ヒビキとクロードの365日

あてきち

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7月

7月30日『梅干しの日』

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クロード「とうとう真夏の暑さになってきましたね。家庭菜園も一苦労です、ふぅ」

 ヒビキ「お疲れ様。お昼ご飯だよ」

クロード「わざわざ持ってきてくださったのですか? ありがとうございます」

 ヒビキ「今日は縁側で風に当たりながら食べようと思って。はい、おにぎり」

クロード「これは美味しそうです。いただきます、ぱくり……うぐぅ!?」

 ヒビキ「もぐもぐ。どうしたの、クロード?」

クロード「い、いえ……す、すっぱっ!」

 ヒビキ「うわー、狼の口でどうやって口をすぼめてるんだろ? 生命の神秘だね」

クロード「そ、そんなことはどうでもいいです! おにぎりに何を入れたのですか!? 食べ物で悪戯など、褒められたことではありませんよ!?」

 ヒビキ「いや、悪戯じゃないから。梅干しだから。だって今日7月30日は『梅干しの日』だから」

クロード「う、梅干し……? この赤い果肉のことですか?」

 ヒビキ「そうす。ウメの果実を塩漬けいた後で日干しした食べ物で、日本では古来からおにぎりの具として、そして最近ではスナック菓子でも人気のフレーバーだよ」

クロード「不要な知識もありましたが、伝統的な食べ物ということですか。しかし、何もこんなに酸っぱく作らなくても……」

 ヒビキ「ご飯と一緒に食べると美味しいのに。ぱくり、もぐもぐ。うん、美味い」

クロード「そういうものですか? ……パクリ……もぐもぐ、もぐもぐ……ふむ。確かに、先ほどは梅干しとご飯の割合がよくなかったようですね。美味しいです」

 ヒビキ「好きな人はそのまま食べたりもするよ」

クロード「そ、それは初心者の私には少々ハードルが高いです。それで、今日が『梅干しの日』とのことでしたが、由来は何なのですか?」

 ヒビキ「梅干しは健康にいいから、昔から食べると『難が去る』と言われていたらしくて、そこから『難が去る=なん7がさる30』の語呂合わせにちなんでかな?」

クロード「……語呂合わせ?」

 ヒビキ「まあ、首を傾げるのも頷けるこじつけ具合なのは認めるけど」

クロード「といいますか、梅干しは健康によいのですか?」

 ヒビキ「色々あるよ。夏場に食べるなら塩分補給にもってこいだし、酸味の原因である『クエン酸』には疲労回復効果が期待できる。肝機能を高める効果もあるから酔いを防止にも繋がるらしいよ?」

クロード「語呂合わせは疑問ですが、今日のような暑い日に食べるにはちょうどよい食品なのですね」

 ヒビキ「殺菌・防腐効果もあるから夏のおにぎりにぴったりなんだ。美味しいし」

クロード「慣れれば確かに美味しいです。もぐもぐ、ガリッ! ……ん? 今何か」

 ヒビキ「あ、ウメの種、食べちゃった? 気を付けてね。ウメの種の仁(中身)は通称『天神様』といって、アミグダリンという成分を多く含んでいるから」

クロード「あぐだ……何ですか、それは?」

 ヒビキ「青酸配糖体といって、胃腸などで酵素によって加水分解されるとシアン化水素(青酸)を生成するんだ。最悪の場合死に至る可能性が……」

クロード「ぎゃあああああああああああああああああ! お、おええええええ!」

 ヒビキ「……まあ、漬ける段階でアミグダリンはほぼ消失するから、一粒くらい食べたところで人体に影響なんてほとんどないんだけど」

クロード「し、死ぬうううううううう! おえええええええええええええ!」




★★★★★
その他の記念日『明治天皇祭』
※1913~1926年の間存在した祭日。
※1912年7月30日に亡くなった明治天皇を記念する祭日。

クロード「うう、毒殺されるとことでした。もう梅干しはトラウマです」
 ヒビキ「大丈夫だって言ったじゃん」
クロード「いえ、お花畑が見えましたよ。うっかり死ぬところでした」
 ヒビキ「人って思い込みだけでも死ねるんだねぇ……」
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