ヒビキとクロードの365日

あてきち

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8月

8月31日『宿題の日』

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クロード「とうとう今日で8月も終わりですか。夏も終わりですね……」

※カリカリ、カリカリ……という音が響く。

クロード「いけませんね。まだまだ暑いというのに不思議と寂しくなります」

※カリカリ、カリカリ……という音が響き続ける。

クロード「……ヒビキ様? 先ほどからずっと書き物をしているようですが……」

※カリカリ、カリカリ……という音がクロードを無視して延々と続くよどこまでも。

クロード「ヒビキ様?」

 ヒビキ「今忙しいから静かにして」

クロード「ちょっ、ヒビキ様!? 何やら目が血走っていますがどうしたのですか!? それにこの、テーブルに積まれた書物の数々は一体……」

 ヒビキ「もう! 今日は徹夜で頑張らないといけないんだから邪魔しないでよ! 明日の朝までに終わらせなきゃいけないんだから!」

クロード「明日までに徹夜って、本当に一体何をしているのですか?」

 ヒビキ「夏休みの宿題に決まってるでしょ! 今日8月31日は夏休み最後の日にして『宿題の日』なんだから!」

クロード「夏休みの宿題……そういえば、ヒビキ様のような学生はこの時期学舎を休んで、その間に用意された課題がやらなければならないのですよね。それがまだ終わっていないのですか? その割にはこの前遊園地に遊びに行っていたような……」

 ヒビキ「現実逃避に決まってるでしょ!」 

クロード「そんな堂々と言われましても……」

 ヒビキ「うう、現在進行形で異世界を冒険中の俺になぜ夏休みの宿題があるんだ」

コウイチ「本編で日本に帰った時に勉強を遅らせるわけにはいかないからな」

クロード「……何の前振りもなく唐突に登場しないでください、コウイチ殿」

コウイチ「俺は響生の親戚であると同時にクラス担任だ。生徒の成績を下げるわけにはいかない。頑張れよ、響生」
 ヒビキ「候兄ちゃん、この問題分からないんだけど……」

コウイチ「響生。俺はお前のことが大好きだが、教師としては安易に答えを教えるわけにはいかない。この参考書のこのページをよく読んで解いてみなさい」

 ヒビキ「うう……分かった」

クロード「コウイチ殿もやろうと思えば普通の対応ができるのですね」

コウイチ「どういう意味だ、それは?」

クロード「自分の胸に手を当てて思い出してほしいところですが……そういえば、先ほどヒビキ様が仰っていた『宿題の日』とは?」

コウイチ「……イギリスのチャリティー団体『A World At School』が制定した記念日だな。『全ての子供たちに教育の機会を提供する』ために活動している団体だ。夏休みの宿題を終わらせるために必死で勉強した思い出を持つ者が多い8月31日を記念日とすることで、勉強ができることへの喜びに気づいてもらいたいそうだ」

クロード「ヒビキ様の故郷で発案された記念日ではないのですね」

コウイチ「日本とイギリスでは学校の年間スケジュールは異なるが、9月に新学期が始まるところは同じなんだ。日本は二学期だが、イギリスは一学期だ」

クロード「ということは、明日の9月1日から新学期ということですか」

コウイチ「……まあ、今年の9月1日は日曜日だから、始業式は9月2日というところが多いと思うがな」

クロード「おや? 確かヒビキ様は明日の朝までに終わらせなければと……」

コウイチ「夏休みは曜日の感覚がなくなるから気づいていないんだろうなぁ」

クロード「……あと1日余裕があることは教えてあげないのですか?」

コウイチ「いやぁ、俺は響生のこと大好きだし甘やかしてやりたいところだが、それとこれとは話が別っていうか、響生のためにならないっていうか……」

クロード「……でしょうね」

 ヒビキ「うえーん! 終わらないよー!」

クロード「えーと、頑張ってください、ヒビキ様」



★★★★★
その他の記念日『野菜の日』
※『やさい』=「や8さ3い1」の語呂合わせ。
※1983年。食品流通改善協会が制定。
※野菜の栄養価と美味しさを見直してもらうために。


 ヒビキ「お、終わった……」
コウイチ「よくやった。だが、これに懲りたらもっと計画的にやるんだぞ」
クロード「お疲れ様です、ヒビキ様。さあ、労いの野菜サラダですよ!」
コウイチ「いやそれ労いになってるのか?」
 ヒビキ「もう朝だから9月1日だしねぇ……おやすみぃ……」

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