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第3話 血肉の花弁【里香】Ⅰ
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真衣を殺し、俺のプロデュースは本格的に開始された。
もう後戻りはできない。これは、お前を未来永劫、輝かせ続けるためのプロデュースだ。
そのためには、俺はどんな犠牲も払う。
真衣を殺した翌日、俺は里香を居酒屋に呼び出した。
「なにいきなり呼び出して、せっかくのオフなんだけど」
席に座るなり不機嫌そうな里香。
「いや、今後の事も交えてお前と話がしたくてな。安心しろ、今日は俺のおごりだ」
もちろんそんなつもりはない。これは準備だ。
美しい花を咲かせるための、花弁を集めるために必要な事だ。
「真衣さんが辞めて寂しいとか?」
「まぁそんなところだ」
「きもっ」
里香は相変わらず口が減らないようだが、俺は適当に流す。
「で、何話って。まさか本当に私と飲みたいってわけじゃないでしょ」
当たり前だ。お前に「花弁」の価値が無ければ、とっくの昔に見切っていた。
真衣は煙草を取り出し、火をつけて大袈裟に煙を吐き出す。
「おいおい、アイドルが煙草は無いだろう」
「はぁ……オフの日くらい何やってても良いでしょ。いちいちアイドルアイドルって……」
「真衣、お前にとってアイドルとは何だ」
「なに、説教?」
「そうじゃない。ただ、それによってはお前の今後の方向性とか仕事の内容も考えなきゃならない」
真衣は鬱陶しそうに煙草を吸いながらメニューを眺め、俺とは目すら合わせない。
「別に、私適当な時期に辞めるつもりだし。だって元々私モデルだよ? アイドルなんかで終われないって。方向性で言うなら、女優とかミュージシャン辺りかな~」
「では、今の活動は腰掛けって事か」
「ま、そんなとこ。だから間違えても28歳でアイドルなんかやってないから安心してよ」
俺はテーブルの下で震える拳を抑えるのに必死だった。
アイドルなんか? 腰掛け? この女にとってアイドルとはその程度なのか。
この女は、俺の目の前でアイドル、そして真衣を侮辱した。つくづくアイドルに相応しくない屑だと思う。
だが、こんな屑でも1枚の血肉の花弁として、花を咲かせるには不可欠な存在だ。
「……耐えろ、まだ耐えろ」
「……え?」
俺は無意識に拳を押さえつけながら口走っていた。
「いいや、なんでもない。ほら、今日はとことん付き合ってやる。好きなだけ飲め」
それを誤魔化すように俺は里香にメニューを押し付ける。
もう、里香を血肉の花弁へ「加工」するための準備は始まっている。
「……気持ち悪い」
居酒屋を出るころには里香は完全に酔っていた。
いや、俺が酔うように飲ませたというべきだろうか。
「あれだけ飲めば当たり前だ……ってもうこんな時間か。仕方ない、とりあえず近くに俺の家があるから、そこで少し休んでいけ」
「なに持ち帰りー?」
「馬鹿言うな。俺はお前のプロデューサーだぞ」
くだらない会話をしながら、俺は里香に肩を貸して自宅を目指す。
もう後戻りはできない。これは、お前を未来永劫、輝かせ続けるためのプロデュースだ。
そのためには、俺はどんな犠牲も払う。
真衣を殺した翌日、俺は里香を居酒屋に呼び出した。
「なにいきなり呼び出して、せっかくのオフなんだけど」
席に座るなり不機嫌そうな里香。
「いや、今後の事も交えてお前と話がしたくてな。安心しろ、今日は俺のおごりだ」
もちろんそんなつもりはない。これは準備だ。
美しい花を咲かせるための、花弁を集めるために必要な事だ。
「真衣さんが辞めて寂しいとか?」
「まぁそんなところだ」
「きもっ」
里香は相変わらず口が減らないようだが、俺は適当に流す。
「で、何話って。まさか本当に私と飲みたいってわけじゃないでしょ」
当たり前だ。お前に「花弁」の価値が無ければ、とっくの昔に見切っていた。
真衣は煙草を取り出し、火をつけて大袈裟に煙を吐き出す。
「おいおい、アイドルが煙草は無いだろう」
「はぁ……オフの日くらい何やってても良いでしょ。いちいちアイドルアイドルって……」
「真衣、お前にとってアイドルとは何だ」
「なに、説教?」
「そうじゃない。ただ、それによってはお前の今後の方向性とか仕事の内容も考えなきゃならない」
真衣は鬱陶しそうに煙草を吸いながらメニューを眺め、俺とは目すら合わせない。
「別に、私適当な時期に辞めるつもりだし。だって元々私モデルだよ? アイドルなんかで終われないって。方向性で言うなら、女優とかミュージシャン辺りかな~」
「では、今の活動は腰掛けって事か」
「ま、そんなとこ。だから間違えても28歳でアイドルなんかやってないから安心してよ」
俺はテーブルの下で震える拳を抑えるのに必死だった。
アイドルなんか? 腰掛け? この女にとってアイドルとはその程度なのか。
この女は、俺の目の前でアイドル、そして真衣を侮辱した。つくづくアイドルに相応しくない屑だと思う。
だが、こんな屑でも1枚の血肉の花弁として、花を咲かせるには不可欠な存在だ。
「……耐えろ、まだ耐えろ」
「……え?」
俺は無意識に拳を押さえつけながら口走っていた。
「いいや、なんでもない。ほら、今日はとことん付き合ってやる。好きなだけ飲め」
それを誤魔化すように俺は里香にメニューを押し付ける。
もう、里香を血肉の花弁へ「加工」するための準備は始まっている。
「……気持ち悪い」
居酒屋を出るころには里香は完全に酔っていた。
いや、俺が酔うように飲ませたというべきだろうか。
「あれだけ飲めば当たり前だ……ってもうこんな時間か。仕方ない、とりあえず近くに俺の家があるから、そこで少し休んでいけ」
「なに持ち帰りー?」
「馬鹿言うな。俺はお前のプロデューサーだぞ」
くだらない会話をしながら、俺は里香に肩を貸して自宅を目指す。
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