ヒビキとクロードの365日

あてきち

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1月

1月31日『生命保険の日』

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 ヒビキ「うーん、どうしよう……」

クロード「何か悩み事ですか、ヒビキ様?」

 ヒビキ「さっき保険のセールスが来たんだよ。『生命保険』に入らないかって」

クロード「生命保険?」

 ヒビキ「ほら、俺達は冒険者だからいつ死ぬかも分からないでしょ? だからもしもに備えて保険に入りませんかってことなんだけど」

クロード「えーと、そもそも『生命保険』とは何なのです?」

 ヒビキ「こっちの世界にはないの? ダンジョンの捜索委託制度もあるし、生命保険くらいあるのかと思っていたよ。『生命保険』というのは、人の生存や死亡による損失を保障することを目的とした保険のことだよ。例えば、俺とクロードが何かの理由で死んでも、リリアンやユーリを受取人として生命保険を掛けておけば二人に保険金が支払われて、俺達がいないことによる経済的負担を軽減できるってわけ」

クロード「あまり想像したくない事態ですが、もしもに備えることは重要ですね。その『生命保険』の勧誘を受けたということですか」

 ヒビキ「まあね。今日1月31日は『生命保険の日』だから躍起になってるのかも」

クロード「そんな記念日があるのですか?」

 ヒビキ「2009年1月に『MDRT日本会』が制定した記念日だよ」

クロード「えむでぃー……何です?」

 ヒビキ「MDRT――Million Dollar Round Tableの略称だね」

クロード「直訳すると『百万ドルの円卓会議』? はて? 何でしょう?」

 ヒビキ「生命保険のトップセールスマンの集まりかな。最低でも年収一千万円以上の人達の中で構成された組織で、生命保険業界ではとても名誉な肩書らしい」

クロード「年収一千万。今のレートだと百万ドル=約1億強……全く届いていないような気がするのですが」

 ヒビキ「最低一千万だから。軽く一億超えている人も普通にいるのがMDRTなの」

クロード「はぁ、空恐ろしい話ですねぇ」

 ヒビキ「完全に雲の上の話って感じだよね」

クロード「私達はダンジョン攻略で五千万円相当の金塊とか手に入れてますけどね」

 ヒビキ「……あれ? もしかして俺達ってお金持ち?」

クロード「私も実感はありませんが今さらですね。そういえば、なぜ今日が『生命保険』の日なのです? 何か出来事でも?」

 ヒビキ「ああ、それは、1882年1月31日に日本で初めて生命保険金が支払われたことにちなんでだそうだよ。ちなみに『生命保険の日』ってもうひとつあるんだ」

クロード「もうひとつ?」

 ヒビキ「MDRT日本会とは別組織『生命保険協会』が定めた11月1日だね。正確には11月1日から11月30日までを『生命保険の月』と呼んでいる」

クロード「別々の組織でそれぞれ『生命保険の日』を? 一般人からしたらごちゃごちゃして面倒臭いことこの上ない話ですね」

 ヒビキ「こちらは1947年に制定された記念日だね。当時、第二次世界大戦のせいで低迷しまくっていた生命保険業界を立て直すために、GHQの保険担当官が11月を『生命保険の月』にしたらどうかと提案したとかしなかったとか」

クロード「なんとも曖昧な言い草です」

 ヒビキ「公式文書で記録されてるわけでもないからはっきりしないんだもん」

クロード「そちらはなぜ11月が『生命保険の月』に?」

 ヒビキ「正確なところは不明だけど、儲けられそうだったからと言われている」

クロード「生命保険業界は11月に儲かるのですか?」

 ヒビキ「記念日制定当時の日本は農家が多かったからね。秋に収穫をして農協に販売し、その後利益が出るから……」

クロード「懐が温かい、と……なんだか生命保険に入るのが躊躇われる由来です」

 ヒビキ「まあまあ、バレンタインも似たようなものじゃない」

クロード「それで、結局生命保険には加入するのですか?」

 ヒビキ「うーん、今回はやめておこうかな」

クロード「そうでしょうとも」

 ヒビキ「危ない目には遭うかもしれないけど、うちの作者のスタンス的に俺やクロードが死ぬ可能性ってほぼないし」

クロード「……メタ発言は禁止です、ヒビキ様」

 ヒビキ「今さらじゃない?」





★★★★★
その他の記念日『晦日正月・晦日節』
※ホントにホントの正月最後の日。
※この日に、松の内に年始回りをしなかった家を訪ねる地方もある。

クロード「……まだ終わってなかったんですね」
 ヒビキ「二十日正月で終わりじゃなかったの? だったらここまで休みにしてよ」
クロード「一ヶ月もダラダラ休んでいたら、人間ダメになりそうですけどね」
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