ヒビキとクロードの365日

あてきち

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5月

5月2日『緑茶の日』『八十八夜』

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 ヒビキ「クロード、お茶の用意ができたよ~」

クロード「ありがとうございます、ヒビキ様。今日はヒビキ様の故郷風ですね」

※ちゃぶ台の上には煎餅が入った木製深皿。そして急須と湯のみが用意されている。

 ヒビキ「今日はいいのを準備したから飲んでみてよ」

クロード「確か、緑茶という飲み物でしたね。普段は紅茶ですからなかなか興味深いです。ずずず……はふぅ。これは、何とも癒される味わいというか何というか……」

 ヒビキ「気に入った?」

クロード「はい。飲み口が柔らかく、香りも上品でほのかに甘いです。まさに美味」

 ヒビキ「さすがは京都の宇治茶。異世界人にも高評価だね」

クロード「『うじちゃ』というと、なかなかお高いお茶だったのでは?」

 ヒビキ「何せ今日5月2日は『緑茶の日』だからね!」

クロード「ああ、いつもの前振りでしたか。ずずず……それはともかく美味しい」

 ヒビキ「日本茶業中央会が制定した、八十八夜にちなんだ記念日だね。ずずず」

クロード「ずずず……八十八夜?」

 ヒビキ「ずずず……雑節っていってね、ここで紹介している『二十四節気』とは別に、季節の移り変わりを的確に掴むために設けられた特別な暦日なんだけど、二十四節気のひとつ『立春』を第1日目として88日目のことを『八十八夜』というんだ」

クロード「となると、毎年5月2日が八十八夜というわけではなさそうですね」

 ヒビキ「閏年なら5月1日かな」

クロード「それと『緑茶の日』に何の関係があるのですか? ずずず」

 ヒビキ「『夏も近づく八十八夜~♪』なんて童謡の歌詞もあるくらい、この時期といえば茶摘みの時期なんだよ。八十八夜にとれるお茶の葉の新芽で作るお茶は新茶とか一番茶と言われていて、味もよければ栄養にも優れているんだ。昔から新茶を飲むことで無病息災・長生きができるともいわれているくらいで縁起がいいんだよ」

クロード「それは素晴らしい。緑茶にはそんな健康効果が? ずずず」

 ヒビキ「ずずず。日本人は世界的に寿命が長いらしいんだけど、緑茶を飲む習慣が理由のひとつじゃないかっていう研究もあるみたい」

クロード「となると、やはり一番茶が最も栄養価が高いのでしょうか?」

 ヒビキ「一番茶はアミノ酸が多く、カテキンやカフェインは少なめかな。爽やかな香りと甘い口当たりが特徴だよ」

クロード「おや? ということは私達が今飲んでいるこのお茶は」

 ヒビキ「もちろん一番茶さ!」

クロード「……今日が八十八夜で、今飲んでいるお茶が一番茶? ……お茶とはそんなに早く加工できるものでしたっけ? ヒビキ様、これ……いつの一番茶ですか?」



★★★★★
その他の記念日『郵便貯金の日』『交通広告の日』『歯科医師記念日』
※1875年、郵便貯金業務が開始された記念日。1950年制定。
※『交通(こう5つう2」の語呂合わせ。関東交通広告協議会が1993年に制定。
※1906年、歯科医師法が施行された記念日。1957年制定。

 ヒビキ「安心して、クロード。これは間違いなく今年の一番茶だから」
クロード「いや、だからいつ加工したんですか」
 ヒビキ「やだな、クロード。この世界に時間の概念なんて存在しないんだよ?」
クロード「……ヒ、ヒビキ様。なぜそんなに虚ろな目でおっしゃるのですか……?」
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