ヒビキとクロードの365日

あてきち

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2月

2月3日『節分』

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クロード「ヒ、ヒビキ様……準備、できました……」

 ヒビキ「遅いよ、クロード……て、何恥ずかしがってんの?」

クロード「は、恥ずかしいに決まってます! 虎柄の腰蓑姿なんて!」

 ヒビキ「失礼な。他にもちゃんと用意しておいたでしょ」

クロード「角の装飾と模造のこん棒だけじゃないですか!?」

 ヒビキ「鬼の仮装だもん、仕方ないよ。今日2月3日は『節分』だからね。レッツ豆まきだよ、クロード」

クロード「ううう、なんて破廉恥な風習なんだ」

 ヒビキ「破廉恥って。ミニスカじゃないんだから、恥ずかしそうに両手で腰蓑を押さえないでよ……もじもじする狼獣人……SNSにアップしたらバズ――」

クロード「殺しますよ!?」

 ヒビキ「ほら、勢い余ってこん棒を振り上げたら腰蓑がめくれちゃうよ」

クロード「きゃああああああ!」

 ヒビキ「きゃーって……」

クロード「腰蓑の丈が短すぎるんですよ! もう何でもいいから記念日の説明をちゃっちゃと終わらせてください!」

 ヒビキ「しょうがないなぁ。まず前提として言っておくと、『節分』というのは今日に限ったものじゃなくて、各季節の始まる日の前日を指す言葉なんだ」

クロード「季節が始まる前日? どういう意味です?」

 ヒビキ「つまり『立春』『立夏』『立秋』『立冬』の前日を『節分』というんだよ」

クロード「ですが、ヒビキ様の国では2月3日を『節分』といいますよね?」

 ヒビキ「江戸時代あたりから『節分』といえば『立春』の前日ってイメージが定着したみたいだよ。毎年2月3日が『節分』だなんて言えるのも今年までだけど」

クロード「???」

 ヒビキ「『節分』は『立春』の前日だからね。『立春』の日付が変われば自ずと『節分』の日付も変わる。1985年から2020年まえは毎年2月3日が『節分』だったけど、2021年からは閏年の翌年の『節分』は2月2日になるんだ」

クロード「なぜなんでしょう……?」

 ヒビキ「日本が採用している『グレゴリオ暦』の計算としか言えないかな。2021年から2057年にかけて、四年に一回は『節分』が2月2日になって、2055年からは四年に二回が2月2日になる計算らしいよ」

クロード「毎年コロコロ日付が変わるとなると、少々面倒ですね」

 ヒビキ「スーパーとかも豆の販売日とか大変そうだよね。『今年の節分は〇月〇日』って表示しておかないと、うっかり購入日を間違えちゃいそうだ」

クロード「というか、なぜ豆をまくのですか? そしてなぜこんなこっぱずかしい格好をしなければならないのですか?」

 ヒビキ「季節の変わり目である『節分』には、邪気(鬼)が生じると信じられていたんだ。豆まきは悪霊払いの儀式みたいなものだね。豆(穀物)には生命力と魔除けの呪力が備わっているという信仰があったり、あとは語呂合わせとか」

クロード「語呂合わせ? 豆と鬼に何の関係が……」

 ヒビキ「豆は『魔目(まめ)』、鬼を滅することを『魔滅』といい、鬼の目に豆を投げつけることで鬼を滅する、つまり邪気を追い払うことができるって感じ?」

クロード「ヒビキ様の国は縁起を気にした言葉遊びが本当に好きですね……」

 ヒビキ「仮装は俺の趣味だよ。ジャージに鬼のお面でも何の問題もないしね」

クロード「殺しますよ!?」

 ヒビキ「わー、鬼がでたー! 鬼は外、福は内!」

クロード「うわっぷ!? 棒読みのくせに本気で豆を投げないでください! 地味に痛い、イタタタタタ!」

 バルス「ははははははっ! 鬼は出ていきやがれ!」

コウイチ「ヒビキに害なす鬼め、さっさとこの場を立ち去るがいい」

クロード「バルス殿に、コウイチ殿!?」

 ヒビキ「二人ともいつの間に来てたの? 呼んだ覚えないんだけど」

バルス&コウイチ「「福は内っていわれたから」」

クロード「貴様らが福のはずがないだろおおおおおおおおおおおおおお!」

 ヒビキ「……おかしいな、豆まきしたのに我が家の邪気が高まった気がする」





★★★★★
その他の記念日『大岡越前の日』
※享保2年(1717年)2月3日(旧暦)。
※大岡忠相(通称『大岡越前守』)が南町奉行に就任したことに由来。

 ヒビキ「裁きを下す! 我が家の邪気を高めた三人は鬼認定であーる!」
 バルス「ちょ、ヒビキ!? 獣人のクロードはともかく俺達にあのミニ腰蓑は……」
コウイチ「そうだぞ、ヒビキ。毛むくじゃらが着るなら仮装で済むが、普通の人間があれを着るのは少々ハードルが高いと思うぞ。俺達には羞恥心というものがだな」
クロード「私だって恥ずかしいに決まってるでしょうがあああああああ!」
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