ヒビキとクロードの365日

あてきち

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5月

5月29日『エベレスト登頂記念日』

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クロード「360度、全てが純白の世界……視界を遮るものがないゆえに、空と大地がどこまでも続いています。なんと雄大な景色なのでしょうか」

 ヒビキ「というわけで現在俺達は、地球はネパールと中国の国境上、ヒマラヤ山脈にある世界最高峰の山『エベレスト』山頂に来ていまーす!」

クロード「風が強くて寒そうです……魔法道具『常春の外套』がなければ、こうして気軽に来ることのできない環境ですね。それで、私達はなぜここに?」

 ヒビキ「本日5月29日は『エベレスト登頂記念日』だからさ! 1953年の今日、ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリー氏と、チベット人のテンジン・ノルゲイ氏の二人が、世界初のエベレスト山頂到達に成功したんだよ」

クロード「えーと、確か『そこにエベレストがあるから』の人でしたか?」

 ヒビキ「それはイギリスの登山家ジョージ・マロリー氏だよ。1923年の『ニューヨーク・タイムズ』の記事で『なぜあなたはエベレストに登るのか?』と質問された時の回答だね。彼はこの翌年にエベレスト登山に挑戦し、残念ながらその途中で行方不明となってしまったんだ。彼の遺体はそれから約75年後の1999年に発見されるんだけど、彼は実は登頂を果たしていたのではなんて説もあるらしいよ」

クロード「『えべれすと』とは過酷な山なのですね」

 ヒビキ「諸説あるけど、少なくとも標高8,800メートル以上の巨山だもの。頂上付近の空気は地上の3分の1しかないし、ヘリコプターも山頂には行けないから、登山中の事故はそのまま『死』を意味してしまうことも珍しくない。5月は最も登頂率が高い月だけど、それでも山頂の平均気温はマイナス25度。ベースキャンプでもマイナス7度の世界だ。登頂を成功させるのは『難しい』の一言では表現しきれない」

クロード「それほど命の危険がある山に、なぜ多くの者達が挑戦するのでしょう?」

 ヒビキ「それが世界最高峰の山『エベレスト』の魅力なんだろうね。世界一高い山だからこそ、登山家として登ってみたくてしょうがないんだと思う。でもね、父親を失ったマロリー氏の息子ジョン・マロリー氏は『「登頂」とは生きて帰ってくること』だと言ったそうだよ。父親を亡くした時、彼はまだ3歳だった。思い出なんてほとんどなくて、きっと寂しい思いをしたんだろうね」

クロード「人が死んだ時、つらいのは残された方だとよく言いますからね」

 ヒビキ「――と、暗い話はここまで! 今日はそんな多くの悲劇と苦難を乗り越えて到達した素晴らしき『エベレスト登頂記念日』! そっちをお祝いしなくちゃ!」

クロード「そうでしたね。最近は技術の進歩のおかげで登頂成功者も増えてきているようですし、彼らが残してくれた写真を見るだけでも気分を味わえそうです」

 ヒビキ「俺達はテラダイナスから転移でスパッと来ちゃったけどね♪」

クロード「登山の醍醐味が台無しですね、ヒビキ様」



★★★★★
その他の記念日『こんにゃくの日』
※全国こんにゃく協同組合連合会が1989年に制定。
※『こんにゃく=こ5んに2ゃく9』

 ヒビキ「エベレスト頂上であっつあつのおでん……じゅるる」
クロード「多分、あっという間に冷めてしまうのでは?」
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