ヒビキとクロードの365日

あてきち

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11月

11月12日『洋服記念日』

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クロード「ヒビキ様、言われた通りテラダイナスでのフットマン姿になりましたが、一体何のために……おや? ヒビキ様、その恰好は……?」

 ヒビキ「じゃじゃーん、似合う?」

クロード「正直に申し上げれば、あまり似合っていませんね。服に着せられている感が漂っています。何ですか、その服は?」

 ヒビキ「これは江戸幕府最後の将軍『徳川慶喜』が、フランスのナポレオン三世から贈られたという司令官服だよ。今日11月12日は『洋服記念日』だからね」

クロード「『洋服記念日』? 服の記念日ですか?」

 ヒビキ「日本古来の伝統的民族衣装のことを『和服』っていうんだ。夏祭りに来た浴衣とか、袴や振袖も和服だね。それに対して今俺が来ているものや、クロードが来ている燕尾服なんかは、西洋文化の中から生まれた服、つまり『洋服』というんだ」

クロード「今日はその『洋服』の記念日ということですか?」

 ヒビキ「その通り。……それは1872年(明治5年)旧暦11月12日のことです」

クロード「むっ、出てきましたね旧暦」

 ヒビキ「当時の太政官布告で『礼服ニハ洋服ヲ採用ス』という布告がなされたことで、正式な場での服装を洋服にすることが決定されたんだ。今日はそれにちなんだ記念日だね。それ以降、警察官や鉄道員、郵便配達員などの国営組織の服装も洋装化していったんだ」

クロード「和服ではダメだったのですか?」

 ヒビキ「当時は西洋の列強諸国の影響が大きかったから、合わさざるを得なかったんだと思うよ。この布告の一年前、1871年には散髪脱刀令が出されて髷の文化もなくなっていた。これからの生活スタイルに和装が合わなくなり始めていたんだ」

クロード「それでは、ここから一気に服装の西洋化が進んだのですか?」

 ヒビキ「と言いたいところだけど、そう簡単にはいかないよ」

クロード「つまり、和服はしばらく続いたと」

 ヒビキ「正式な場では洋装をするよう布告はでたけど、普段着まで洋服にしろとは言われていなかったからね。現代では洋装の方が一般的だけど、布告が出た当時はまだまだ和装が一般的だったから、仕事を終えて帰宅したら和服に着替えるという人は当時まだまだ多かった。特に女性の洋装化は男性よりもずっと遅かったみたい」

クロード「女性の方がファッションにはうるさそうですが、そういうものですか」

 ヒビキ「当時は特に男性が優先されていただろうし、正式な場に出る女性の数も少なかったんじゃないかな。一部の上流階級では洋装化が進んでいたけど、一般的には和服がまだまだ礼装たったらしいよ。それも大正デモクラシーの影響で徐々に変わっていったみたいだけどね」

クロード「文化の変遷にはやはりそれなりの時間が必要なのですね」

 ヒビキ「そゆこと……あ」

クロード「どうしたのですか?」

 ヒビキ「いや、そういえば俺達しかいないなって。『洋服記念日』なんだから洋装の女性にも登場してもらえばよかった」

クロード「今更呼ぶのも……えっと、着替えますか? 様?」

 ヒビキ「絶対にイヤ」

★★★★★
その他の記念日『皮膚の日』
※日本臨床皮膚科医会が1989年に制定。
※『いい皮膚』=『いい(11)ひ(1)ふ(2)』の語呂合わせ。

クロード「『いい皮膚』って……この記念日を作って何をしたかったのでしょう?」
 ヒビキ「クロードは……皮膚、見えないね。それじゃあ肉球を……」
クロード「ふっ」
 ヒビキ「何、そのドヤ顔? ……なんてこと。クロードの手、肉球ないし!」
クロード「私、あくまで獣なので(足の裏にはあるけど絶対に言わない)」
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