血肉の花弁

柘榴

文字の大きさ
上 下
3 / 10

第3話 血肉の花弁【里香】Ⅰ

しおりを挟む
 真衣を殺し、俺のプロデュースは本格的に開始された。
 もう後戻りはできない。これは、お前を未来永劫、輝かせ続けるためのプロデュースだ。
 そのためには、俺はどんな犠牲も払う。

 真衣を殺した翌日、俺は里香を居酒屋に呼び出した。
「なにいきなり呼び出して、せっかくのオフなんだけど」
 席に座るなり不機嫌そうな里香。
「いや、今後の事も交えてお前と話がしたくてな。安心しろ、今日は俺のおごりだ」
 もちろんそんなつもりはない。これは準備だ。
美しい花を咲かせるための、花弁を集めるために必要な事だ。
「真衣さんが辞めて寂しいとか?」
「まぁそんなところだ」
「きもっ」
 里香は相変わらず口が減らないようだが、俺は適当に流す。
「で、何話って。まさか本当に私と飲みたいってわけじゃないでしょ」
 当たり前だ。お前に「花弁」の価値が無ければ、とっくの昔に見切っていた。
 真衣は煙草を取り出し、火をつけて大袈裟に煙を吐き出す。
「おいおい、アイドルが煙草は無いだろう」
「はぁ……オフの日くらい何やってても良いでしょ。いちいちアイドルアイドルって……」
「真衣、お前にとってアイドルとは何だ」
「なに、説教?」
「そうじゃない。ただ、それによってはお前の今後の方向性とか仕事の内容も考えなきゃならない」
 真衣は鬱陶しそうに煙草を吸いながらメニューを眺め、俺とは目すら合わせない。
「別に、私適当な時期に辞めるつもりだし。だって元々私モデルだよ? アイドルなんかで終われないって。方向性で言うなら、女優とかミュージシャン辺りかな~」
「では、今の活動は腰掛けって事か」
「ま、そんなとこ。だから間違えても28歳でアイドルなんかやってないから安心してよ」
 俺はテーブルの下で震える拳を抑えるのに必死だった。
 アイドルなんか? 腰掛け? この女にとってアイドルとはその程度なのか。
 この女は、俺の目の前でアイドル、そして真衣を侮辱した。つくづくアイドルに相応しくない屑だと思う。
 だが、こんな屑でも1枚の血肉の花弁として、花を咲かせるには不可欠な存在だ。
「……耐えろ、まだ耐えろ」
「……え?」
 俺は無意識に拳を押さえつけながら口走っていた。
「いいや、なんでもない。ほら、今日はとことん付き合ってやる。好きなだけ飲め」
 それを誤魔化すように俺は里香にメニューを押し付ける。
 もう、里香を血肉の花弁へ「加工」するための準備は始まっている。

「……気持ち悪い」
 居酒屋を出るころには里香は完全に酔っていた。
 いや、俺が酔うように飲ませたというべきだろうか。
「あれだけ飲めば当たり前だ……ってもうこんな時間か。仕方ない、とりあえず近くに俺の家があるから、そこで少し休んでいけ」
「なに持ち帰りー?」
「馬鹿言うな。俺はお前のプロデューサーだぞ」
 くだらない会話をしながら、俺は里香に肩を貸して自宅を目指す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蜥蜴の尻尾切り

柘榴
ホラー
 中学3年生の夏、私はクラスメイトの男の子3人に犯された。  ただ3人の異常な性癖を満たすだけの玩具にされた私は、心も身体も壊れてしまった。  そして、望まない形で私は3人のうちの誰かの子を孕んだ。  しかし、私の妊娠が発覚すると3人はすぐに転校をして私の前から逃げ出した。 まるで、『蜥蜴の尻尾切り』のように……私とお腹の子を捨てて。  けれど、私は許さないよ。『蜥蜴の尻尾切り』なんて。  出来の悪いパパたちへの再教育(ふくしゅう)が始まる。

