273 / 388
12月
12月8日『針供養』の日
しおりを挟む
クロード「さてさて、ヒビキ様の国はともかくこちらは雪が積もったせいで気温もぐっと下がってしまいましたね。普段から薄着の私もさすがに何か羽織りたいところではありますが……」
※クロードは引き出しから冬服を取り出した、のだが――。
クロード「ふむ、あまりに長く使っていなかったせいかほつれが目立ちますね。仕方がありません、ササッと直しますか。ふふん、料理はちょーっとだけ苦手ですが、裁縫なら冒険者をしていた頃から装備の手直しなどを行っていたので多少の心得があります。ちょちょいと直して……おや、糸はありましたが針が見当たりませんね?」
ヒビキ「クロード、俺ちょっと日本に行ってくるね」
クロード「おや、ヒビキ様。こんな雪の日にお出かけですか?」
ヒビキ「れれれのれー、と」
クロード「ヒビキ様、それ言うの好きですよね。それで、どこへ行くのですか?」
ヒビキ「京都は嵯峨の法輪寺だよ。今日12月8日は『針供養』の日だからね」
クロード「針供養? 針が見当たらないと思ったらヒビキ様が持っていたのですか。というか針を供養するって、どういうことですか?」
ヒビキ「詳しい起源は不明だけど、多分中国の古い慣わしが日本に伝わってできた風習だよ。大体9世紀後半には既に日本の一部の地域で行われていたんだって。折れたり曲がったり、錆びたりして使えなくなった縫い針を近くの神社に収めて供養することで、裁縫の上達を祈ったらしいよ」
クロード「裁縫の上達を。しかし、なんでまた今日なのです?」
ヒビキ「年末の12月8日を事納め、年が明けた2月8日を事始めとして、『針供養』は年に2回行われるんだよ。ちなみに事納め・事始めするのは農耕のことだよ」
クロード「農耕のことなら針仕事は関係ないのではありませんか?」
ヒビキ「この両日はつつしみを持って過ごす日とされていて、この日は針仕事も休むべきと考えられていたんだって」
クロード「ああ、だからその日に合わせて針供養もしちゃえということに」
ヒビキ「なったかどうかは知らないけど、そういうことだね。ついでに言うと、年に2回ある『針供養』だけど、現代では地域によってどちらか一方の日だけ行うことが多いそうだよ。12月8日が一般的なのは関西地方や九州地方らしい」
クロード「ああ、だから京都の寺に行くのですね」
ヒビキ「うん。といっても、法輪寺は2月8日にも針供養をしてくれるんだけど」
クロード「そうなのですか?」
ヒビキ「関東地方や東北地方の一部でも両方の日付けで供養してくれる地域もあるらしいから、地域性だけでは語れないみたいだよ」
クロード「さすがは古い風習といったところでしょうか。奥が深いです」
ヒビキ「あ、そろそろ急がないと遅れちゃうや。それじゃ、行ってくるね」
クロード「ヒビキ様、私も一緒に行きますよ」
ヒビキ「そんなほつれだらけの服を着て?」
クロード「うっ!」
ヒビキ「針供養が終わったら新しい針を買ってくるから今日は留守番しててよ」
クロード「ぐぬううう、どうして我が家には針が一本も残っていないのだ」
ヒビキ「ハーフミスリルアーマードベアの革で防具作ろうと思ったら、針全部おしゃかになっちゃったんだよね。酷い話だよ、ホント」
クロード「――て、ヒビキ様のせいですか!」
ヒビキ「行ってきまーす!」
クロード「あ、逃げないでください、ヒビキ様ー!」
★★★★★
その他の記念日『太平洋戦争開戦の日』
※1941年12月8日。
※日本海軍がアメリカ太平洋艦隊の根拠地・ハワイの真珠湾を急襲。
※太平洋戦争が始まった。
ヒビキ「ただいまー」
クロード「おかえりなさい、ヒビキ様。針は買ってきてくれましたか?」
ヒビキ「うん、買ってきたよ、ミシン針」
クロード「……あの、『みしん』なんて私、使えないのですが」
ヒビキ「うん、知ってる。というかうちにはミシン置いてないしね」
クロード「は? だったらなぜ……」
ヒビキ「これでしばらく一人で外出できるかなって」
クロード「確信犯!?」
※クロードは引き出しから冬服を取り出した、のだが――。
