ヒビキとクロードの365日

あてきち

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1月

1月29日『タウン情報の日』

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クロード「ふぅ、家庭菜園の土の整備はこのくらいで十分ですね。そろそろ何を植えるか決めたいところです。ヒビキ様は何が欲しいでしょうか。ヒビキ様―?」

 ヒビキ「西通りの紅茶屋さんは絶対掲載すべきだよ。美味しいし」

エマリア「宿屋の情報も必要よ。微笑の女神亭も載せた方がいいんじゃない?」

ジュエル「表紙と冒頭の特集ページは冒険者ギルドにいたしましょう」

ヒビキ&エマリア「「それはない」」

ジュエル「まさか、この私がお二人からツッコまれる日が来るなんて……」

クロード「……先程からリビングで何をなさっているのですか?」

エマリア「お邪魔してるわよ」

ジュエル「こんにちは、クロード様」

 ヒビキ「おかえり、クロード。畑仕事はもういいの?」

クロード「はい、今日の分は目途が付きました。それで、家庭菜園で何を育てるか相談しようと思っていたのですが、お三方が集まって何をされているのですか?」

 ヒビキ「みんなでローウェルの『タウン情報誌』を作っているんだ。今日1月29日は『タウン情報の日』だからね」

クロード「タウン情報の日?」

 ヒビキ「1973年1月29日。日本初の地域情報誌『ながの情報』が発行されたことにちなんで『タウン情報全国ネットワーク』が制定した記念日だよ」

クロード「えっと、タウン情報誌とはどんなものなのですか?」

ジュエル「地域に根差した情報を扱う書物らしいですわ」

エマリア「住んでいる人、訪れた人に、その地域ならではの役立つ情報を紹介して、地域愛を深めてもらうことが目的の情報誌なんですって」

クロード「ほぉ、大陸をまたにかける冒険者には便利そうな代物ですね」

 ヒビキ「だから今日の記念日を機にローウェルのタウン情報誌を作ることにしたんだ。今、二人と一緒にどんな情報を載せるか相談し合っているところだよ」

クロード「冒険者としては周辺の魔物情報なども入れてほしいところですね。ギルドで聞いてもよいのですが、手間が省けて助かります」

ジュエル「ほら、やはり冒険者関連の情報は不可欠なのですわ。というわけで、街の顔として冒険者ギルドを本の表紙にして、大特集ページを――」

エマリア「でもそれ、旅行に来た一般人には全く興味を惹かれない内容じゃないかしら。それよりも宿屋特集とか、素敵な土産物特集をメインに――」

 ヒビキ「地域に根付いた情報なんだから、街に住んでる人も外から来た人にも楽しんでもらえる、くつろげるカフェ特集の方がいいと思うんだけどなぁ……」

クロード「……何やら紛糾していますね」

ジュエル「ええ、困りましたわ。お互いの意見がバラバラで情報誌の方向性を統一できませんの。とりあえず、私とクロード様の二票で冒険者ギルドをメインにすることは決まりましたけど」

ヒビキ&エマリア「「決まってない!」」

ジュエル「世の中多数決がものを言う世界ですのよ、お二人とも(ニコリ)」

 ヒビキ「クロードの裏切り者!」

クロード「ジュエル殿、勝手に一票入れないでください。私はあくまで冒険者という視点から話をしただけで、情報誌の内容に文句を言うつもりは……」

ジュエル「さてと、バルス様を呼んで三票にすれば確定必至ですわね」

エマリア「黒いわ! 今日のジュエルは何だか黒いわ!」

 ヒビキ「だったら俺も候兄ちゃん達を呼んで加勢してもらおう。それなら一気に四票入るから俺の案が通るはず!」

エマリア「あ、ちょ、ズルいわよ!? ど、どうしよう、私は……ラクリシアは呼びたくないし、他に誰かなんて……はうぅ」

クロード「……きっと実際に情報誌を作る人達も、こうやって意見を出し合ってよりよいものを作っているんでしょうね。本当にご苦労様です」




★★★★★
その他の記念日『人口調査記念日』
※1872年1月29日。
※日本初の全国戸籍調査が実施された。

クロード「それで、結局どんな情報誌を作ることになったのですか?」
 ヒビキ「『ローウェル・カフェ専門情報誌』編集長のヒビキです」
ジュエル「『ローウェル・冒険者専門情報誌』編集長のジュエルと申します」
エマリア「『ローウェル・観光専門情報誌』編集長のエマリアよ、よろしくね」
クロード「……交渉は決裂しましたか。創刊する前からお家騒動になるとは」
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