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第3話 電脳の地獄『妊婦の刑』Ⅰ
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「うん? 姫、どうしたのそんな真っ青な顔して」
夢人……いや、木村は私の顔を覗き込む。
こんな麗しいアバターの中身には、あの小太りの醜い男が。
記憶が蘇る……あの日、校舎裏での悪夢。
「ううん、私もそのツール欲しいなぁーって。夢人君、私のアカウントにもインストールしてくれない?」
「あ、うん」
夢人が目の前でタッチ操作をすると、すぐに私のアカウントにも不正ツールはインストールされた。
「ありがと。これで……昔の借りも返せるようになった」
私は、この時すでに決意していた。
この不正ツールでのチート行為を行い、この3時間の内に奴ら3人に復讐すると。
この電脳世界でしかできない、残酷な方法で。
「昔?」
「私、昔ね……強姦されたの」
「ぇ……っ」
木村の顔が露骨に強張った。
自分に心当たりがあるのだから、当然の反応だ。
「そ、そうなんだ」
しかし木村は知らないふりをする。
ここで私の怒りは更に昂ぶった。
「相手は3人で、何時間も何時間も……ずっと。何度も助けてって叫んだ、けれど助けてくれなかった」
「ひ、どいね……姫にそんなことが」
「うん、そいつらの顔は絶対に忘れない。死ぬまで、いや死んでも忘れない。たとえ地獄に落ちてもあいつらだけは……絶対に許せない」
「……っ」
木村の顔が更に強張る。
まさかこの電脳世界で、自分が強姦した相手と遭遇するとは考えなかったのだろう。
だが、これは運命だ。現実では救ってくれなかった神様が、電脳世界では私を救ってくれた。
ログアウト不能、運営部の停止による無法地帯化、そしてチート能力……すべては神の与えてくれた恵み。
「……ねぇ木村君、私の身体はそんなに綺麗だったかな」
「う、うわああああ」
私は満面の笑みで木村に詰め寄る。
木村はその気迫に押され、尻餅をつく。
「ああ、私も自己紹介しなきゃね。私の本当の名は藤ヶ谷 飛鳥。知らないはずないよね? だって、君が強姦した相手だもん」
「ち、ち、違うんだっ……あれは、桐ケ谷が勝手に!」
木村は土下座のような体制で私にすり寄る。
この期に及んで、醜い男だ。
「ん? でも君は止めるどころかそれに加わった」
「そういう振りをしないと僕があいつに酷い目に遭わされるんだよ! あれは、あれは演技だったんだ……」
「へぇ……あんな脂ぎった汚い笑顔も、全部演技?」
私の身体を見て、触ったときの薄汚い笑みは紛れもなく本物だった。
それは、あの場にいた私が直接肌で感じ取った。
「し、信じて……! 君を傷付けるつもりは無かった……本当に!」
「……この世界って、便利だと思わない?」
「へ……」
私の突然の発言に木村は言葉を失う。
「だって、この世界で何をしても現実には何の影響も起きないわけで。裏を返せば、この世界なら何をしても良いってことだよね」
「な、なにを考えてるの姫」
「……姫じゃない。私は……私は、藤ヶ谷 飛鳥だ!」
私は目の木村を容赦なく蹴り飛ばす。
現実じゃ、足の動かない私にはできない芸当だ。
そして、私はすぐに不正ツールでチートを起動させ、それをタッチで操作する。
すると、私の後方から突風の様にナイフが飛んできて木村の手足に次々と突き刺さる。
「がっ……!」
「へー! すごいねこのソフト。レアアイテムも使い放題。チートなんてもんじゃない、これさえあれば何でもできる」
「な……っ、痺れ」
木村の身体は魚の様に痙攣し、その場に倒れ込む。
