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3月
3月18日『点字ブロックの日』
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ヒビキ「というわけで目隠しするね、クロード」
クロード「ヒビキ様、おそらく説明部分が省略されています。説明を求めます」
〇〇〇〇「だーいじょうぶ。ちゃーんと私が手を引いてあげるから安心してね♪」
クロード「……目隠ししてたって声と臭いで分かりますからね、イヴェル!」
イヴェル「あらやだクロードってば怖いんだから。でも心配ご無用。ここは本編じゃないんだからいきなり襲い掛かったりしないわ。さあ、全てを私にゆだねるのよ」
ヒビキ「頑張れ、クロード!」
クロード「なんでヒビキ様までこいつに加担しているんですか!? あ、ちょっと、急に引っ張らないでください! 臭いが分かっても目が見えないのは怖いんです!」
ヒビキ「じゃあ、しゅっぱーつ!」
イヴェル「いえーい!」
クロード「無駄にノリがいいですね!?」
※数時間後――。
ヒビキ「クロード、目隠しにはもう慣れた?」
クロード「一応慣れたと思いますが、手を引かれているとはいえ、やはり暗闇を歩くのは緊張します。実際に目が見えない方はさぞ苦労しているのでしょうね」
イヴェル「そうでしょうね。だから健常者はそういう人を見かけたら、必要な場合は手助けすることも意識するようにしないといけないわ」
クロード「イヴェルの分際で高尚なことを言う……というか、ここはもしかしなくても駅のホームでしょうか?」
ヒビキ「よく分かったね」
クロード「駅員のアナウンスがガンガン垂れ流されていますから」
イヴェル「じゃあ、足元のこれは分かる?」
クロード「足元? ……ふむ? そういえば足の裏にデコボコした感触がありますね。整備不良でしょうか?」
ヒビキ「それは点字ブロックだよ」
クロード「てんじブロック?」
イヴェル「正しくは『視覚障害者誘導用ブロック』ね。視覚障害者の歩行を補助するために路面や床面に設置されているブロックよ」
ヒビキ「今日3月18日は『点字ブロックの日』だからね。せっかくだから異世界人のクロードに体験してもらおうと思って」
クロード「はぁ、とりあえず状況は理解しました。ですが、そういうことならやはり事前に説明をしてください。目隠しされながら敵に手を引かれるなんて、普通に怖いですよ。そもそも、なぜ今日は『点字ブロックの日』なのですか?」
イヴェル「1967年3月18日。岡山県立岡山盲学校に近い国道205号に世界で初めて点字ブロックが設置されたことにちなんだ記念日ね。世界初とか凄いわね」
クロード「確かに凄いが、なんでイヴェルがそんなことを知っているんだ」
ヒビキ「障害者にあまり優しい印象のない日本にしては先進的だよね」
クロード「そしてヒビキ様は説明役を奪われたのに無反応だし……」
イヴェル「日本の安全交通試験研究センターの初代理事長が1965年に考案、発明したものらしいわよ。それから少しずつ広まって、大阪府立盲学校の教職員らの陳情で1970年に国鉄駅で初めて点字ブロックが設置されたんですって」
ヒビキ「その後、東京都道路局も導入を決定したことで、最終的に今のように駅に点字ブロックがあることが当たり前になったってわけだね」
クロード「点字ブロック一つとっても色々な歴史があるのですね。勉強になります」
ヒビキ「それじゃあ、もう少しだけ点字ブロック体験を続けようか。足裏でブロックの感触をよく確かめて一人で歩いてみよう。イヴェル、手を放して」
イヴェル「はーい」
クロード「了解です……が、これは想像以上に不安になりますね。まさかイヴェルに手を引かれていた方が安心感があったとは思いませんでした」
ヒビキ「こうなるといかに点字ブロックが有難いか分かると思うよ。よし、じゃあ、点字ブロックの端まで歩いてみようか」
クロード「はい、かしこまりまし――」
〇〇〇〇「騙されるな、クロード!」
クロード「え? この声は……ヒビキ様?」
ヒビキ「――ちっ!」
〇〇〇〇「目隠しを取るんだ、クロード!」
クロード「さっきまで隣で聞こえていたヒビキ様の声が後ろから? 目隠しを取ればよろしいのですか? 了解しましたが急にどうして……な、なんですかこれは!?」
ヒビキ「大丈夫、クロード!?」
クロード「な、なぜ私は崖の上を歩いて……それに、このまま進んでいたら間違いなく崖下に転落して……はっ!? イ、イヴェルは!?」
ヒビキ「自分から崖下に飛び降りていったよ。はぁ、クロードの姿が見えないと思ったらこんなことになってるんだもん。びっくりしたよ……」
クロード「え? つまり、さっきまで私と一緒にいたヒビキ様は……偽物? いや、しかしイヴェルもいたはずで……」
ヒビキ「俺の声だけ真似していたんだよ。ホントに油断も隙もないんだから」
クロード「……もう、本編でもイヴェルとは関わりたくないです」
★★★★★
その他の記念日『精霊の日』
※万葉集を代表する歌人『柿本人麻呂』『和泉式部』『小野小町』の忌日とされる日。
※『精霊』は『せいれい』と読まず『しょうりょう』と読む。
※『しょうりょう』とは死者の霊魂を意味している。
クロード「有名な歌人達が同じ日に亡くなったのですか? こういっては何ですが、少々不吉ですね」
ヒビキ「彼らの命日は実ははっきりしていないんだ。多分当てはめただけだよ」
