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2月
2月15日『涅槃会』
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クロード「さて、今日も今日とて家庭菜園を頑張りますか……て、畑の真ん中に見慣れぬ木が……そしてその木の下で寝転がって何をしているのですか、ヒビキ様?」
ヒビキ「……」
クロード「へんじがない。ただのしかばねのようだ……じゃなくて、ヒビキ様!」
ヒビキ「……」
クロード「本当に返事がない。ま、まさか、本当に……脈が……ある!」
ヒビキ「そりゃまあ死んでないからね」
クロード「驚かせないでください! 何をしているのですか!?」
ヒビキ「涅槃(ニルヴァーナ)の真似事?」
クロード「ニルヴァーナ? 何かのスキルですか?」
ヒビキ「ある意味固有スキル的なものだよね。『涅槃』とは別名『解脱』とも呼ばれる仏教的概念で、繰り返す再生の輪廻から解放された状態――いわゆる悟りの境地を意味する言葉だよ。今日2月15日は『涅槃会』の日だからお釈迦様の真似をしてみたんだけど、そうそう簡単に悟りを得ることはできないみたい」
クロード「宗教用語は分かりませんが、『涅槃会』とはどんな記念日なのですか?」
ヒビキ「仏教の開祖ガウタマ・シッダールタが入滅したとされる日だね。日本や中国ではこの日に法要(お経をあげて故人を偲び冥福を祈る追善供養)を行うお寺が多いそうだよ」
クロード「開祖の命日ともなれば供養して当然でしょうが、ガウタマ・シッダールタ? 先程は『シャカ』と仰っていませんでしたか?」
ヒビキ「えーと、この人にはいろんな呼び方があってね。まず『ガウタマ・シッダールタ』は姓名で、ガウタマ家のシッダールタ君って意味だね」
クロード「では『シャカ』とは?」
ヒビキ「『釈迦』は『釈迦牟尼(しゃかむに)』の略称だね。『シャーキヤムニ』という仏教発祥の地である古代インドの『サンスクリット語』で『シャーキヤ族の聖者』という意味になる。彼はシャーキヤ族という部族の出身だったらしいよ」
クロード「つまり『シャカ』とは一種の尊称なのですね」
ヒビキ「あとは『仏陀(ブッダ)』と呼ばれることもあるよ」
クロード「本当にたくさん呼び名がありますね」
ヒビキ「『目覚めた人』という意味だね。元々は優れた修行者や聖者に対する呼称だったけど、仏教においてはお釈迦様を表す尊称として使われているよ」
クロード「目覚めた人? ああ、それが『涅槃』に繋がるわけですか」
ヒビキ「悟りを開き、迷妄のなくなった彼はまさに『目覚めた人』だからね」
クロード「ヒビキ様はその方の真似をしていたということですか。しかし、木の下で寝転がることのどこが涅槃に通じるのですか?」
ヒビキ「畑の真ん中にあるこの木の名前は『沙羅双樹(さらそうじゅ)』。釈迦はこの木の下で寝転がりながら入滅したんだ。頭を北にして西を向き、右脇を下にした姿で臥し、彼が入滅する際には多くの弟子や獣たちが集まっていたとか」
クロード「それで、悟りは開けましたか?」
ヒビキ「それが全然」
クロード「でしょうね。というか、説明を聞く限り『涅槃』は悟ることとは少々違うような気がするのですが」
ヒビキ「へ?」
クロード「要するに『涅槃』とは、死後の迷いを断ち切るとかそんな意味なのではありませんか? ……ヒビキ様、このまま悔いなく死ねますか?」
ヒビキ「無理だよそんなの。まだ本編だって再開されてないのに」
クロード「この作品だってまだ最終話ではありませんしね」
ヒビキ「悔いなく死んでる場合じゃなかった! 本編だってまだアニメ化してないし! goods化もゲーム化もしてないし! 映画化と舞台化と実写ドラマ化と――」
クロード「迷妄というか妄想が広がっていますね……」
ヒビキ「なんだか楽しくなってきた、夢が広がるね、クロード!」
クロード「はい、ヒビキ様……人生楽しければ、まあ、何でもいいですね」
★★★★★
その他の記念日『春一番名付けの日』
※1859年旧暦2月13日。
※長崎県壱岐郡郷ノ浦町(現・壱岐市)の漁師53人が、沖で突風に遭い全滅した。
※それ以降、春先に吹く強い南風を『春一番』と呼ぶようになった。
※――と、1963年2月15日に朝日新聞の朝刊で紹介された。
クロード「『春一番』という言葉を広げたきっかけは新聞だから2月13日ではなく15日が記念日なのですね……ややこしい」
