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第12話 自壊の刑
第103話 素晴らしき世界
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「ごほっ! が……っ」
ティエラが血と吐瀉物が混ざり合った粘液を激しく吐き出す。
思った以上に毒の周りが早く、既にティエラの身体からは血の気が引いていた。明らかに少し前とは様子が違う。
「くそっ……!」
茜を救う事すら出来ず、ただ無様に地を這うティエラを僕は思い切り踏み付け、足蹴にする。
何が天才だ、何が奇跡だ。
茜一人救えないこんな世界に奇跡など有りはしない。
今、はっきりと分かった。
この世界……いや、僕の世界に奇跡など有りはしない。希望など有りはしない。
そして、その僕から茜すら奪おうとするこの世界に……僕は心の底から失望し、絶望した。
「はは……ほんとに、おわり……みたいね」
「……この役立たずが! くそ、くそっ!」
そんな僕を嘲笑うかのように見つめるティエラの顔を、僕は蹴り飛ばす。
その衝撃でティエラは再び血反吐を撒き散らすが、構わない。
「……なにもかもおわりね……あかねも、あたしも、あんたも……ぜんいん」
「この……っ!」
それでも僕を小馬鹿にするティエラに僕は感情を抑えきれず、潜ませてあった注射器の先端を眼球に振り下ろそうとする。
「ころ、せば……? もう、いいわ……さいごに、おもし、ろい……ものも、みれたし」
だが、ティエラは瞬きすらしない。
既に生きる事を諦め、この世界に未練も無くした彼女は、驚く程に清らかな表情を浮かべていた。
「ほんと、すばらしいわね……この、せかいは……」
それだけを言い残し、ティエラは目を閉じ……自らの生命に別れを告げようとしていた。
「終わり? 終わらせるものか! 終わらない、僕と茜の世界は……未来永劫、終わらないんだ!」
僕は自分に言い聞かせる様にティエラへ拳を振り下ろし続ける。
歯が突き刺さろうが、構わない。ただひたすらに拳を振り下ろし続ける。
しかし、その後もティエラが再び声を発する事は無かった。
ティエラが血と吐瀉物が混ざり合った粘液を激しく吐き出す。
思った以上に毒の周りが早く、既にティエラの身体からは血の気が引いていた。明らかに少し前とは様子が違う。
「くそっ……!」
茜を救う事すら出来ず、ただ無様に地を這うティエラを僕は思い切り踏み付け、足蹴にする。
何が天才だ、何が奇跡だ。
茜一人救えないこんな世界に奇跡など有りはしない。
今、はっきりと分かった。
この世界……いや、僕の世界に奇跡など有りはしない。希望など有りはしない。
そして、その僕から茜すら奪おうとするこの世界に……僕は心の底から失望し、絶望した。
「はは……ほんとに、おわり……みたいね」
「……この役立たずが! くそ、くそっ!」
そんな僕を嘲笑うかのように見つめるティエラの顔を、僕は蹴り飛ばす。
その衝撃でティエラは再び血反吐を撒き散らすが、構わない。
「……なにもかもおわりね……あかねも、あたしも、あんたも……ぜんいん」
「この……っ!」
それでも僕を小馬鹿にするティエラに僕は感情を抑えきれず、潜ませてあった注射器の先端を眼球に振り下ろそうとする。
「ころ、せば……? もう、いいわ……さいごに、おもし、ろい……ものも、みれたし」
だが、ティエラは瞬きすらしない。
既に生きる事を諦め、この世界に未練も無くした彼女は、驚く程に清らかな表情を浮かべていた。
「ほんと、すばらしいわね……この、せかいは……」
それだけを言い残し、ティエラは目を閉じ……自らの生命に別れを告げようとしていた。
「終わり? 終わらせるものか! 終わらない、僕と茜の世界は……未来永劫、終わらないんだ!」
僕は自分に言い聞かせる様にティエラへ拳を振り下ろし続ける。
歯が突き刺さろうが、構わない。ただひたすらに拳を振り下ろし続ける。
しかし、その後もティエラが再び声を発する事は無かった。
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