ヒビキとクロードの365日

あてきち

文字の大きさ
上 下
318 / 388
1月

1月22日『カレーの日』

しおりを挟む
 ヒビキ「お昼ごはんだよー」

クロード「おお、もうそんな時間ですか。今日のメニューは何でしょう?」

 ヒビキ「カレーライスだよ」

クロード「それは楽しみですね。そういえば、書籍第2巻でヒビキ様が作ってくれたことがありましたっけ。懐かしい思い出です」

 ヒビキ「確かあの時、クロードはまだ野菜を切るのに苦労する程度の料理下手で済んでいたんだっけ。懐かしい思い出だね」

クロード「そんな遠い目をするのはやめてください。今の私の料理レベル設定はこの作品の中だけですから大丈夫です……大丈夫ですよね?」

 ヒビキ「た、多分……そんなことより食べようよ。今日のカレーは一味違うよ!」

クロード「そうなのですか? それは楽しみです。して、何が違うのでしょう?」

 ヒビキ「なんと今日は『給食風カレー』なのです! なんたって今日1月22日は『カレーの日』だからね!」

クロード「給食風?」

 ヒビキ「全国学校栄養士協議会が学校給食開始35周年を記念して1982年1月22日、全国の小中学校で統一献立として一斉にカレー給食を出した。それを記念して全日本カレー工業協同組合が、2016年11月に『カレーの日』を制定したんだよ」

クロード「そういえば、カレーはヒビキ様の国では国民食などと呼ばれていましたね。しかし、わざわざ給食風と呼ぶからには、いつものカレーと何か違うのですか?」

 ヒビキ「食べてみれば分かるよ」

クロード「はぁ、ではいただきます。パクリ、もぐもぐ……」

 ヒビキ「どう?」

クロード「えぇ、とても美味しいです。確かに普段のカレーとは何か違うような気がしますが、具体的に何が違うのでしょう、パクリ、もぐもぐ、パクリ、もぐもぐ」

 ヒビキ「首を傾げながらも食べるのをやめないんだ」

クロード「はい、不思議とスプーンが止まらない美味しさです。なんというか、全体的にコクがあるというか、まろやかで食べやすいというか、もぐもぐ」

 ヒビキ「まあ、その感想であながち間違ってないと思うよ。俺もいただきまーす。パクリ、もぐもぐ……うーん、美味しい♪」

クロード「ヒビキ様、この美味しさの秘訣は一体……給食とは普通の店よりも低予算で作られているのでしょう? この味の違いは何なのですか?」

 ヒビキ「まあ、この秘訣は普通の飲食店では難しいだろうね。キッチンに来てみれば分かるよ。見てみる?」

クロード「ぜひ!」








 ヒビキ「というわけで、これが給食カレーの美味しさの秘訣だよ」

クロード「……こ、こんなことが。いつの間にかキッチンが大改造されている。そして私に目の前に、五右衛門風呂みたいに巨大な釜が……中はカレーで一杯ですね」

 ヒビキ「なんで五右衛門風呂を知っているかはさておいて、これが給食カレーの美味しさの秘密『大量調理』さ」

クロード「大量に調理すると美味しくなるのですか?」

 ヒビキ「煮込み系料理に関してはね。大量にまとめて煮込むことで材料にゆっくりと長い時間をかけて、均一に熱が伝わるようになるんだ。それに量が多いと火をとめても予熱で穏やかに加熱し続けることができる。これのおかげで肉や野菜の旨味成分が均一に溶けだし、クロードが先程感じたコクやまろやかさが出るってわけ」

クロード「大量調理にそのような効果があるとは」

 ヒビキ「これだけの量となると本場のカレー店でも難しいだろうね」

クロード「意外と貴重なんですね、給食カレーって」

 ヒビキ「その通り。だから大人は給食カレーを懐かむんだよ、もう食べられない味だから。クロードも懐かしかったでしょ」

クロード「いえ、まったく。何せ私はこれが初ですから」

 ヒビキ「あ、そうだった。大人だけどクロードは異世界人だった」

クロード「ところでヒビキ様、この大量のカレーはどうするのですか? どんなに頑張っても私達だけでは食べ切れませんよ?」

 ヒビキ「だよね。しょうがない、皆に声をかけて食べてもらうか」

クロード「それでも人数的に足りない気がします。何せ学校給食並みの量ですから」

 ヒビキ「……ヴェネくんに期待ってことで」

クロード「いやー、流石に無理でしょう……無理ですよね?」





★★★★★
その他の記念日『飛行船の日』
※1916年1月22日。
※当時の陸軍による初の国産飛行船『雄飛号』が実験飛行を行ったことに由来。

 ヴェネ「ひっひっふー、ひっひっふー」
クロード「……まさか本当に食べ切るとは」
 ヒビキ「八割はヴェネくんのお腹に入っちゃったね」
 ヴェネ「ヴェネに、不可能は、ないの、にゃっ。ひっひっふー、ひっひっふー」
クロード「あれだけ食べて腹がポッコリ膨れるでけなのはなぜでしょうか……?」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Go to the Frontier(new)

鼓太朗
ファンタジー
「Go to the Frontier」改訂版 運命の渦に導かれて、さぁ行こう。 神秘の世界へ♪ 第一章~ アラベスク王国編 第三章~ ラプラドル島編

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...