ヒビキ「クロード、聞いてよ。釈迦が悟りを開いたのは沙羅双樹じゃなくて菩提樹だったんだって! 畑に植える木を間違えた!」
クロード「あれだけ妄言を吐いておいて、まだ悟る気だったのですか……?」
ヒビキ「……」
クロード「へんじがない。ただのしかばねのようだ……じゃなくて、ヒビキ様!」
ヒビキ「……」
クロード「本当に返事がない。ま、まさか、本当に……脈が……ある!」
ヒビキ「そりゃまあ死んでないからね」
クロード「驚かせないでください! 何をしているのですか!?」
ヒビキ「涅槃(ニルヴァーナ)の真似事?」
クロード「ニルヴァーナ? 何かのスキルですか?」
ヒビキ「ある意味固有スキル的なものだよね。『涅槃』とは別名『解脱』とも呼ばれる仏教的概念で、繰り返す再生の輪廻から解放された状態――いわゆる悟りの境地を意味する言葉だよ。今日2月15日は『涅槃会』の日だからお釈迦様の真似をしてみたんだけど、そうそう簡単に悟りを得ることはできないみたい」
クロード「宗教用語は分かりませんが、『涅槃会』とはどんな記念日なのですか?」
ヒビキ「仏教の開祖ガウタマ・シッダールタが入滅したとされる日だね。日本や中国ではこの日に法要(お経をあげて故人を偲び冥福を祈る追善供養)を行うお寺が多いそうだよ」
クロード「開祖の命日ともなれば供養して当然でしょうが、ガウタマ・シッダールタ? 先程は『シャカ』と仰っていませんでしたか?」
ヒビキ「えーと、この人にはいろんな呼び方があってね。まず『ガウタマ・シッダールタ』は姓名で、ガウタマ家のシッダールタ君って意味だね」
クロード「では『シャカ』とは?」
ヒビキ「『釈迦』は『釈迦牟尼(しゃかむに)』の略称だね。『シャーキヤムニ』という仏教発祥の地である古代インドの『サンスクリット語』で『シャーキヤ族の聖者』という意味になる。彼はシャーキヤ族という部族の出身だったらしいよ」
クロード「つまり『シャカ』とは一種の尊称なのですね」
ヒビキ「あとは『仏陀(ブッダ)』と呼ばれることもあるよ」
クロード「本当にたくさん呼び名がありますね」
ヒビキ「『目覚めた人』という意味だね。元々は優れた修行者や聖者に対する呼称だったけど、仏教においてはお釈迦様を表す尊称として使われているよ」
クロード「目覚めた人? ああ、それが『涅槃』に繋がるわけですか」
ヒビキ「悟りを開き、迷妄のなくなった彼はまさに『目覚めた人』だからね」
クロード「ヒビキ様はその方の真似をしていたということですか。しかし、木の下で寝転がることのどこが涅槃に通じるのですか?」
ヒビキ「畑の真ん中にあるこの木の名前は『沙羅双樹(さらそうじゅ)』。釈迦はこの木の下で寝転がりながら入滅したんだ。頭を北にして西を向き、右脇を下にした姿で臥し、彼が入滅する際には多くの弟子や獣たちが集まっていたとか」
クロード「それで、悟りは開けましたか?」
ヒビキ「それが全然」
クロード「でしょうね。というか、説明を聞く限り『涅槃』は悟ることとは少々違うような気がするのですが」
ヒビキ「へ?」
クロード「要するに『涅槃』とは、死後の迷いを断ち切るとかそんな意味なのではありませんか? ……ヒビキ様、このまま悔いなく死ねますか?」
ヒビキ「無理だよそんなの。まだ本編だって再開されてないのに」
クロード「この作品だってまだ最終話ではありませんしね」
ヒビキ「悔いなく死んでる場合じゃなかった! 本編だってまだアニメ化してないし! goods化もゲーム化もしてないし! 映画化と舞台化と実写ドラマ化と――」
クロード「迷妄というか妄想が広がっていますね……」
ヒビキ「なんだか楽しくなってきた、夢が広がるね、クロード!」
クロード「はい、ヒビキ様……人生楽しければ、まあ、何でもいいですね」
★★★★★
その他の記念日『春一番名付けの日』
※1859年旧暦2月13日。
※長崎県壱岐郡郷ノ浦町(現・壱岐市)の漁師53人が、沖で突風に遭い全滅した。
※それ以降、春先に吹く強い南風を『春一番』と呼ぶようになった。
※――と、1963年2月15日に朝日新聞の朝刊で紹介された。
クロード「『春一番』という言葉を広げたきっかけは新聞だから2月13日ではなく15日が記念日なのですね……ややこしい」
ヒビキ「クロード、聞いてよ。釈迦が悟りを開いたのは沙羅双樹じゃなくて菩提樹だったんだって! 畑に植える木を間違えた!」
クロード「あれだけ妄言を吐いておいて、まだ悟る気だったのですか……?」
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