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11月
11月7日『鍋の日』
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クロード「ふぅ、本当に夜は寒くなってしまいましたね。こんな日の夕食は何か体の温まるものが食べたいものです」
ヒビキ「希望にお応えして今日の夕食はこちらです!」
クロード「ほぉ、立ち昇る湯気が心地よい。目の前で食べ物がぐつぐつ煮える様子を見ると食欲がわいてきますね。ところでこれは何という料理ですか? ごった煮?」
ヒビキ「何その情緒のない料理名は。鍋でしょ、鍋!」
クロード「鍋? 確かに土鍋で食べ物を煮ていますが、料理名が『鍋』?」
ヒビキ「う、言われてみれば……総菜を食器に移さずに、調理に用いた鍋に入れたままの状態で食卓に供される料理を『鍋物』、あるいは『鍋』と呼ぶんだ」
クロード「え? 取り分けないのですか?」
ヒビキ「もちろん自分の皿に入れるけど、鍋を囲んでみんなで好きなように自分の皿によそって食べるんだよ。全員が同じ鍋から料理を取って食べることから、一緒に鍋をした人たちの間にはある種の連帯感が生まれるらしい。お相撲さんのちゃんこ鍋なんかがいい例だね」
クロード「言われてみればそんな気もしますね。冒険者パーティーの野営などで実施してもいいかもしれません。まあ、そんな余裕があればの話ですが」
ヒビキ「俺達はともかく、普通の冒険者の野営ってもっと簡素らしいしね」
クロード「うちはヒビキ様の『複製転写』のおかげで食料不足の心配もないですし、『診療所』があるので野宿すら必要ありません。見張りいらずは便利すぎますよ」
ヒビキ「なんだろう、褒められているようで呆れられているような言い草」
クロード「私のこれまでの冒険者人生を全否定するかのような能力ですので愚痴のひとつも言いたくなります。私のこれまでの苦労は一体……と。まあ、ともかくそろそろ鍋をいただきましょう。お腹が減りました」
ヒビキ「そうだね。そろそろ頃合いみたいだし、それじゃあ、いただきます!」
クロード「いただきます。パクリ、はふはふ、うーむ美味し。一緒に煮込んだほかの具材の風味が染み込んでいますね」
ヒビキ「そうだね、はふはふ、熱々の豆腐が美味しいや」
クロード「はふはふ、蟹に鯛、魚肉のつみれに鶏肉のつくねと節操がありませんが、不思議と調和が取れています。あ、ネギを追加してもよろしいですか?」
ヒビキ「俺は鍋奉行じゃないから好きに入れてくれて構わないよ」
クロード「鍋奉行?」
ヒビキ「鍋って具材を適当に放り込んでいるように見えるけど、具材を入れる最適な順序や位置、食べ頃なんかが存在するんだ。鍋奉行っていうのは、そういう鍋の食べ方を細かく仕切る人のことだよ。周りが許容できるなら頼もしい存在だけど、そうでないなら……」
クロード「とりあえず、ヒビキ様が鍋奉行でなくて助かりました。さてと、ネギをドバドバッと……そういえば、鍋が美味しくてすっかり忘れていましたが、今日の記念日の説明をしなくてよいのですか?」
ヒビキ「はふはふ。あ、そういえばまだ言ってなかった。今日11月7日は『いい鍋』=『いい(11)な(7)べ』にちなんで『鍋の日』だよ。鍋つゆでおなじみ、食品メーカーの『ヤマキ』が制定したんだ」
クロード「ということは、今回の鍋のだしはそのヤマキのものを?」
ヒビキ「もちろん。ちゃんとスーパーでどどんと大売り出ししていた鍋の素を……『ミ〇カン』? ……あれ?」
クロード「……ヒビキ様」
ヒビキ「い、いやあ、たまにはそういうこともあるよ。うんうん、あるある。それよりも鍋を楽しもうじゃないか。この後は締めに雑炊を用意してあるか……」
クロード「どうされたのですか、ヒビキ様? 鍋を凝視したまま固まって。鍋がどうかしまし……な、鍋が……」
ヒビキ「……なんで鍋がこんなに真っ黒になって紫色の泡を噴いているの?」
クロード「い、一体何ゆえこのような……」
ヒビキ「……はっ! ク、クロード、鍋にネギをドバドバッて……!?」
クロード「え? い、いやいやいや! だって鍋にネギをドバドバッと入れただけですよ!? 私は何もしていません!」
ヒビキ「それ以外考えられないじゃないか! ぐううう、まさかネギを追加で入れるだけでもこんなことになるなんて……締めの雑炊がーーーーー!」
クロード「えぇ? 私が悪いんですか……?」
【技能スキル『鑑定』を行使します】
【 名 前 】かつて鍋だった何か
【 備 考 】鉄の胃袋をも撃滅する謎の鍋料理(?)。
味は究極的美味しい可能性がある。あくまで可能性。
七つの大罪『暴食』的な能力があっても蹂躙されるので要注意。
★★★★★
その他の記念日『紀州山の日』
※和歌山県が1994年に制定。
※紀州の山村ではかつて旧暦11月7日に山の神に感謝する祭りがあったことから。
※山林に対する理解を深め、山と人が共生する山村づくりを啓発する記念日。
ヒビキ「クロードはもう料理だけで世界を救えるんじゃないかな?」
クロード「もしくは世界を滅ぼしてしまうのでしょう……」
