ヒビキとクロードの365日

あてきち

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10月

10月16日『ボスの日』

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クロード「ヒビキ様、今日の昼食は何ですか……て、何ですかこれは?」

 ヒビキ「あ、クロード。ちょっとその皿は向こうのテーブルに置いてくれる?」

クロード「承知しまし。ですが、この豪勢な料理の数々は何ですか? 今日、何かありましたっけ?」

 ヒビキ「ああ、これは『ピンポーン』」

クロード「おや、来客ですね。ヒビキ様、私が見てきます。はーい、どちら様ですか――て、何しにきたのですか、バルス殿」

 バルス「何しにきたとは随分な言い草だな、クロード」

クロード「うちは今から昼食なのでどうぞお引き取りください」

 バルス「いやだから、俺はその昼食に呼ばれたんだよ」

クロード「何を馬鹿なことを――」

 ヒビキ「あ、バルス兄貴、いらっしゃーい。入って入って」

クロード「――なっ!?」

 バルス「というわけだ。お邪魔するぜ」

クロード「ぐぅ、お、お邪魔するなら帰っていただいて結構ですよ」

 ヒビキ「クロード、どこの新喜劇みたいなこと言ってるのさ。バルス兄貴はお客様なんだから追い返さないでよ」
 バルス「そうだぞ。今日の俺はヒビキの招待客なんだからしっかりもてなせよ」

クロード「な、なぜなんですか、ヒビキ様! 私とヒビキ様の家になぜこのような者を招き入れるというのですか!?」

 ヒビキ「なんでそこまで嫌がってるのか知らないけど、今日10月16日が『ボスの日』だからさ」

クロード「『ボスの日』? ……ああ、ボス猿」

 バルス「……お前、いい加減にしねえとマジでしばくぞ?」

クロード「ほぉ? ヒビキ様に招かれておいて、その家で暴れようと? 暴漢ですか暴漢ですね。それでは相手になって差し上げましょう」

 ヒビキ「ちょっと二人とも何してるのさ! せっかく作った料理が冷めちゃうよ」

クロード「ヒビキ様、その『ボスの日』だか何だか知りませんが、どうしてその記念日でバルス殿を昼食に招待することになるのですか!」

 ヒビキ「元々はアメリカの記念日だね。1958年に、アメリカのパトリシア・ベイ・ハロスコイさんが、会社を経営していた父親のために、経営部と部下の関係を円滑にする日として提唱したのが始まりだね。それがアメリカ商業会議所に登録されて以来、アメリカではこの日に、組織のボスを昼食に招待したりプレゼントを贈ったりして日頃の労をねぎらうようになったんだ。1988年から日本のデパート業界でも実施されるようになったそうだよ。俺達は冒険者だし、冒険者のボスといえばローウェル支部でギルドマスターをしているバルス兄貴だからね。せっかくの記念日だから、バルス兄貴を昼食に招待することにしたんだ」

クロード「ぐうううう、反論できない……!!!」

 バルス「いやお前、そこまで悔しがることかよ。そんな苦虫を噛み潰したような顔までしてよぉ」

 ヒビキ「そんなことより早く食べようよ。料理が冷めちゃうってば」

 バルス「そうだな。せっかくヒビキが『俺のため』に作ってくれたんだ。温かいうちにいただこうじゃねえか」

クロード「わ、私も同席しますからね! ヒビキ様と二人きりで食事など許しません!」

 バルス「いつも二人で飯食ってるお前にだけは言われてくねえがな!」

 ヒビキ「はいはい、料理の前で唾飛ばさないで。それじゃあ、いただきまーす!」

バルス&クロードj「「いただきます!」」



その他の記念日『世界食料デー』
※1945年10月16日。国際連合食料農業機関(FAO)が設立された。
※発展途上国などの食糧不足や栄養失調、飢餓について考える日。
※記念日は1981年に制定。


 バルス「ヒビキの世界でも食料が不足しているところはいっぱいあるんだなぁ」
クロード「こんなところでバクバク食べまくるバルス殿には分からない問題です」
 バルス「お前だってバクバク食いまくってるじゃねえか!」
クロード「私はもっと品よく食べています」
 バルス「そういう問題じゃねえだろう!?」
 ヒビキ「二人とも食事中に何言い合いしてるのさ! これ以上うるさくするなら今日の昼食はもう終わりにするからね!」
 バルス「すんませんしたー!」
クロード「すいませんでしたー!」
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