クロード「なんのために?」
ヒビキ「さあ?」
クロード「……まあ、平安時代の話ですしね」
クロード「ヒビキ様、おそらく説明部分が省略されています。説明を求めます」
〇〇〇〇「だーいじょうぶ。ちゃーんと私が手を引いてあげるから安心してね♪」
クロード「……目隠ししてたって声と臭いで分かりますからね、イヴェル!」
イヴェル「あらやだクロードってば怖いんだから。でも心配ご無用。ここは本編じゃないんだからいきなり襲い掛かったりしないわ。さあ、全てを私にゆだねるのよ」
ヒビキ「頑張れ、クロード!」
クロード「なんでヒビキ様までこいつに加担しているんですか!? あ、ちょっと、急に引っ張らないでください! 臭いが分かっても目が見えないのは怖いんです!」
ヒビキ「じゃあ、しゅっぱーつ!」
イヴェル「いえーい!」
クロード「無駄にノリがいいですね!?」
※数時間後――。
ヒビキ「クロード、目隠しにはもう慣れた?」
クロード「一応慣れたと思いますが、手を引かれているとはいえ、やはり暗闇を歩くのは緊張します。実際に目が見えない方はさぞ苦労しているのでしょうね」
イヴェル「そうでしょうね。だから健常者はそういう人を見かけたら、必要な場合は手助けすることも意識するようにしないといけないわ」
クロード「イヴェルの分際で高尚なことを言う……というか、ここはもしかしなくても駅のホームでしょうか?」
ヒビキ「よく分かったね」
クロード「駅員のアナウンスがガンガン垂れ流されていますから」
イヴェル「じゃあ、足元のこれは分かる?」
クロード「足元? ……ふむ? そういえば足の裏にデコボコした感触がありますね。整備不良でしょうか?」
ヒビキ「それは点字ブロックだよ」
クロード「てんじブロック?」
イヴェル「正しくは『視覚障害者誘導用ブロック』ね。視覚障害者の歩行を補助するために路面や床面に設置されているブロックよ」
ヒビキ「今日3月18日は『点字ブロックの日』だからね。せっかくだから異世界人のクロードに体験してもらおうと思って」
クロード「はぁ、とりあえず状況は理解しました。ですが、そういうことならやはり事前に説明をしてください。目隠しされながら敵に手を引かれるなんて、普通に怖いですよ。そもそも、なぜ今日は『点字ブロックの日』なのですか?」
イヴェル「1967年3月18日。岡山県立岡山盲学校に近い国道205号に世界で初めて点字ブロックが設置されたことにちなんだ記念日ね。世界初とか凄いわね」
クロード「確かに凄いが、なんでイヴェルがそんなことを知っているんだ」
ヒビキ「障害者にあまり優しい印象のない日本にしては先進的だよね」
クロード「そしてヒビキ様は説明役を奪われたのに無反応だし……」
イヴェル「日本の安全交通試験研究センターの初代理事長が1965年に考案、発明したものらしいわよ。それから少しずつ広まって、大阪府立盲学校の教職員らの陳情で1970年に国鉄駅で初めて点字ブロックが設置されたんですって」
ヒビキ「その後、東京都道路局も導入を決定したことで、最終的に今のように駅に点字ブロックがあることが当たり前になったってわけだね」
クロード「点字ブロック一つとっても色々な歴史があるのですね。勉強になります」
ヒビキ「それじゃあ、もう少しだけ点字ブロック体験を続けようか。足裏でブロックの感触をよく確かめて一人で歩いてみよう。イヴェル、手を放して」
イヴェル「はーい」
クロード「了解です……が、これは想像以上に不安になりますね。まさかイヴェルに手を引かれていた方が安心感があったとは思いませんでした」
ヒビキ「こうなるといかに点字ブロックが有難いか分かると思うよ。よし、じゃあ、点字ブロックの端まで歩いてみようか」
クロード「はい、かしこまりまし――」
〇〇〇〇「騙されるな、クロード!」
クロード「え? この声は……ヒビキ様?」
ヒビキ「――ちっ!」
〇〇〇〇「目隠しを取るんだ、クロード!」
クロード「さっきまで隣で聞こえていたヒビキ様の声が後ろから? 目隠しを取ればよろしいのですか? 了解しましたが急にどうして……な、なんですかこれは!?」
ヒビキ「大丈夫、クロード!?」
クロード「な、なぜ私は崖の上を歩いて……それに、このまま進んでいたら間違いなく崖下に転落して……はっ!? イ、イヴェルは!?」
ヒビキ「自分から崖下に飛び降りていったよ。はぁ、クロードの姿が見えないと思ったらこんなことになってるんだもん。びっくりしたよ……」
クロード「え? つまり、さっきまで私と一緒にいたヒビキ様は……偽物? いや、しかしイヴェルもいたはずで……」
ヒビキ「俺の声だけ真似していたんだよ。ホントに油断も隙もないんだから」
クロード「……もう、本編でもイヴェルとは関わりたくないです」
★★★★★
その他の記念日『精霊の日』
※万葉集を代表する歌人『柿本人麻呂』『和泉式部』『小野小町』の忌日とされる日。
※『精霊』は『せいれい』と読まず『しょうりょう』と読む。
※『しょうりょう』とは死者の霊魂を意味している。
クロード「有名な歌人達が同じ日に亡くなったのですか? こういっては何ですが、少々不吉ですね」
ヒビキ「彼らの命日は実ははっきりしていないんだ。多分当てはめただけだよ」
クロード「なんのために?」
ヒビキ「さあ?」
クロード「……まあ、平安時代の話ですしね」
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