

 ヒビキ「ありがと。うん、1992年のブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミット『環境と開発に関する国際連合会議』のアジェンダ21で提案されて、翌年の1993年に国際連合総会で制定された記念日だよ」

クロード「専門用語が多すぎて全く頭に入ってきませんが、とりあえず、いわゆる国際デーというものなのですね?」

 ヒビキ「そゆこと。国連は加盟国に対し、この日に各国で水に関する活動を企画するよう薦めているんだ」

クロード「水に関する企画? 抽象的過ぎてよく分かりませんが……」

 ヒビキ「水と飲料水の確保や水資源の持続可能な開発に関する取り組みなどについてらしいよ。日本人には理解しづらいかもしれないけど、水ってとても貴重だから」

クロード「私は異世界人だから分かりますよ。ずっと冒険者として活動してきた私も、旅の間は飲料水の確保に難儀したものです。川の水が安全とは限りませんから」

 ヒビキ「自然豊かな山に流れる川の水とか、見た目はとても綺麗で安全そうだけど、実際はそうとも限らないからね」

クロード「湧き水ならまだしも、川は危険ですよ。動物も利用しますからね」

 ヒビキ「動物の糞尿や寄生虫、そのほか目に見えない毒素を含んでいる可能性は十分にある。俺達が当たり前のように水道から得ている水は、きっちりとした衛生管理のもとで供給されている恵みの水ってことだね」

クロード「水がなければ私達は生きていけません。この恵みに感謝しなければなりませんね……という記念日に蛇口がポン! というわけですか」

 ヒビキ「昨日まで何ともなかったのになぁ。とりあえず業者の人を呼んで修理してもらわないと。はぁ、回復魔法でこういうのも直せたらいいのに」

クロード「しかし困りましたね。元栓を閉めたのでしばらく水は使えませんよ? このあたりには井戸も川もありませんし、しばらく雨が降る気配も……」

 ヒビキ「ああ、それは大丈夫」

クロード「そうなのですか? まさか昨日の風呂の残り湯を使うとでも?」

 ヒビキ「そんなクロードの毛だらけのお湯なんて使いません」

クロード「のおおおお、そういうこと言われると凄く傷つきますよ。ではどうするのですか?」

 ヒビキ「もちろんこうします。水魔法『ウォーター』!」

クロード「わー、じゃばじゃばと水が。便利ですねぇ……もう水道なんて直さなくてもいいのでは? 水道代もカットできますし」

 ヒビキ「やだよ、面倒くさい! 俺はありがたーく公共の水道を利用するんだ!」

クロード「……そういえば、この水道ってどこから水を引いているんでしょうね? ここ、異世界なのに」




★★★★★
その他の記念日『放送記念日』
※日本放送協会が1943年に制定。
※1925年3月22日。社団法人東京放送局(現・NHK東京放送局)が日本初のラジオ仮放送を始めたことを記念。

 ヒビキ「ここの水道は日本と異世界をメタパワーで繋いで供給されているよ」
クロード「メタパワーて……もうちょっとそれっぽい設定を考えてください」
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