ヒビキとクロードの365日

あてきち

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1月

1月7日『人日の節句(七草の節句)』

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 ヒビキ「クロード、朝ご飯だよー」

クロード「はい……」

 ヒビキ「どうしたの? お腹さすりながら憂鬱そうな顔しちゃって」

クロード「いえ、何でもないのです、お気になさらず」

 ヒビキ「いやそんな如何にも『気にしてください』って表情で言われても……」

クロード「いや、本当に大したことではないのです」

 ヒビキ「だったら教えてよ」

クロード「……その、胃もたれと胸やけが」

 ヒビキ「胃もたれと胸やけ?」

クロード「年末年始の間ずっと豪勢な食事が続いていたので、とうとう私の消化器官が音を上げてしまったようです……正直あまり食欲がありません。げふっ」

 ヒビキ「クロードって体格の割には意外と小食だよね。まあ、でも大丈夫だよ。今日で大体お正月気分も終わりだから」

クロード「うう、畏まりました。なんとか、耐えてみせます……!」

 ヒビキ「そんな悲壮感を漂わせて言わなくても……はい、どうぞ」

クロード「ぐっ、いざ! ……て、あれ? これが今日の食事ですか? 粥ですが」

 ヒビキ「うん、『七草粥』だよ。今日1月7日は『人日の節句』だからね」

クロード「仁術じんじゅつ? 病人食の日ということですか?」

 ヒビキ「当たっているような間違っているような微妙な勘違いをありがとう。『人日じんじつの日』だよ。『五節句』と呼ばれる古い暦のひとつで、1月7日にこの『七草粥』を食べる風習があるんだ。だから別名『七草の節句』とも呼ばれているね」

クロード「そうなのですか。胃に優しい食事をいただけるのは、正直助かります。では、パクリ、もぐもぐもぐ……ほぉ、美味しいです」

 ヒビキ「それはよかった」

クロード「ホッとする味ですね。しかし、『七草粥』というからには七種類の草が使われているということでよいのでしょうか?」

 ヒビキ「いわゆる『春の七草』だね。『せり』『なずな』『御形ごぎょう』『繁縷はこべら』『ほとけ』『すずな』『蘿蔔すずしろ』の七種類の野草・野菜を刻んで入れた粥を『七草粥』というんだ」

クロード「この粥を食べることにどんな意味があるのですか? もぐもぐ」

 ヒビキ「その年の無病息災を願う儀式的な意味があるらしいよ。あと、クロードみたいに正月料理で疲れた胃を休ませる意味もあるみたいだね」

クロード「そうでしょうとも。皆が皆、正月料理を嬉々としてドカ食いしていたヴェネ様のようにはいかないのですよ。はぁ、七草の香りが胃に染みる」

 ヒビキ「まあ、ヴェネくんは完全に例外だよねぇ」

クロード「ところでヒビキ様、『七草粥』のことは分かりましたが、今日の記念日『人日の節句』の『人日』とは何なのですか?」

 ヒビキ「古来中国の風習から来ている言葉だね。昔の中国では、正月の1日を『鶏の日』、2日を『狗の日』、3日を『猪の日』、4日を『羊の日』、5日を『牛の日』、6日を『馬の日』といい、それぞれの日にはその動物を殺さないようにしていたんだ」

クロード「ふむふむ。それでは、7日は『人の日』ということですか」

 ヒビキ「うん。この日は犯罪者への刑罰を行わないようにしていたそうだよ」

クロード「正月におけるある種の恩赦ということでしょうか? 年明けから罰など受けたくありませんしね」

 ヒビキ「それは罰を与える方も同じかもね。お正月から血生臭い話は勘弁したいもの。年明けくらい七草粥を食べてほっとした方がいいに決まってるよ」

クロード「それは間違いありませんね。おや、話しているうちにお椀が空っぽに」

 ヒビキ「よかった、全部食べられたみたいだね。今日はそれくらいにして――」

クロード「あ、あの、ヒビキ様……おかわりをいただいてもよろしいでしょうか?」

 ヒビキ「……胃もたれと胸やけは?」

クロード「七草粥は凄いですね、食べたらあっという間にすっきりしました!」

 ヒビキ「いや、いくら七草粥でもそんな即効性は……」

クロード「おかわりお願いします! 粥を一杯食べたくらいで満足できるほど成人男性の胃袋は小さくないので!」

 ヒビキ「……まあ、体調が戻ったっていうんならいいんだけどさ……俺も食べよ」




★★★★★
その他の記念日『爪切りの日』
※新年になって初めて爪を切る日。
※七草を浸した水に爪をつけ、柔らかくして切る。
※そうすると、その年は風邪をひかないと言われている。

 ヒビキ「というわけでクロードの爪を切ってあげよう」
クロード「つ、爪を切る!? ヒ、ヒビキ様が私の爪を!? ……は、破廉恥な!」
 ヒビキ「……どこからどう発想を飛ばすと破廉恥になるんだろう?」
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