ヒビキとクロードの365日

あてきち

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10月

10月9日『世界郵便デー』

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クロード「ヒビキ様、引き出しなどあさってどうされたのですか?」

 ヒビキ「クロード、どこかに切手ってなかったっけ?」

クロード「『きって』? 何をするものですか?」

 ヒビキ「あれ? 知らない? 手紙に貼る証紙のことなんだけど」

クロード「証紙……手紙は信頼できる商人に預けるとか、冒険者に依頼して送るものではないのですか? なぜ手紙にそのようなものを貼る必要があるのでしょうか?」

 ヒビキ「あー、異世界の郵便事情ってそんな感じなんだ。日本、というか地球では郵便料金前納を証明する証紙『切手』を貼って郵便屋さんに送ってもらうんだ」

クロード「郵便専門の仕事があるのですか? まあ、ヒビキ様の世界には魔物もいないようですし、やろうと思えばやれそうですが」

 ヒビキ「こっちだと魔物が危険すぎて結局冒険者の護衛が必要だもんね。あ、あった。よかった。これで手紙を送れるよ」

クロード「どちらに送るのですか?」

 ヒビキ「この前ニューヨークに行った時に知り合った友達だよ」

クロード「……いつの間に。この前行った時、ほとんど一緒にいたはずなのに。それはそうと、その手紙は外国にも送れるものなのですか?」

 ヒビキ「もちろん。『万国郵便連合』に加盟している国同士なら、国際郵便制度に則って海外への郵便も可能だからね」

クロード「ばんこく、ゆうびん……?」

 ヒビキ「『万国郵便連合』。スイス・ベルンに本部を置く国際連合の専門機関のひとつだよ。設立は1874年10月9日で、それにちなんで今日10月9日は『世界郵便デー』と呼ばれているんだ」

クロード「郵便専門の国際機関、ですか? 何をしているのです?」

 ヒビキ「『万国郵便連合』設立にあたって合意形成されたのは次の3点だね」

①地球上のほぼ全ての域から固定料金に近い形で郵便物を送ることができる。

②国際郵便、国内郵便がともに同様の扱いをなされる。

③国際郵便料金は、それぞれの国で徴収し、使用すること。

 ヒビキ「特に切手を貼った郵便物については、どの国家の切手でも国際的に通用することが『万国郵便連合憲章』で決められているんだ」

クロード「確かに、こういった決まり事がないと海外への郵便物の扱いでトラブルが発生しそうです」

 ヒビキ「みんな同じ懸念を持ってるんだろうね。昨年の時点での加盟国数は192ヶ国。おかげで安心して郵便を送ることができるよ」

クロード「こちらの世界も加盟できると助かるのですが、まあ、無理でしょうね」

 ヒビキ「こっちはこっちでやってもらうしかないと思うよ? 何より手紙を送る文化がもっと育っていかないと事業として成立しないし」

クロード「うーむ。気長に待つしかなさそうですね。ところでニューヨークの御友人とはどのような方なのですか?」

 ヒビキ「なんでもセントラルパーク在住のジョン・ドウさんって人でね」

クロード「……いやそれ、国際郵便でも絶対届きませんよ」


※ジョン・ドウ(John Doe):日本語訳『名無しの権兵衛』に相当する名前。




★★★★★
その他の記念日『トラックの日』
※『トラック』=『ト10ラック9』の語呂合わせ。
※全日本トラック協会と47都道府県トラック協会が1992年に制定。

 ヒビキ「配達といえばトラックだね!」
クロード「国際郵便の場合は船か飛行機だと思いますがね」
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