ヒビキとクロードの365日

あてきち

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10月

10月5日『レジ袋ゼロデー』

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 ヒビキ「今日はクロードと一緒にスーパーに来ています」

クロード「誰に説明しているのですか?」

レジ店員「全部で〇〇〇〇〇円になります。レジ袋はお持ちですか?」

クロード「二人暮らしのスーパーの買い物で、五桁の支払いだと? ヒビキ様、何を買ったのですか? ちょっと中身を見直す必要がありますね」

 ヒビキ「だ、だだだだ大丈夫だよ!? それよりも、今日注目してほしいのはそんなところじゃないんだからね!」
クロード「この家計を顧みない衝動買いよりも注目すべきところですか?」

レジ店員「あのー、レジ袋はお持ちですか?」

クロード「ふむ? レジ袋? ヒビキ様の国では買い物には袋をつけてくれるのではなかったでしたっけ?」

 ヒビキ「最近のスーパーは大体レジ袋は有料なんだ。ホームセンターやコンビニはまだほとんど無料だけど、ドラッグストアの一部では既に有料化が進んでいるね」

クロード「なんと。そうだったのですか。言われてみればスーパーを訪れたのは今回が初めてでしたね。ヒビキ様に色々なところへ連れて行ってもらっていたのでうっかり失念していました。しかし、なぜ店舗によって袋が有料だったり無料だったりするのですか? 消費者としては無料の方が助かるのですが」

 ヒビキ「昔は無料だったけど、環境問題の観点からレジ袋の使用を控える風潮が起こり始めたんだ。スーパーを始めレジ袋を多用するお店で、レジ袋の代わりとなる袋を持参してもらうために有料化が進められていったそうだよ。そして、今日10月5日は、日本チェーンストア協会がごみの減量のために持参した買い物袋、いわゆる『マイバッグ』の使用を呼び掛ける記念日『レジ袋ゼロデー』なんだ」

レジ店員「あのー」

クロード「こんな小さな袋が、世界環境にそんなに影響を与えるのですか?」

 ヒビキ「塵も積もればってやつだよ。例えば全国にコンビニは6万店弱あるんだけど、それらが一日百枚袋を使っただけで……」

クロード「ろ、六百万枚……ですね……」

 ヒビキ「実際には百枚では足りないだろうし、他にもスーパーにドラッグストア、ホームセンターに家電量販店やコスメストア、パン屋に本屋に食堂だって持ち帰りに袋を使う……一体、年間何枚の袋が世に放たれ、そして捨てられていくんだろうね」

レジ店員「……あの、お客様?」

クロード「改めて説明されるとちょっと恐ろしい話ですね。有料化された時は不満の声もあったでしょうが、今の話を聞いただけでもレジ袋はなるべく使わないようにしたいと考えてしまいます」

 ヒビキ「ただ、マイバッグを推奨したことで悪質な万引き被害が増加傾向にあるらしい。持参した袋で万引きを隠す手口が広まったみたいなんだ。人によってはレジに商品を通す前から買い物かごにレジバックを広げてそのまま商品を入れて回る人もいるくらいさ。店員さんが注意しても全然話を聞かなくてトラブルになることも結構多いんだよ」

レジ店員「ちょっとー、聞いてますー?」

クロード「買い物かごに袋を広げて商品を入れてって……結局袋から商品を取り出さなければならないので意味はないと思うのですが、何をしたいのでしょうね?」

レジ店員「お客様ー? 聞こえていないんですかー?」

 ヒビキ「何かマイルールがあったのかもしれないけど、困った話だよ、ホント」

クロード「そうですね。マイバッグの使用を推奨すること自体は環境にもよいですし、いいことのはずなのに、マイバッグを持ってくる側が周りに迷惑をかけていては本末転倒というものです。せっかくの善意なのですから、きちんとやりたいものです」

 ヒビキ「ふふん。俺もちゃんとぬかりないから大丈夫。今日はしっかりマイバッグを持参してまーす!」

クロード「素晴らしい配慮ですね。仕方ありません、今日のところはその気持ちに免じて衝動買いについては不問に処すことにいたしましょう」

 ヒビキ「しょ、衝動買いじゃないけど、やったー!」

クロード「というわけで会計をお願いします」

レジ店員「いい加減にしろよお前らあああああああああああああ!」

 ヒビキ「うひゃあっ!? なんで怒ってるの店員さん!?」

クロード「お、お客に怒鳴るというのはさすがにどうかと思いますよ?」

レジ店員「お前ら周りの迷惑だの環境だのとか言う前に、目の前の迷惑もちゃんと気にしろ! 後ろ見てみろ!」

 ヒビキ「後ろ? ……あ」

クロード「……ちょ、長蛇の列ですね……み、みんな睨んでます」

レジ店員「どんだけ呼んでも二人の世界に入りやがって! TPOを考えやがれってんだ! おら、さっさとマイバッグをよこせ! あと金も払えや!」

 ヒビキ「申し訳ございませんでしたー!」
クロード「申し訳ございませんでしたー!」




★★★★★
その他の記念日『世界教師デー』
※国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が制定した国際デー。
※1966年10月5日。
※『教師の地位向上に関する勧告』が調印されたことにちなむ。


レジ店員「というわけで俺がいいことを教えてやる!」
クロード「な、なぜ店員さんが……」
 ヒビキ「うう、乗っ取られた。あと、足が痺れて」
レジ店員「こら! 正座を崩すんじゃねえ!」
 ヒビキ「はうぅ、ごめんなさい」
レジ店員「じゃあ、問題だ。スーパーなんかの小売店でお客様が最も不満に感じることって何か知ってるか?」
クロード「一番の不満? ……値段が高い?」
 ヒビキ「分かった。欲しい商品が売り切れてる!」
レジ店員「レジが混んでて待たされることだよ! 自分の前に二人いるだけでお客様はもうご不満なんだよ! ましてや一組の買い物客のせいで長蛇の列ができようものなら、こっちのせいじゃなくても店にクレームが来るんだよ! ふっざけんじゃねぞ!」
 ヒビキ「ひー、ごめんなさーい!」
クロード「ひー、ごめんなさーい!」

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