「それは麻痺属性の武器。まだ実装前の開発段階みたいだけど……対モンスター用の代物を対人に使えるのはチートのおかげ」
「なにを……する気だ」
木村は私を睨み付けながら言う。
アバターのせいか、現実より生意気に見える。
「そんな怖がらないでよ。私も木村君の気持ちになって考えてみたいだけ」
そう言いながら私は更にメニューを表示させ、追加操作を行う。
「ちょっと手が滑って~、チートが暴走しちゃって木村君が酷い目に遭うの。けど悪く思わないでね、私の本意じゃないの」
まるっきり木村の発言だ。
自分はそんなつもりはなかった、仕方なかった、悪くない。
そんな気持ちを、今ここで確かめてみようじゃないか。
私が指を鳴らす。それと共に空間が裂け、次々とゲーム内のCPU、つまりクエストに出現するモンスターの一種・ゴブリン達がゾロゾロと出現する。
「な、な、なんだこいつら……CPUのゴブリン?! 何でこんな数?!」
「ごめーん、手が滑って沢山召喚し過ぎちゃったみたい。これから、木村君の相手をしてくれるんだから、数は多い方が良いでしょ?」
「相手……?」
木村は理解できていなかったようだが、徐々にその顔は色を失っていった。
「このゴブリンはね、両性って設定なの。つまり、オスでもメスある。考えようによっちゃ全員女の子ってことにもなるよ」
ゴブリン達が身動きの取れない木村の元へと歩み始める。
「っひ! や、やめろ! 近寄らせるな! 今すぐ消せ!」
「こうとも考えられる。オスでもメスでもあるなら……『木村君を孕ませる事』も、『木村君が孕ませる事』も……できるってね」
私は木村へ笑いかける。
木村の表情は、死人の様に青かった。
「電脳世界(ここ)でしか味わえない地獄を、ごゆっくり」
「うああああああああああああああああああああ!」
木村にゴブリン達が群がり始める。
私は目を背け、テレポートの機能を使ってその場を後にした。
木村がゴブリンに強姦される様など、見たら嫌でも忘れられないだろう。
夢にまで出て来られたら、本当に笑えない。
夢人……いや、木村は私の顔を覗き込む。
こんな麗しいアバターの中身には、あの小太りの醜い男が。
記憶が蘇る……あの日、校舎裏での悪夢。
「ううん、私もそのツール欲しいなぁーって。夢人君、私のアカウントにもインストールしてくれない?」
「あ、うん」
夢人が目の前でタッチ操作をすると、すぐに私のアカウントにも不正ツールはインストールされた。
「ありがと。これで……昔の借りも返せるようになった」
私は、この時すでに決意していた。
この不正ツールでのチート行為を行い、この3時間の内に奴ら3人に復讐すると。
この電脳世界でしかできない、残酷な方法で。
「昔?」
「私、昔ね……強姦されたの」
「ぇ……っ」
木村の顔が露骨に強張った。
自分に心当たりがあるのだから、当然の反応だ。
「そ、そうなんだ」
しかし木村は知らないふりをする。
ここで私の怒りは更に昂ぶった。
「相手は3人で、何時間も何時間も……ずっと。何度も助けてって叫んだ、けれど助けてくれなかった」
「ひ、どいね……姫にそんなことが」
「うん、そいつらの顔は絶対に忘れない。死ぬまで、いや死んでも忘れない。たとえ地獄に落ちてもあいつらだけは……絶対に許せない」
「……っ」
木村の顔が更に強張る。
まさかこの電脳世界で、自分が強姦した相手と遭遇するとは考えなかったのだろう。
だが、これは運命だ。現実では救ってくれなかった神様が、電脳世界では私を救ってくれた。
ログアウト不能、運営部の停止による無法地帯化、そしてチート能力……すべては神の与えてくれた恵み。
「……ねぇ木村君、私の身体はそんなに綺麗だったかな」
「う、うわああああ」
私は満面の笑みで木村に詰め寄る。
木村はその気迫に押され、尻餅をつく。
