ヒビキとクロードの365日

あてきち

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12月

12月28日『官公庁御用納め・仕事納め』

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クロード「ただいま帰りました、ヒビキ様」

 バルス「おう、おかえり。はぁ、こたつがあったけ~」

クロード「……なぜバルス殿が我が家にいるのですか?」

ジュエル「お邪魔しています、クロード様」

 ヒビキ「あ、お帰り、クロード。今お茶を淹れるところだからクロードもどう?」

クロード「ジュエル殿もいらっしゃっていたのですか。あ、お茶いただきます」

ジュエル「最近手に入った紅茶で、ヒビキ様にお裾分けしようと思いまして」

 ヒビキ「一緒にお菓子ももらっちゃったんだ。ありがとう、ジュエルさん」

クロード「それはそれは、ありがとうございます、ジュエル殿」

 バルス「おい、俺も来てるんだが?」

ジュエル「バルス様は、いつの間にかついてきてただけではありませんか。その図体でよく隠れ切ったものですわ」

 バルス「ちゃ、ちゃんと手土産は持ってきただろう?」

ジュエル「それで持ってくるのがワインって……」

 ヒビキ「俺、まだ十七歳だから飲めないね」

 バルス「いや、でも、こっちじゃ十五で成人だし……」

 ヒビキ「ごめんね、バルス兄貴。お酒は二十歳になってからいただくね」

クロード「まあ、ワインなら数年置いた方が美味しくなるでしょうけど。それはそうと、お二人ともこんな昼間からうちに来てよかったのですか? 冒険者ギルドは?」

ジュエル「ご安心ください。もう年末ですもの。ギルドもお休みですわ」

 ヒビキ「今日12月28日は『官公庁御用納め・仕事納め』の日だからね」

クロード「仕事納め? 要するに、今日で今年の仕事は終わりということですか?」

 ヒビキ「1873年から、官公庁は12月29日から1月3日までを休暇とすることが法律で定められていて、12月28日が仕事納めとなっているんだ。民間企業でもこれに倣っているケースは多いらしいよ。サービス業は無理だけど」

クロード「ほぉ、そうなのですか……ん? だったらむしろ、今日は最後の仕事があるのでは?」

 バルス「ち、ち、ち。クロード、そんなことも分かんねえのか?」

クロード「……ケンカを売っていると解釈しても?」

 ヒビキ「ケンカは禁止! 相変わらずバルス兄貴相手だと沸点が低いな。バルス兄貴もクロードを煽らないように」

クロード「も、申し訳ございません」

 バルス「すまん、つい、な……」

ジュエル「ふふふ。クロード様、正確には、今年は12月27日が仕事納めですわ」

クロード「どういうことです?」

 ヒビキ「通常は12月28日だけど、それが土・日曜日の場合、直前の金曜日が仕事納めになるんだ。今年の12月28日は土曜日だから昨日ってわけ」

 バルス「つーわけだ。はー! ようやく面倒な机仕事から解放されたー!」

ジュエル「私もこれで数日はバルス様の面倒をみなくて済んでほっとしています」

クロード「それはそれは。お二人ともご苦労様です。まあ、今日くらいはバルス殿も我が家への滞在を許してあげましょう。その代わり、年始は来ないでくださいね」

 バルス「来るし! 絶対に来るからな!」

 ヒビキ「クロード、意地悪言わないの」

クロード「ふふ、申し訳ございません」

ジュエル「来年も楽しい一年になるといいですわね……ところでクロード様」

クロード「はい、何でしょう?」

ジュエル「……折角のこたつですのに、なぜ足を入れずに座っているのですか?」

 バルス「何? 本当だ。何やってんだ、お前」

クロード「私はこたつに入らないと決めているので。お気になさらず」

 バルス「いや、でもよ……」

クロード「お気になさらず」

 バルス「お、おう……意味わかんねぇ」

 ヒビキ「なんで頑なにこたつを拒むかな? お正月には丸くなって入ってよね」

クロード「……ヒビキ様、それはネコです」

★★★★★
その他の記念日『鏡餅の日』
※多くの地域ではこの日に鏡餅をつく……らしい。

 ヒビキ「なんで頑なにこたつを拒むかな? お正月には丸くなって入ってよね」
クロード「……ヒビキ様、それはネコです」
ジュエル「ドッキーン!」
 バルス「ん? どうした、ジュエル?」
ジュエル「な、なんでもありませんわ!? ほほほほほほ」
 バルス「??? なんだぁ?」
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