ヒビキとクロードの365日

あてきち

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11月

11月19日『国際男性デー』

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クロード「ヒビキ様、今日の記念日は何ですか?」

 ヒビキ「クロードから聞いてくるなんて珍しいね。今日11月19日は『国際男性デー』だよ」

クロード「男性の日ですか。具体的にどんな記念日なのでしょう?」

 ヒビキ「というわけで、今日は素敵なゲストを呼んでいます!」

クロード「いつもながら唐突ですね」

エマリア「えっと、こんにちは……?」

 亜麻音「『国際男性デー』? 全然聞いたことない記念日ね」

クロード「エマリア殿に亜麻音殿? なぜ女性がゲストなのです?」

エマリア「何よクロード。男性の記念日だからって女性は無視していいの? そういうところ男らしくないと思うわ。男ならもっと大きな器を持たなきゃダメよ」

 亜麻音「ホントね。細かいところばかり気にする男はモテないわよ」

クロード「ぐう、なんて酷い言い草……心がグサリと傷つきました」

 ヒビキ「こういうことのために天然ディスリっ子の二人を呼んだのさ」

エマリア「こういうこと? どういう意味よ、ヒビキ」

 ヒビキ「『国際男性デー』は、男性の役割や健康について考える記念日なんだ」

 亜麻音「それとアタシ達と何の関係があるのよ?」

 ヒビキ「女性に『女性らしさ』を求める行為は性差別だっていう主張は聞いたことあるでしょ?」

エマリア「そうなの?」

 亜麻音「異世界ではどうか知らないけど、確かにそういう話は聞くわね」

 ヒビキ「それは男性も同じなんだよ。例えば男性に『一家の大黒柱』という役割を強制したり、専業主夫を奇異の目で見たりする行為は、一種の性差別に当たるってこと。現代社会において、女性に古めかしい『女性らしさ』を押し付けてはいけないように、男性に昔からの『男性らしさ』を求める行為もまた性差別に当たるってわけ」

クロード「ということは、先程私が二人から男らしくないとかモテないとか言われたのも、ある種の性差別に当たるということですか?」

エマリア&亜麻音「「うっ!」」

 ヒビキ「そう感じる人は少なからずいるってことだね。性別を理由にして相手へ価値観を押し付ける行為は差別だと言われる時代なんだよ、現代社会は」

 亜麻音「……まあ、そうね。確かに、日本で男性が育児休暇を取りにくい現状も、男性は子育てより働けっていう、古い価値観の名残だもんね。『国際男性デー』はそういう今まで当たり前のように思っていた男性に対する価値観に気付く日なのね」

エマリア「でも、ヒビキの世界って昔は『男尊女卑』というの? 男性が社会的に優位に立っていた世界なんでしょ? 男性が差別されることなんてあるのかしら?」

 ヒビキ「色々改善されているとはいえ、今でも男性の方が社会的に優位である事実は変わっていないよ。それでも男性ゆえに求められてきた役割ってものが昔から存在していし、『男性だから』ってだけで押し付けられてきたものもあるんだよ。例えば武家で家督を継げるのは基本的に男性だけだった。でも、優遇された権利であると同時に義務でもあったわけだね。本人が求めていなくても男性だからという理由で重い責任を背負わなければならないわけだし」

エマリア「そういう風にも考えられるわね」

 亜麻音「世間では女性の差別問題ばかり注目されるけど、男も男なりに苦労があるってことね。女性差別をなくすなら、男性の方も改善しなきゃフェアじゃないわ」

クロード「『国際男性デー』はそのための一歩ということですか。それで、ヒビキ様の国ではこの記念日にどのような取り組みがなされているのですか?」

 ヒビキ「パッと調べた範囲だと特別なイベントの有無は確認できなかったかな。正直、まだまだ認知度の低い記念日だし、『国際男性デー』を正式に記念日として認めている36ヶ国の中に日本は含まれていないしね」

 亜麻音「ダメじゃない、日本。育休男子が増えないわけよ」

 ヒビキ「でも、『国際男性デー』に合わせてアンケート調査をしているところはあるみたいだよ。最近の若者は『男性らしさ』を求められることに生きづらさを感じているんだって」

エマリア「ヒビキも最近の若者に含まれると思うけど……何が生きづらいの?」

 ヒビキ「二十代男性に聞いた、男性ゆえの生きづらさトップ3。第三位は『力仕事』、第二位は『泣くな。弱みを見せるな』」

クロード「確かにいかにも男性に求められる『男らしさ』ですね」

エマリア「でも力があって頼りがいのある男性に魅力を感じるのも事実じゃない?」

 亜麻音「あくまで強制するなってことでしょ? それはともかく、これを押しのけた第一位って何かしら? ちょっと想像できないわね」

エマリア「そうね。ヒビキ、一位は何なの?」



 ヒビキ「第一位は……『デートの支払いを強制されること。男性がリードすべきという風潮』だって」


エマリア「……」
 亜麻音「……」


 ヒビキ「二人とも黙りこくってどうしたの? クロードはやたら頷いてるけど」

クロード「分かります。男性も女性も働いて賃金を得ている社会で、男性だけが一方的に金銭的負担を強いられる理由は理解できません。男女平等を謳うのなら、このあたりの意識を改善していただかなければならないと思います」

 ヒビキ「まあ、その辺は付き合ってる者同士で話し合ってねとは思うけど。二人は黙ったままだけど、本当にどうかした?」

エマリア「……いえ、今日の話を聞いてひとつ分かったことがあるなと思って」

 ヒビキ「分かったこと? 亜麻音も頷いてるみたいだけど、何が分かったの?」

 亜麻音「……そうね。とりあえず――」

 ヒビキ「とりあえず?」







 亜麻音「――クロードはモテないなってことがはっきりしたわ」

クロード「なぜっ!?」

エマリア「その辺が分からないからモテないのよ。『男らしさ』と『男のプライド』は似て非なるものだと知りなさい」

 ヒビキ「これは個人の感想であり、普遍的事実ではありません。人によって考え方は異なりますので、一人の金髪美人巨乳エルフの意見として受け止めていただ――」

クロード「ヒビキ様はヒビキ様で何を仰っているのですか!?」

 亜麻音「次はもっと軽いテーマで呼んでほしいものね。じゃ、アタシ達帰るから」

クロード「ちょ、これで終わりですか!? 結局、なんで私がモテないんですかー!?」




★★★★★
その他の記念日『農協記念日』
※1947年11月19日
※農業協同組合法が公布され、全国農業協同組合中央会(JA全中)が制定された。

 ヒビキ「最初はこっちが本テーマになる予定だったらしいよ」
エマリア「ふーん、変更して正解だったんじゃない?」
 亜麻音「ちょっと堅苦しいテーマよね。女子高生が関わるテーマじゃないわよ」
クロード「……私としてはダメージがないのでこちらの方がよかったです」
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