ヒビキ「……この設定、絶対に本編には持ち込まないでね?」
クロード「それは作者に言ってください……本当に頼みますよ?」
ヒビキ「希望にお応えして今日の夕食はこちらです!」
クロード「ほぉ、立ち昇る湯気が心地よい。目の前で食べ物がぐつぐつ煮える様子を見ると食欲がわいてきますね。ところでこれは何という料理ですか? ごった煮?」
ヒビキ「何その情緒のない料理名は。鍋でしょ、鍋!」
クロード「鍋? 確かに土鍋で食べ物を煮ていますが、料理名が『鍋』?」
ヒビキ「う、言われてみれば……総菜を食器に移さずに、調理に用いた鍋に入れたままの状態で食卓に供される料理を『鍋物』、あるいは『鍋』と呼ぶんだ」
クロード「え? 取り分けないのですか?」
ヒビキ「もちろん自分の皿に入れるけど、鍋を囲んでみんなで好きなように自分の皿によそって食べるんだよ。全員が同じ鍋から料理を取って食べることから、一緒に鍋をした人たちの間にはある種の連帯感が生まれるらしい。お相撲さんのちゃんこ鍋なんかがいい例だね」
クロード「言われてみればそんな気もしますね。冒険者パーティーの野営などで実施してもいいかもしれません。まあ、そんな余裕があればの話ですが」
ヒビキ「俺達はともかく、普通の冒険者の野営ってもっと簡素らしいしね」
クロード「うちはヒビキ様の『複製転写』のおかげで食料不足の心配もないですし、『診療所』があるので野宿すら必要ありません。見張りいらずは便利すぎますよ」
ヒビキ「なんだろう、褒められているようで呆れられているような言い草」
クロード「私のこれまでの冒険者人生を全否定するかのような能力ですので愚痴のひとつも言いたくなります。私のこれまでの苦労は一体……と。まあ、ともかくそろそろ鍋をいただきましょう。お腹が減りました」
ヒビキ「そうだね。そろそろ頃合いみたいだし、それじゃあ、いただきます!」
クロード「いただきます。パクリ、はふはふ、うーむ美味し。一緒に煮込んだほかの具材の風味が染み込んでいますね」
ヒビキ「そうだね、はふはふ、熱々の豆腐が美味しいや」
クロード「はふはふ、蟹に鯛、魚肉のつみれに鶏肉のつくねと節操がありませんが、不思議と調和が取れています。あ、ネギを追加してもよろしいですか?」
ヒビキ「俺は鍋奉行じゃないから好きに入れてくれて構わないよ」
クロード「鍋奉行?」
ヒビキ「鍋って具材を適当に放り込んでいるように見えるけど、具材を入れる最適な順序や位置、食べ頃なんかが存在するんだ。鍋奉行っていうのは、そういう鍋の食べ方を細かく仕切る人のことだよ。周りが許容できるなら頼もしい存在だけど、そうでないなら……」
クロード「とりあえず、ヒビキ様が鍋奉行でなくて助かりました。さてと、ネギをドバドバッと……そういえば、鍋が美味しくてすっかり忘れていましたが、今日の記念日の説明をしなくてよいのですか?」
ヒビキ「はふはふ。あ、そういえばまだ言ってなかった。今日11月7日は『いい鍋』=『いい(11)な(7)べ』にちなんで『鍋の日』だよ。鍋つゆでおなじみ、食品メーカーの『ヤマキ』が制定したんだ」
クロード「ということは、今回の鍋のだしはそのヤマキのものを?」
ヒビキ「もちろん。ちゃんとスーパーでどどんと大売り出ししていた鍋の素を……『ミ〇カン』? ……あれ?」
クロード「……ヒビキ様」
ヒビキ「い、いやあ、たまにはそういうこともあるよ。うんうん、あるある。それよりも鍋を楽しもうじゃないか。この後は締めに雑炊を用意してあるか……」
クロード「どうされたのですか、ヒビキ様? 鍋を凝視したまま固まって。鍋がどうかしまし……な、鍋が……」
ヒビキ「……なんで鍋がこんなに真っ黒になって紫色の泡を噴いているの?」
クロード「い、一体何ゆえこのような……」
ヒビキ「……はっ! ク、クロード、鍋にネギをドバドバッて……!?」
クロード「え? い、いやいやいや! だって鍋にネギをドバドバッと入れただけですよ!? 私は何もしていません!」
ヒビキ「それ以外考えられないじゃないか! ぐううう、まさかネギを追加で入れるだけでもこんなことになるなんて……締めの雑炊がーーーーー!」
クロード「えぇ? 私が悪いんですか……?」
【技能スキル『鑑定』を行使します】
【 名 前 】かつて鍋だった何か
【 備 考 】鉄の胃袋をも撃滅する謎の鍋料理(?)。
味は究極的美味しい可能性がある。あくまで可能性。
七つの大罪『暴食』的な能力があっても蹂躙されるので要注意。
★★★★★
その他の記念日『紀州山の日』
※和歌山県が1994年に制定。
※紀州の山村ではかつて旧暦11月7日に山の神に感謝する祭りがあったことから。
※山林に対する理解を深め、山と人が共生する山村づくりを啓発する記念日。
ヒビキ「クロードはもう料理だけで世界を救えるんじゃないかな?」
クロード「もしくは世界を滅ぼしてしまうのでしょう……」
ヒビキ「……この設定、絶対に本編には持ち込まないでね?」
クロード「それは作者に言ってください……本当に頼みますよ?」
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