ヒビキとクロードの365日

あてきち

文字の大きさ
上 下
274 / 388
12月

12月9日『地久節(皇后誕生日)』

しおりを挟む
 ヒビキ「というわけで、今年から『地久節』は本日12月9日となりました!」

クロード「ちきゅうせつ? ヒビキ様の『世界』の時節か何かですか?」

 ヒビキ「『地球』じゃなくて『地久』だよ。中国春秋時代の思想家・老子が書いたと伝えられている書物『老子道徳経』にある『天長地久』という言葉が由来だね」

クロード「てんちょうちきゅう……どういう意味なのです?」

 ヒビキ「天地が永久に不変であるように、物事がいつまでも変わらずに継続されるって意味だよ。訓読すると『天は長く地は久し』だね」

クロード「ふむふむ、不変で長く続くという意味から転じて、国家の象徴の対である皇后陛下の誕生日が長く続きますようにという想いが込められているのですね」

 ヒビキ「多分としか言えないけど、そんな感じかもね。実際、天皇誕生日は『天長節』というし、二つで一つの記念日みたいな?」

クロード「となると、やはり長寿祈願で命名された記念日なのでしょうか」

 ヒビキ「公式に命名の由来が発表されてないから想像でしか語れないのがちょっと残念だけどね。あ、ちなみに、紹介しておいてなんだけど、現代では『天長節』とも『地久節』ともいわず、普通に天皇誕生日・皇后誕生日というのが一般的だよ」

クロード「……今までの説明は何だったのでしょうか?」

 ヒビキ「だってカッコイイじゃない『地久節』とか『天長節』の方が。第二次世界大戦後に、昭和天皇が『人間宣言』を行ったのを機に改称されたんだよ」

クロード「人間宣言? 天皇陛下は人間ではなかったのですか?」

 ヒビキ「第二次世界大戦に敗戦した日本で、1946年1月1日に発布された昭和天皇の詔書のことだね。天皇が現人神であることを自ら否定したとされる宣言だよ」

クロード「??? 天皇は現人神だったのですか? ヒビキ様みたいに?」

 ヒビキ「そこは俺自身も否定したいところだからそっとしておこうね。『人間宣言』は当時日本を占領していたGHQが推し進めた一種のパフォーマンスだよ」

クロード「何がしたかったのでしょうか……?」

 ヒビキ「日本神話によると、天皇は日本を創造した神々の子孫とされているんだ。つまり、神々の子孫である天皇陛下もまた神であり……GHQはその思想を否定させたかったみたい」

クロード「えっと……天皇陛下は本当に神なのですか?」

 ヒビキ「重要なのは『天皇は現人神である、と日本国民は信じている』とGHQが考えていたことかな? 日本と西欧の間にある宗教観の違いから生じた誤解ともいわれているけど」

クロード「??? 何だか話がどんどん難しくなってきたのですが……」

 ヒビキ「一神教と多神教の考え方の違いだね。日本の『カミ』と西欧の『God』を同一視されたくなかったのでは、とも言われているけど。まあ、そこのところを詳しく知りたい人は自分で調べてみようってことで」

クロード「頭に疑問符だけが残る話の切り方ですね、ヒビキ様」

 ヒビキ「こんな短い文字数で語り切れる内容じゃないんだよ、この話は。大体、今日のメインテーマは『地久節』なのに、いつの間にか話が脱線してるじゃないか」

クロード「言われてみればそうでした。『地久節』……今は普通に『皇后誕生日』でしたか。確か今年代替わりがあったわけですから……」

 ヒビキ「昨年までは現上皇后美智子様の誕生日10月20日がそうだったけど、今年からは皇后雅子様の誕生日、つまり今日12月9日が『地久節(皇后誕生日)だよ」

クロード「何かお祝いの催しなどあるのでしょうか?」

 ヒビキ「もちろん内々ではお祝いするんだろうけど、パッと調べた限りでは大きなイベントの情報はなかったかな」

クロード「おや、それは少々寂しいですね」

 ヒビキ「まあ、特に今年は新天皇の即位の儀式とかで大変だっただろうし、自分の誕生日くらいゆっくりしてもらえばいいんじゃないかな?」

クロード「国家の象徴たる天皇陛下の奥方の誕生日を『ゆっくり』ですか……?」

 ヒビキ「……いわゆる王妃様の誕生日ってことになるのかな? ……ゆっくり?」

クロード「……あまりできる気がしませんね」

 ヒビキ「え、えーと、皇后様、誕生日おめでとうございまーす!」

クロード「無理矢理締めにかかりましたね。おめでとうございます」





★★★★★
その他の記念日『国際腐敗防止デー』
※2003年12月9日。
※『腐敗の防止に関する国際連合条約』が調印されたことを記念して。

クロード「食品衛生関連の条約でしょうか……?」
 ヒビキ「政治の腐敗の方の『腐敗』だね。テロの防止とか横領の廃絶とか」
クロード「ああ、そういう……しかし、こんなもので腐敗がなくなるのでしょうか」
 ヒビキ「まあ、一種の抑止力ってことで。結局大事なのはモラルだよ、モラル」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...