「ああ、私も自己紹介しなきゃね。私の本当の名は藤ヶ谷 飛鳥。知らないはずないよね? だって、君が強姦した相手だもん」
「ち、ち、違うんだっ……あれは、桐ケ谷が勝手に!」
木村は土下座のような体制で私にすり寄る。
この期に及んで、醜い男だ。
「ん? でも君は止めるどころかそれに加わった」
「そういう振りをしないと僕があいつに酷い目に遭わされるんだよ! あれは、あれは演技だったんだ……」
「へぇ……あんな脂ぎった汚い笑顔も、全部演技?」
私の身体を見て、触ったときの薄汚い笑みは紛れもなく本物だった。
それは、あの場にいた私が直接肌で感じ取った。
「し、信じて……! 君を傷付けるつもりは無かった……本当に!」
「……この世界って、便利だと思わない?」
「へ……」
私の突然の発言に木村は言葉を失う。
「だって、この世界で何をしても現実には何の影響も起きないわけで。裏を返せば、この世界なら何をしても良いってことだよね」
「な、なにを考えてるの姫」
「……姫じゃない。私は……私は、藤ヶ谷 飛鳥だ!」
私は目の木村を容赦なく蹴り飛ばす。
現実じゃ、足の動かない私にはできない芸当だ。
そして、私はすぐに不正ツールでチートを起動させ、それをタッチで操作する。
すると、私の後方から突風の様にナイフが飛んできて木村の手足に次々と突き刺さる。
「がっ……!」
「へー! すごいねこのソフト。レアアイテムも使い放題。チートなんてもんじゃない、これさえあれば何でもできる」
「な……っ、痺れ」
木村の身体は魚の様に痙攣し、その場に倒れ込む。
「それは麻痺属性の武器。まだ実装前の開発段階みたいだけど……対モンスター用の代物を対人に使えるのはチートのおかげ」
「なにを……する気だ」
木村は私を睨み付けながら言う。
アバターのせいか、現実より生意気に見える。
「そんな怖がらないでよ。私も木村君の気持ちになって考えてみたいだけ」
そう言いながら私は更にメニューを表示させ、追加操作を行う。
「ちょっと手が滑って~、チートが暴走しちゃって木村君が酷い目に遭うの。けど悪く思わないでね、私の本意じゃないの」
まるっきり木村の発言だ。
自分はそんなつもりはなかった、仕方なかった、悪くない。
そんな気持ちを、今ここで確かめてみようじゃないか。
私が指を鳴らす。それと共に空間が裂け、次々とゲーム内のCPU、つまりクエストに出現するモンスターの一種・ゴブリン達がゾロゾロと出現する。
「な、な、なんだこいつら……CPUのゴブリン?! 何でこんな数?!」
「ごめーん、手が滑って沢山召喚し過ぎちゃったみたい。これから、木村君の相手をしてくれるんだから、数は多い方が良いでしょ?」
「相手……?」
木村は理解できていなかったようだが、徐々にその顔は色を失っていった。
「このゴブリンはね、両性って設定なの。つまり、オスでもメスある。考えようによっちゃ全員女の子ってことにもなるよ」
ゴブリン達が身動きの取れない木村の元へと歩み始める。
「っひ! や、やめろ! 近寄らせるな! 今すぐ消せ!」
「こうとも考えられる。オスでもメスでもあるなら……『木村君を孕ませる事』も、『木村君が孕ませる事』も……できるってね」
私は木村へ笑いかける。
木村の表情は、死人の様に青かった。
「電脳世界(ここ)でしか味わえない地獄を、ごゆっくり」
「うああああああああああああああああああああ!」
木村にゴブリン達が群がり始める。
私は目を背け、テレポートの機能を使ってその場を後にした。
木村がゴブリンに強姦される様など、見たら嫌でも忘れられないだろう。
夢にまで出て来られたら、本当に笑えない。
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