ヒビキとクロードの365日

あてきち

文字の大きさ
上 下
109 / 388
6月

6月27日『日照権の日』

しおりを挟む
 ヒビキ「おはよう、クロード……ん? もう朝なのになんか暗くない?」

クロード「あれのせいですヒビキ様!」

 ヒビキ「あれ? ……どうしてうちの隣にタワーマンションが立ってるの?」

クロード「分かりません。昨日まであんなものなかったのに、今朝目が覚めたら突然聳え立っていたのです! あれのせいで朝日は完全に遮られ、私の家庭菜園に光が届きません。由々しき事態です!」

 ヒビキ「困るなぁ。今日6月27日は『日照権の日』だっていうのに」

クロード「にっしょうけん?」

 ヒビキ「建築物の日当たりを確保する権利のことだよ。1972年の今日、違法建築の隣家によって日照権を侵害された問題で、最高裁が『日照権と通風権が法的に保護するに値する』という初めての判決をしたことを記念してこの記念日が作られたんだ」

クロード「今にぴったりの記念日ですね! では早速あのはた迷惑な建物の持ち主に文句を言ってやりましょう。そして私の『貫く会心の一撃』で木っ端微塵です!」

 ヒビキ「とりあえず行ってみようか。タワマンのオーナーさんのところへ」

※ヒビキとクロードはタワーマンションの所有者のもとへ向かった……のだが?

クロード「貴様がこの建物の持ち主だと!?」

イヴェル「いやー、突貫で建てたマンションの隣が君達の家だったなんて、私、全然気が付かなかったなぁ……テヘ♪」

 ヒビキ「うわぁ。イヴェル、白々しい」

クロード「ヒビキ様! こんな奴と交渉する余地などありません! ひと思いに私の槍の一撃で全壊させてみせます!」

イヴェル「ふーん? まあ、それはそれで構わないけど、そうなると隣の君達の家も衝撃やら瓦礫で一緒に吹き飛んじゃうんじゃないの? 私は構わないけどね♪」

クロード「――っ!? この……殺人鬼め」

イヴェル「えー。本編読み直してよ。私、誰も殺してないし」

クロード「ただ失敗しただけだろうが! 二度も私達を襲っておいて!」

イヴェル「まあまあ、本編の事情をこっちにまで持ち込まなくてもいいじゃない。ここでくらいは仲良くしようよ。ね♪」

クロード「朝から嫌がらせをしておいて仲良くなど笑止千万! 我が槍の錆に……」

 ヒビキ「もう! 最初からケンカ腰じゃ話にならないでしょう! 俺が話をつけるからクロードは少し離れてて!」

クロード「うう、しょ、承知しました」

※ヒビキとイヴェルの話し合いが始まった。
※クロードはそれを少し離れたところから寂しそうに見つめる。
※その背中は、ご主人様に相手をしてもらえなくて縮こまる飼い犬のようであった。

 ヒビキ「お待たせ。話がついたよ」

クロード「おお! それでは!」※クロード、ギュッと槍を強く握りしめるの図。

 ヒビキ「うん! 俺達は最上階の南側に住んでいいって!」

クロード「……は?」

 ヒビキ「屋上も家庭菜園として使っていいんだってさ。よかったね、クロード」

クロード「……え?」

 ヒビキ「何せ100階建てのタワマンなんて日本でもお目に掛かれないから貴重な体験だよ。イヴェル、ありがとね」

イヴェル「ふふ、どういたしまして。私は下の階に住むからこれからよろしくね」

 ヒビキ「こちらこそよろしく。本編では狙い狙われる関係だけど、こっちでは仲良くできそうで嬉しいよ。ね、クロード……クロード?」

クロード「な、な、な……」

 ヒビキ「な?」

クロード「なんでそうなるんですかああああああああああああああ!」

イヴェル「あ、そんなに強く地団駄踏まないでくれる? 気を付けないと……」

※バキバキ!

※クロードの足元を中心に、タワーマンション全体へ亀裂が走り始める。

 ヒビキ「え? ちょ……ナニコレ?」

イヴェル「あー、とりあえず逃げた方がいいよー」

 ヒビキ「あれ? イヴェルの声が遠ざかって……て、イヴェル逃げ足速っ!?」

クロード「ヒビキ様!」

※クロードはヒビキを抱え上げると全力ダッシュでタワマンから遠ざかった。

 ヒビキ「ナニコレ! ナニコレ!? ナニコレエエエエエエエエエエエ!」




※数十秒後、タワーマンションは跡形もなく倒壊した。

イヴェル「あはは。さすがは突貫工事の一夜城。足踏みで全壊とかウケる~♪」

 ヒビキ「何言ってるのさ! 幸い我が家は無事だったけど周りが瓦礫で埋め尽くされちゃったじゃないか! 撤去が大変すぎるよ!」

イヴェル「ピッタリ隣に立っていたのに家は無傷とか、ご都合主義ここに極まれりって感じだけど、面白いものが見れて楽しかったかな。ありがとね。というわけで私は大満足。邪神様のところに帰るよ。またねー」

 ヒビキ「ええええええええ!? 片付けてってよ! クロードもボーっと瓦礫を見てないで、何か言ってやらなくていいの!?」

クロード「…………もう、怒る気力も失せました」



その他の記念日『ちらし寿司の日』
※岡山のちらし寿司『ばら寿司』が生まれるきっかけとなった備前岡山藩主『池田光政』の命日が由来。

イヴェル「というわけで、引っ越し祝いに作ってみました!」
 ヒビキ「イヴェル引っ越してないじゃん。それはそれとして美味しい」
クロード「くそ。イヴェルの持ち込みと知っていても、美味いものは美味い」
 ヒビキ「岡山県の郷土料理なんだって?」
イヴェル「そうだよ。制定したのは広島県に本社がある株式会社あかじんだけど」
クロード「隣の県、だと……?」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

処理中です...