ヒビキとクロードの365日

あてきち

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3月

3月17日『聖パトリックの祝日』

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クロード「さてと、今日も今日とて家庭菜園の手入れをしませんと。水やり水やり……おや、裏庭から人が――て、ヒビキ様ですか」

 ヒビキ「あ、クロード。ただいまー」

クロード「お顔や服に葉っぱが付いていますよ。取ってあげましょう。まったく、一体どこで遊んでこられたのですか。小さな子供じゃあるまいし」

 ヒビキ「取っちゃダメ!」

クロード「ヒビキ様?」

 ヒビキ「これはワザとだよ。今日3月17日は『聖パトリックの祝日』だから」

クロード「ほぉ、聖人の日ですか。それと雑草に何の関係があるのです?」

 ヒビキ「雑草じゃなくてシャムロック! クローバーの仲間だよ」

クロード「クローバーというとあの、幸せを呼ぶ葉っぱの?」

 ヒビキ「あれはシロツメクサの変異体で、葉が四枚だからシャムロックとは呼ばない。シャムロックは葉が3枚に分かれている草の総称なんだ。マメ科のクローバーだけでなく、マメ科のウマゴヤシや、カタバミ科のミヤマカタバミなんかも含めてシャムロックっていうんだよ」

クロード「へぇ、勉強になる雑学ですね」

 ヒビキ「シャムロックはアイルランドの国花なんだ。『聖パトリックの祝日』はアイルランド共和国の祝祭日なんだよ」

クロード「聖人の祝日って、本当にヒビキ様の国とはいつも全く関係ないですよね」

 ヒビキ「そうでもないよ? 日本でも1992年に『セント・パトリック・デイ・パレード』っていうイベントが開催されているんだから」

クロード「随分前ですが、そんな催しが?」

 ヒビキ「アイルランドを一般の人にもっと知ってもらおうっていう企画だね。東京の原宿・表参道をアイルランドのシンボルカラーのグリーンや、シンボルの三つ葉のクローバーデザインの衣装、小物を身に着けた約1,000人がパレードに参加したんだって。横浜や熊本でも開催されたらしいよ」

クロード「緑とクローバーの大行列ですか……一体、どういう祝日なのです?」

 ヒビキ「元々はアイスランドにキリスト教を広めた聖人『聖パトリック』の命日だね。シャムロックを服につけたり、ミサを行ったりしながら何世紀にもわたってこの日を祝ってきたんだけど、1903年に正式に祝日とすることが決まったらしい」

クロード「重んじてきた伝統が正式な祝日となったのですか」

 ヒビキ「アイルランドの使徒とも呼ばれている聖パトリックは大体4~5世紀の人で、それ以来と考えるとちょっと凄いよね。アイルランドだけでなくアメリカやオーストラリアなんかでも祝われているみたいだし」

クロード「ヒビキ様の国のような催しですか?」

 ヒビキ「いや、ちゃんとしたお祝いだよ。アメリカやオーストラリアはアイルランド移民が多くて、移民した先でもこの伝統が続いたみたいなんだ。特にアメリカでは緑色の物を身に着けて祝う日『緑の日』として祝日が世俗化しているんだって。一部の地域ではこの日に川を緑色に染める催しが開催されたりしたそうだよ」

クロード「え、そんなことして大丈夫なんですか? 汚染とか」

 ヒビキ「一応入浴剤にも使われる成分で、毒性はないらしいよ。でも、見た目があれだから結構反発する人もいたとかいないとか」

クロード「そりゃあ、私だって急に川が緑色になったらびっくりしますよ」

 ヒビキ「……そう?」

クロード「もちろんです。いくら毒性がないと言われても私の家庭菜園にそんな水を撒くことはできませんからね。そんなことをする者がいたら成敗してやりますよ」

 ヒビキ「そ、そうだね……」

クロード「ヒビキ様、どうされました? お顔が真っ青ですよ?」

 ヒビキ「あ、俺、ちょっと用事を思い出しちゃったから出掛けないと!」

クロード「またですか? それにその恰好で? 一度着替えた方が」

 ヒビキ「急がなくっちゃ! じゃあね!」

クロード「はぁ、いってらっしゃいませ……何をそんなに慌てているんだろう。まあ、いいか。私も畑に水やりをしに行くところでしたしね。ふふふ、早くたくさん実るのが待ち遠しいですね」







※その数分後、裏庭から怒号が響いたとか響いたとか……。




★★★★★
その他の記念日『漫画週刊誌の日』
※1959年3月17日。
※日本初の少年週刊誌『週刊少年サンデー』『週刊少年マガジン』が創刊された。

 ヒビキ「へぇ、この日に『ジャンプ』は含まれていないんだね」
クロード「……ヒビキ様。そんな話で煙に巻けると思わないでください。よくも私の家庭菜園を緑色に汚染してくれやがりましたね!」
 ヒビキ「や、野菜は元々緑色だし、いいかなって……」
クロード「ああん?」
 ヒビキ「ごめんなさい! お願いだからそんな目で睨まないでー!」
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