近辺オカルト調査隊

麻耶麻弥
ホラー
ある夏の夜、幼なじみの健人、彩、凛は ちょっとした肝試しのつもりで近辺で噂の幽霊屋敷に向かった。 そこでは、冒涜的、超自然的な生物が徘徊していた。 3人の運命は_______________ >この作品はクトゥルフ神話TRPGのシナリオを元に作ったものです。 この作品を見てクトゥルフ神話TRPGに興味を持った人はルールブックを買って友達と遊んでみてください。(布教)

劇薬

柘榴
ホラー
『己の愛と欲のため、二人の女は奪い合う』 『一度侵入すれば、全てを容赦なく破壊する。まるで劇薬のように危険で狂った女達の凄惨な復讐劇』 昭和二十五年、終戦後日本は平和に向けての復興に向かう最中。 当時としては異例の天才女医・火村 秋乃は戦争から帰還した夫・火村 文也と共に東京で医師として多忙な日々を送っていた。 しかし、新婚でありながら互いに医師としての業務に追われ続ける東京の生活に嫌気がさした夫・文也は秋乃に対し、自らの田舎である『輪廻村』へ移り住む事を提案し、移住する事となる。 しかし、村には秋乃の想像を絶する狂気が蔓延していた。 『女性の子宮を苗床にし、生殖機能を破壊する奇病』 『奇病により子宮と生殖機能を失った村の女たち』 『唯一、奇病に感染せず、唯一、子供を産める少女・真里亜』 『その少女を懐妊させる風習・子宝の儀』 全ての狂気が秋乃と真里亜、二人の女を巡り合わせ、そして悲劇は繰り返される。

オーデション〜リリース前

のーまじん
ホラー
50代の池上は、殺虫剤の会社の研究員だった。 早期退職した彼は、昆虫の資料の整理をしながら、日雇いバイトで生計を立てていた。 ある日、派遣先で知り合った元同僚の秋吉に飲みに誘われる。 オーデション 2章 パラサイト  オーデションの主人公 池上は声優秋吉と共に収録のために信州の屋敷に向かう。  そこで、池上はイシスのスカラベを探せと言われるが思案する中、突然やってきた秋吉が100年前の不気味な詩について話し始める  

醜女の檻 ~私の美少女監禁日記~

戸影絵麻
ホラー
私は醜い。 いじめられるのを通り越して、他人が避けて通るほど。 私の素顔をひと目見るなり、誰もが嘔吐するレベルなのだ。 呪われている、というしかない。 だから私の唯一の楽しみは、美しいものを穢すこと。 その時私はなんとも言いようのない、うっとりするような恍惚感を覚えるのだ…。 そんなある日、私の前にひとりの転校生が現れた。 笹原杏里。 スタイルも良く、顔立ちも私好みの美少女だ。 杏里の瑞々しい肢体を目の当たりにした瞬間、私は決意した。  次の獲物は、この娘にしよう。 こいつを私の”檻”に誘い込み、監禁して徹底的に嬲るのだ…。  ※これは以前書いたものの改訂版です。

真夏の温泉物語

矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

ハロウィンの夜の散歩は危ない

ミクリ21 (新)
ホラー
ハロウィンの夜に日課の散歩にでかけた男の話。

祠村

白狐
ホラー
東京に住む千歳 唯月(ちとせ いつき)は、従弟である立華 小鳥(たちばな ことり)から手紙を貰い、東京を離れ、山奥の村、"祠村"を訪れる。 久々に従弟と再会し歓喜する唯月であったがそれはこれから起こる悪夢の序章だった。 村中に建てられた奇妙な祠、村に災いをもたらした獅子鬼の伝説、"祠人"のしきたり。 唯月は自分が祠村に招かれた本当の理由、そして、村に隠された秘密と真相を知る事となる・・・・・・

処理中です...