ヒビキとクロードの365日

あてきち

文字の大きさ
上 下
308 / 388
1月

1月12日『桜島の日』

しおりを挟む
 ヒビキ「というわけで、とうちゃーく!」

クロード「毎度のことながらヒビキ様の『というわけで』は唐突ですよね。しかし、本当に長い道のりでした。前日に東京からわざわざ鈍行列車で南下して、二日がかりで辿り着いたと思ったら今度は船ですから……移動だけでもう疲れましたよ」

 ヒビキ「いい大人が何言ってるのさ」

クロード「いい大人だからですよ。もう電車の景色ではしゃげる歳ではないのです」

 ヒビキ「電車に乗り慣れていない異世界人のセリフとは思えないね。各駅停車は旅の醍醐味じゃない。もっと旅行を楽しもうよ」

クロード「はぁ。それで、こんなに時間をかけて到着したここはどこなのですか? 何やら小さな島のようですが……」

 ヒビキ「正確には微妙に地続きだけどね。ここは鹿児島県にある『桜島』だよ。なんたって今日1月12日は『桜島の日』だからね」

クロード「さくらじま……大変雅な雰囲気の名前ですね。どのような由来が?」

 ヒビキ「俺達はフェリーでここまで来たけわけだけど、ほら、東の方に小高い山が見えるでしょ?」

クロード「そうですね。この島全体が山って感じで、沿岸に人の領域が広がっている感じでしょうか。あの山がどうかしたのですか?」

 ヒビキ「あれ、活火山なんだ」

クロード「活火山というと……え? もしかしてあの山は噴火するのですか?」

 ヒビキ「その通り。『桜島の日』は1914年1月12日、桜島で『大正大噴火』が始まったことにちなんで作られた記念日だよ」

クロード「のほほんと旅行するのに全く相応しくない記念日ですね……」

 ヒビキ「鹿児島市では毎年、この日に噴火を想定した防災訓練が行われるらしいよ。まあ、今年は昨日(1月11日)やっちゃったみたいだけど」

クロード「避難訓練て……もしかしてリアルに直近で噴火が危険視されている状況なのですか? あの、私達、こんなところに来て大丈夫なのでしょうか?」

 ヒビキ「確認してあるから問題ないよ。今日の桜島の噴火警戒レベルは3。活動はしているから入山規制はされるけど、観光はできるレベルだね」

クロード「噴火警戒レベル? そういうものを確認できるのですか?」

 ヒビキ「桜島は現在進行形で活動している火山だからね。基本的に24時間体制で監視されているんだ。だから旅行に行きたい人は事前に『桜島 噴火情報』とでも検索すればすぐに確認することができるんだよ」

クロード「ほぉ、それは助かりますね。とりあえず大丈夫そうで安心しました」

 ヒビキ「まあ、『大正大噴火』を含めて何度も大きな噴火を起こしている山だから心配する気持ちも理解できるけど、きちんと自分で確認すれば大丈夫だからあまり不安がらなくていいと思うよ。過ぎた心配は風評被害のもとだからね」

クロード「はい、肝に銘じます。確かに、せっかく生きた火山まで旅行に来たのですから楽しまなくては損ですね。では、手始めに何をしましょうか?」

 ヒビキ「もちろん、活火山の火口の様子を見学しようじゃないか!」

クロード「……いや、ヒビキ様? 先程自分で入山規制されていると仰っていたではありませんか。今日は噴火警戒レベル3ですよ?」

 ヒビキ「俺達のステータスなら万が一の時でも十分避難に間に合うさ。大丈夫!」

クロード「いやいやいや、そういう問題ではなくてですね。ほら、ヒビキ様が大きな声で宣言するものだから周りの視線が……」

 ヒビキ「というわけで、火口へ向けてしゅっぱ――」

????「お客さん、ちょーっとよろしいですかねぇ?」

 ヒビキ「ふえ? どちら様? ああ、観光案内の人? 何か用で……え、ちょっと来いって? なんで? 今から俺、島の観光に行くん――あ、ちょ、引っ張らないで! ク、クロードオオオオオオオオ!?」

クロード「…………まあ、当然の結果ですね。えーと、皆さん(?)も入山規制されている山に勝手に入らないようにしましょうね」




★★★★★
その他の記念日『スキー記念日』
※1911年1月12日。
※オーストリア陸軍レルヒ少佐が、新潟県高田(現・上越市)の陸軍高田歩兵第58連隊の青年将校に、日本で初めてスキーの指導を行ったことに由来。
※1994年にとある会社が制定後、遅れて全日本スキー連盟も2003年に制定。

クロード「……いや、由来がピンポイント過ぎるでしょ。いいんですかそれで?」
 ヒビキ「時期的には合ってるし、別にいいんじゃない? ……どうでも」
クロード「ヒビキ様、哀しい本音が漏れています、自重してください」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...