クロード「ふむ、あまりに長く使っていなかったせいかほつれが目立ちますね。仕方がありません、ササッと直しますか。ふふん、料理はちょーっとだけ苦手ですが、裁縫なら冒険者をしていた頃から装備の手直しなどを行っていたので多少の心得があります。ちょちょいと直して……おや、糸はありましたが針が見当たりませんね?」
ヒビキ「クロード、俺ちょっと日本に行ってくるね」
クロード「おや、ヒビキ様。こんな雪の日にお出かけですか?」
ヒビキ「れれれのれー、と」
クロード「ヒビキ様、それ言うの好きですよね。それで、どこへ行くのですか?」
ヒビキ「京都は嵯峨の法輪寺だよ。今日12月8日は『針供養』の日だからね」
クロード「針供養? 針が見当たらないと思ったらヒビキ様が持っていたのですか。というか針を供養するって、どういうことですか?」
ヒビキ「詳しい起源は不明だけど、多分中国の古い慣わしが日本に伝わってできた風習だよ。大体9世紀後半には既に日本の一部の地域で行われていたんだって。折れたり曲がったり、錆びたりして使えなくなった縫い針を近くの神社に収めて供養することで、裁縫の上達を祈ったらしいよ」
クロード「裁縫の上達を。しかし、なんでまた今日なのです?」
ヒビキ「年末の12月8日を事納め、年が明けた2月8日を事始めとして、『針供養』は年に2回行われるんだよ。ちなみに事納め・事始めするのは農耕のことだよ」
クロード「農耕のことなら針仕事は関係ないのではありませんか?」
ヒビキ「この両日はつつしみを持って過ごす日とされていて、この日は針仕事も休むべきと考えられていたんだって」
クロード「ああ、だからその日に合わせて針供養もしちゃえということに」
ヒビキ「なったかどうかは知らないけど、そういうことだね。ついでに言うと、年に2回ある『針供養』だけど、現代では地域によってどちらか一方の日だけ行うことが多いそうだよ。12月8日が一般的なのは関西地方や九州地方らしい」
クロード「ああ、だから京都の寺に行くのですね」
ヒビキ「うん。といっても、法輪寺は2月8日にも針供養をしてくれるんだけど」
クロード「そうなのですか?」
ヒビキ「関東地方や東北地方の一部でも両方の日付けで供養してくれる地域もあるらしいから、地域性だけでは語れないみたいだよ」
クロード「さすがは古い風習といったところでしょうか。奥が深いです」
ヒビキ「あ、そろそろ急がないと遅れちゃうや。それじゃ、行ってくるね」
クロード「ヒビキ様、私も一緒に行きますよ」
ヒビキ「そんなほつれだらけの服を着て?」
クロード「うっ!」
ヒビキ「針供養が終わったら新しい針を買ってくるから今日は留守番しててよ」
クロード「ぐぬううう、どうして我が家には針が一本も残っていないのだ」
ヒビキ「ハーフミスリルアーマードベアの革で防具作ろうと思ったら、針全部おしゃかになっちゃったんだよね。酷い話だよ、ホント」
クロード「――て、ヒビキ様のせいですか!」
ヒビキ「行ってきまーす!」
クロード「あ、逃げないでください、ヒビキ様ー!」
★★★★★
その他の記念日『太平洋戦争開戦の日』
※1941年12月8日。
※日本海軍がアメリカ太平洋艦隊の根拠地・ハワイの真珠湾を急襲。
※太平洋戦争が始まった。
ヒビキ「ただいまー」
クロード「おかえりなさい、ヒビキ様。針は買ってきてくれましたか?」
ヒビキ「うん、買ってきたよ、ミシン針」
クロード「……あの、『みしん』なんて私、使えないのですが」
ヒビキ「うん、知ってる。というかうちにはミシン置いてないしね」
クロード「は? だったらなぜ……」
ヒビキ「これでしばらく一人で外出できるかなって」
クロード「確信犯!?」
0
お気に入りに追加
121
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Go to the Frontier(new)
鼓太朗
ファンタジー
「Go to the Frontier」改訂版
運命の渦に導かれて、さぁ行こう。
神秘の世界へ♪
第一章~ アラベスク王国編
第三章~ ラプラドル島編

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる