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8月
8月27日『ジェラートの日』
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ヒビキ「皆さんこんにちは。やんごとなき美少女、ヒビカです」
クロード「おや、ヒビキ様。自分から美少女ヒビカ様に変身するとは珍しい。白のブラウスに水色のスカート姿ですか。髪も後ろでまとめて、大変愛らしいですね」
ヒビキ「今日はもう割り切りました、諦めました、仕方がないんです……というわけで今日は、イタリアはローマにある『スペイン広場』にやってきました。俺の恰好と場所でピンとくる人はもう分かったんじゃないかな?」
クロード「イタリアなのに広場の名前がスペインとはこれ如何に」
ヒビキ「広場のすぐそばにあるスペイン大使館にちなんでそう命名されたらしいよ。というか、今はそっちじゃなくて俺の恰好についてでしょ!」
クロード「そういえば、特に違和感なくお似合いでしたので逆に全く気になりませんでした。今日はなぜこんな格好を?」
ヒビキ「違和感ないっていうのもそれはそれで困るんだけど……まあ、異世界人のクロードに聞いた俺がバカだったよ。映画『ローマの休日』のコスプレだよ」
クロード「ろーまの休日?」
ヒビキ「イタリアのローマを表敬訪問していた某国の王女が滞在先を飛び出し、ローマで知り合ったとある新聞記者と切ない恋をするっていう物語で、世界的にかなり有名な映画なんだ。ここはその映画で使用された舞台のひとつってわけ」
クロード「王女が護衛の監視をすり抜けて出奔? その王女、相当な手練れですね。王女の護衛ともなれば生半可な実力者ではないでしょうに。というかとんだスキャンダルじゃないですか。他国の王女が行方不明だなんて、イタリア政府も相当に慌てふためいたことでしょう。切ない恋がどうの以前に、王女がじゃじゃ馬過ぎます」
ヒビキ「物語を楽しむ習慣のない世界の人の意見が辛辣すぎる。フィクションなんだからそういうものだと思って映画を楽しもうよ。とにかく、アメリカが制作したこの映画が公開されたのが、1953年8月27日なんだ」
クロード「ようやく今日の記念日に繋がりましたね。つまり、今日は『ローマの休日の日』とか、そういう記念日ということですか」
ヒビキ「ううん、違うよ」
クロード「……ここまで引っ張っておいて違うのですか?」
ヒビキ「今日8月27日は『ジェラートの日』さ♪ はい、クロードの分」
クロード「『じぇらーと』? えっと、あいすくりーむですか?」
ヒビキ「ジェラートだってば。イタリアはフィレンツェが発祥とされる氷菓の一種だね。一般的なアイスクリームと比べて空気の含有量が少ないから密度が濃く、味にコクがあって美味しいんだ」
クロード「へぇ、それは興味深い……ですが、この『じぇらーと』と『ろーまの休日』に何の関係があるのです?」
ヒビキ「『ローマの休日』では、王女がスペイン広場にある階段に腰を下ろしてジェラートを食べるシーンがあるんだ。そこに彼女が王女であることに気づいた例の新聞記者が、偶然を装って彼女に話しかけることで物語が進んでいくんだよ」
クロード「映画の中でも重要なシーンということですか」
ヒビキ「その通り。それにちなんで、日本ジェラート協会がジェラートの魅力を伝えるために『ローマの休日』と絡めて今日を『ジェラートの日』に制定したのさ」
クロード「そういうことだったのですね」
ヒビキ「王女役のオードリー・ヘプバーンといえば美女の象徴のような人で人気も高かったから、これらを関連付けてアピールするのはある意味正しいと思うよ?」
クロード「現地に来たら映画のシーンを真似たくなりそうです。こんな風に」
ヒビキ「あ、クロード。ダメ――」
警察官「ピピー! こらー! 階段に座ってはいけません!」
クロード「え? ……えっ!? な、何か私、悪いことしました!?」
ヒビキ「クロード。今、スペイン広場の階段は座り込みが禁止されているんだ」
クロード「へ? なぜです?」
クロード「今のクロードみたいに階段に座り込む観光客がたくさんいたんだ。そのせいもあって階段にはガムやコーヒーが散乱してせっかくのスペイン広場の景観が台無しになってしまった。だから現在、ローマ市はスペイン広場の階段への座り込みを禁止して、警察官に監視させているんだよ」
クロード「そんなことになっていたのですか……座れないとは、残念です」
ヒビキ「みんなが節度をもって観光していれば今でもここでジェラートを食べられたんだけどねぇ……とりあえず、家に帰って食べよっか」
クロード「そうですね。早くしないとジェラートが溶けてしま――あ」
※ボタボタッ……階段にアイスが零れ落ちた。
警察官「ピピー! こるあああああああ! 何しとんじゃわれえええええ!」
クロード「ぎゃああああああ! も、申し訳ありませええええええん!」
ヒビキ「えーと……この物語はフィクションであり、登場した警察官の発言は実際とは異なる場合が……というか全然違うのであしからず。というか俺、別にこんなコスプレする必要なかった気がするなぁ」
★★★★★
その他の記念日『男はつらいよの日』
※1969年8月27日。
※映画『男はつらいよ』シリーズ第1作が公開された。
クロード「つらいのは私です! あれから警察官に2時間も説教されて」
ヒビキ「大変だったんだね、クロード」
クロード「ヒビキ様、私が叱られているうちにいつの間にかいなくなってるし!」
ヒビキ「仕方なかったんだ。ジェラートが溶けそうだったから」
クロード「ジェラートより優先順位が下なのですね、私って!」
ヒビキ「……てへ♪」
クロード「そこは謝ってくださいよー!」
クロード「おや、ヒビキ様。自分から美少女ヒビカ様に変身するとは珍しい。白のブラウスに水色のスカート姿ですか。髪も後ろでまとめて、大変愛らしいですね」
ヒビキ「今日はもう割り切りました、諦めました、仕方がないんです……というわけで今日は、イタリアはローマにある『スペイン広場』にやってきました。俺の恰好と場所でピンとくる人はもう分かったんじゃないかな?」
クロード「イタリアなのに広場の名前がスペインとはこれ如何に」
ヒビキ「広場のすぐそばにあるスペイン大使館にちなんでそう命名されたらしいよ。というか、今はそっちじゃなくて俺の恰好についてでしょ!」
クロード「そういえば、特に違和感なくお似合いでしたので逆に全く気になりませんでした。今日はなぜこんな格好を?」
ヒビキ「違和感ないっていうのもそれはそれで困るんだけど……まあ、異世界人のクロードに聞いた俺がバカだったよ。映画『ローマの休日』のコスプレだよ」
クロード「ろーまの休日?」
ヒビキ「イタリアのローマを表敬訪問していた某国の王女が滞在先を飛び出し、ローマで知り合ったとある新聞記者と切ない恋をするっていう物語で、世界的にかなり有名な映画なんだ。ここはその映画で使用された舞台のひとつってわけ」
クロード「王女が護衛の監視をすり抜けて出奔? その王女、相当な手練れですね。王女の護衛ともなれば生半可な実力者ではないでしょうに。というかとんだスキャンダルじゃないですか。他国の王女が行方不明だなんて、イタリア政府も相当に慌てふためいたことでしょう。切ない恋がどうの以前に、王女がじゃじゃ馬過ぎます」
ヒビキ「物語を楽しむ習慣のない世界の人の意見が辛辣すぎる。フィクションなんだからそういうものだと思って映画を楽しもうよ。とにかく、アメリカが制作したこの映画が公開されたのが、1953年8月27日なんだ」
クロード「ようやく今日の記念日に繋がりましたね。つまり、今日は『ローマの休日の日』とか、そういう記念日ということですか」
ヒビキ「ううん、違うよ」
クロード「……ここまで引っ張っておいて違うのですか?」
ヒビキ「今日8月27日は『ジェラートの日』さ♪ はい、クロードの分」
クロード「『じぇらーと』? えっと、あいすくりーむですか?」
ヒビキ「ジェラートだってば。イタリアはフィレンツェが発祥とされる氷菓の一種だね。一般的なアイスクリームと比べて空気の含有量が少ないから密度が濃く、味にコクがあって美味しいんだ」
クロード「へぇ、それは興味深い……ですが、この『じぇらーと』と『ろーまの休日』に何の関係があるのです?」
ヒビキ「『ローマの休日』では、王女がスペイン広場にある階段に腰を下ろしてジェラートを食べるシーンがあるんだ。そこに彼女が王女であることに気づいた例の新聞記者が、偶然を装って彼女に話しかけることで物語が進んでいくんだよ」
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ヒビキ「その通り。それにちなんで、日本ジェラート協会がジェラートの魅力を伝えるために『ローマの休日』と絡めて今日を『ジェラートの日』に制定したのさ」
クロード「そういうことだったのですね」
ヒビキ「王女役のオードリー・ヘプバーンといえば美女の象徴のような人で人気も高かったから、これらを関連付けてアピールするのはある意味正しいと思うよ?」
クロード「現地に来たら映画のシーンを真似たくなりそうです。こんな風に」
ヒビキ「あ、クロード。ダメ――」
警察官「ピピー! こらー! 階段に座ってはいけません!」
クロード「え? ……えっ!? な、何か私、悪いことしました!?」
ヒビキ「クロード。今、スペイン広場の階段は座り込みが禁止されているんだ」
クロード「へ? なぜです?」
クロード「今のクロードみたいに階段に座り込む観光客がたくさんいたんだ。そのせいもあって階段にはガムやコーヒーが散乱してせっかくのスペイン広場の景観が台無しになってしまった。だから現在、ローマ市はスペイン広場の階段への座り込みを禁止して、警察官に監視させているんだよ」
クロード「そんなことになっていたのですか……座れないとは、残念です」
ヒビキ「みんなが節度をもって観光していれば今でもここでジェラートを食べられたんだけどねぇ……とりあえず、家に帰って食べよっか」
クロード「そうですね。早くしないとジェラートが溶けてしま――あ」
※ボタボタッ……階段にアイスが零れ落ちた。
警察官「ピピー! こるあああああああ! 何しとんじゃわれえええええ!」
クロード「ぎゃああああああ! も、申し訳ありませええええええん!」
ヒビキ「えーと……この物語はフィクションであり、登場した警察官の発言は実際とは異なる場合が……というか全然違うのであしからず。というか俺、別にこんなコスプレする必要なかった気がするなぁ」
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その他の記念日『男はつらいよの日』
※1969年8月27日。
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ヒビキ「大変だったんだね、クロード」
クロード「ヒビキ様、私が叱られているうちにいつの間にかいなくなってるし!」
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